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『ソローキンの見た桜』阿部純子インタビュー

歴史を知り、勉強不足を痛感した若手演技派女優

『ソローキンの見た桜』阿部純子インタビュー
言葉にして話し合うことの大切さを学びました

『ソローキンの見た桜』
2019年3月22日より全国公開(愛媛県にて先行公開中)
(C)2019「ソローキンの見た桜」製作委員会
『ソローキンの見た桜』は、日露戦争時代の史実をもとにした悲しくも壮大な愛の物語だ。舞台は、愛媛県松山市のロシア兵捕虜収容所。捕虜になったロシア兵将校ソローキンと日本人看護師ゆいは互いに心惹かれていき、ソローキンは祖国へゆいを連れて帰ろうとするが、敵国の相手への想いは許されるはずもない。そんな二人の愛は数奇な運命をたどり、現代のロシア人と日本人の桜子を結びつける。

ゆいと桜子を演じるのは、若手実力派として評価の高い阿部純子。一人二役に加えて英語でのセリフにも挑戦した阿部に、ロシア人俳優とのコミュニケーションや本作への想いを聞いた。


──本作に出演が決まった経緯を教えてください。

阿部:井上雅貴監督からお話をいただいて台本を読み、すぐに出演したいと思いました。実際に存在した松山市のロシア兵捕虜収容所を舞台に実話をもとにした物語、という点に強く惹かれました。

──日露戦争時代の看護師ゆいと、現代のテレビディレクターである桜子を演じていますが、二役を演じるうえで意識したことはありますか?

阿部純子
阿部:ひとり(ゆい)は戦時中を生きる古き良き女性で、もうひとり(桜子)は現代を生きる好奇心旺盛でフットワークの軽い女性です。時代も生き方も違う二人なので、そのコントラストを意識して、監督と相談しながら役を作っていきました。

──戦時中の女性を演じるにあたって、資料を調べたりもされたのでしょうか?

阿部:実在したロシア人の日記を読んだり、当時の捕虜収容所の写真を見たりしました。こうして作品を通じて戦争というものにかかわったことで、自分の勉強不足を痛感しました。この作品のテーマのひとつでもありますが、戦争は人と人を引き裂くものであり、伝えていかなければいけない多くの物語があるんだな、と感じました。

──ゆいは、ソロ―キンが敵国の相手であるという葛藤がありながらも、それより強い気持ちを持つようになっていきます。阿部さんご自身がゆいならば、どのようにふるまったと思いますか?

阿部純子
阿部:撮影中にも考えました。あの時代において、ゆいは勇気のある女性だったと思います。ゆいは大切な家族を戦争で亡くしていますが、ロシア兵の捕虜の方々と話しているうちに「こういう生き方もあるんだな」と自分の世界が広がっていくんですよね。自分だったらどうするかはわかりませんが、時代は違うものの、ひとりの女性がどんな風に悩んでいるかという根本的な部分では今の私たちに共通する部分もあるので、見てくださる方には、そこに共感していただけたらいいな、と思います。

──日本とロシアとの合作ですが、日本だけでの撮影とは違ったことや新たに学んだことなどはありましたか?

阿部:それは大変でもあり楽しくもあったことなのですが、私自身の価値観が日本人のものなんだな、というのを感じた現場でした。例えば、ロシア人の俳優の方々と私では台本の解釈の仕方が違っていることも多かったので、シーンごとにお互いがどう思っているのかを話し合い、共有してから演じるようにしていました。

──具体的にどのようなところで解釈の違いがあったのですか?

阿部:例えば、ソローキンさんはゆいさんを愛するときに、自分の気持ちを言葉にして伝えるのですが、ゆいさんは言葉にはしません。なぜかというと、ゆいさんは男性とかかわること自体に慣れていませんし、言葉による意思疎通がうまくできないのです。それがソローキンさんには理解できなかったようです。

──昔の日本人女性として自然なふるまいのように見えましたが、それがロシア人の俳優さんからすると「なんで好きって言わないの?」と不思議に思うわけですか?

阿部:はい(笑)。そういうことがたくさんありました。日本のよいところのひとつに「暗黙の了解」というのがありますが、いろいろな国の方がいる現場ではお互いに思っていることを言葉にして落とし込んで話し合うことが近づく一歩になるんです。今回は、いつもランチのときはみんなで一緒に食べて、作品のことを話し合いながら過ごしました。その時間がすごく大切だったように思います。

『ソローキンの見た桜』
(C)2019「ソローキンの見た桜」製作委員会
──ランチタイムの会話は、英語ですか?

阿部:はい、英語です。

──阿部さんは英語のセリフも見事にこなしていましたね。

阿部:まずはひとりで必死に練習して、それからロシア人の俳優のみなさんとリハーサルを重ねました。

──ソローキン役のロデオン・ガリュチェンコさんと共演して、演技で参考になったことなどはありましたか?

阿部:ロシアの俳優の方々は舞台で演技の基礎をしっかり身に付けている方が多いと聞いていましたが、実際に共演させていただいて、声の出し方や相手の演技に対してフレキシブルな演技で返すところなど、とても勉強になりました。

──阿部さんにとって、特に思い出深いシーンはどこですか?

阿部:一番楽しかったのは、(ロシア兵捕虜と日本人看護師たちの)ダンスシーンです。今回、出演者たちはお互い英語を話していましたが、母国語はロシア語と日本語でそれぞれ違うので、意思疎通において言語は大きなひとつの壁でした。ダンスシーンは言語の壁を飛び越えて演じることができたので、すごく楽しかったです。

──今回の作品はご自身にとってどういう位置づけになりましたか?

阿部:主演をはらせていただくうえで、キャストのみなさんがたくさんのアドバイスをくださって、現場も和やかな雰囲気をつくってくださいました。外国の方々との撮影も大きな自信になりました。忘れられない作品です。

(2019/03/22)


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阿部純子
あべ・じゅんこ

1993年5月7日生まれ。大阪府出身。主演を務めた河瀬直美監督作品『二つ目の窓』(14年)が第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、同映画でサハリン国際映画祭主演女優賞と高崎映画祭最優秀新人賞を受賞。その後、渡米し、ニューヨーク大演劇科で演劇を学ぶ。帰国後、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16年)、テレビドラマ『好きな人がいること』(16年)、映画『孤狼の血』(18年)などの話題作に出演。

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