『ザ・レイド』ギャレス・エヴァンス監督×イコ・ウワイス×ヤヤン・ルヒアン インタビュー

世界を席巻したインドネシア発ノンストップアクションの魅力を聞く

#イコ・ウワイス#ギャレス・エヴァンス#ヤヤン・ルヒアン

新しいアクション映画を、インドネシアの映画界に知らしめたかった(イコ)

インドネシアのジャカルタにそびえ立つ高層ビルを舞台に、SWAT隊員とギャングとの激しい闘いを描いたノンストップアクション『ザ・レイド』。第21回トロント映画祭の最高賞に当たる観客賞受賞をはじめ、世界各国の映画祭を席巻した作品だ。

日本ではあまりメジャーではないインドネシア発の映画ながら、アクション描写の完成度の高さから全米公開もされ、ハリウッドリメイクも決定。続編も製作されるというこの話題作について、ギャレス・エヴァンス監督とキャストのイコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンに話を聞いた。

ギャレス・エヴァンス監督

──世界的にヒットしたわけですが、感想は?

監督:バイオレンス映画ながらも世界中で受け入れられたことに驚いています。と同時に、監督できたことをとても誇らしく思っています。また、もともと『Berandal』という作品を作りたいと思いこの映画を作り始めたのですが、続編として製作できることになり嬉しいですね。
 ただ、ヒットによってプレッシャーが高まってしまったのが悩ましいです。最初は、ある意味、何も考えず作ることができましたが、今は期待値が上がって“前作以上”を求められてしまうので。

イコ・ウワイス

イコ:もともとこの作品で賞を獲ろうとは思っていなくて、私たちとしては、インドネシアの映画界に新風を吹き込むつもりでした。インドネシア映画は、コメディ、ホラー、宗教的な映画が主流ですが、マーシャルアーツを取り入れた新しいアクション映画を、インドネシアの映画界に知らしめたかったんです。

影響を受けたのはジャッキー・チェン(イコ、ヤヤン)
──本作はどのような経緯で製作することになったんですか?
イコ・ウワイス(左)とヤヤン・ルヒアン(右)

監督:もともとはイギリスで映画を作りたいと思っていたのですが、ウェールズで製作する場合、自分たちで資金繰りしなければならないため予算規模が小さくなってしまい、思うようにいきませんでした。最近は変わってきましたが、2006年頃はそうでした。
 私は当時、9時〜5時で普通に働いていたのですが、その仕事に比重が傾いたとき、今の妻がインドネシアでドキュメンタリーを作ることを勧めてくれたんです。その作品を撮っていくなかでマーシャルアーツの面白さを知り、インドネシアの文化にも触れ、イコにも出会いました。そして(前作)『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09年)を撮り、本作に至りました。

ヤヤン・ルヒアン(左)とイコ・ウワイス(右)

──影響を受けたアクション映画はありますか?

イコ:ジャッキー・チェンの映画です。監督にも、演じる前に彼の映画を見てくれと言われていましたし、彼は私の目標です。それから、私は1度、ジャッキーに会ったことがあるのですが、監督はないので悔しがっています(笑)。

ヤヤン:僕も、影響を受けたのはジャッキー・チェンですね。

監督:武術で言えばジャッキー・チェン、ジェット・リー、サモハン・キンポー、(タイのアクション俳優)トニー・ジャーです。ガンアクションでは、ジョン・ウー監督、リンゴ・ラム監督、サム・ペキンパー監督、マイケル・マン監督の作品群です。

練習のとき実際に殴られたり蹴られたりということが何度もありました(ヤヤン)
ヤヤン・ルヒアン(左)とイコ・ウワイス(右)

──アクションの振付で難しかった部分は?

イコ:80人いたアクション演者に、1人として同じアクションをさせないようにすることです。

──では、オススメのシーンは?

イコ:特に見てほしいシーンが2つあります。1つは、私が重傷を負った仲間を抱えながら18人と戦うシーンです。ケガをした仲間を守りながら動くことも大変なのですが、SWATの服がとても重いんです。ブーツ、ベルト、銃などフル装備でかなりきつかったので、あのシーンはぜひ見てもらいたい。
 もう1つは、私が兄のアンディと共にマッド・ドッグ(ヤヤン・ルヒアン)と戦うシーンです。2人が一瞬も休まず、しかもぶつからないように動くのは本当に複雑な振付なのですが、それを、息つく暇もなく演じきっていますので、ぜひ見てください。

──最後のアクションシーンも大変だったのでは?

ヤヤン:監督はメチャクチャ簡単だっただろうと言いますが、2人に絶えず集中しなければならないので大変でした。他の映画などでは、1人と戦っているときはもう1人は置き去りになるということもありますが、この映画はそうではなく、2人を同時に相手にしなければならないのです。練習のときは集中力が途切れてしまい、相手が攻めてきているのに守れなくて、実際に殴られたり蹴られたりということが何度もありました(笑)。

──最後に、続編『Berandal』について教えてください。

監督:キャラクターが増えて人間関係も入り組んできます。主人公のラマには奥さんがいて子どもも生まれています。1作目で名前しか出てこなかった悪徳警官レザーと、信頼できる警官ブナワの2人も出てきます。物語はラマがブナワに出会うところから始まり、残念ながら(1作目で)ヤヤンが演じたマッド・ドッグは出演しません。ただ、ヤヤン自身はホームレスのヒットマンの役で登場します。このヒットマンはマフィアのドンに仕えていて、ドンに命じられるまま人を殺していくんです。
 撮影は来年1月中旬からを予定しています。

イコ・ウワイス
イコ・ウワイス
Iko Uwais

1983年2月12日生まれ、インドネシアのジャカルタ出身。5歳で、インドネシアの伝統武術プンチャック・シラットを始め、プロのシラット家となる。03年にはジャカルタ特別州トーナメントで3位に入賞。05年にはナショナル・シラット選手権プンチャック・シラット・フェスティバルのベスト・シングル・パフォーマー部門で1位に。海外にも遠征しプンチャック・シラットを紹介する。07年にドキュメンタリー制作を通じてギャレス・エヴァンス監督と出会い、『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09年)に主演。

ギャレス・エヴァンス
ギャレス・エヴァンス
Garethe Evans

イギリスのウェールズ出身。2003年に処刑を待つサムライの姿を描いた短編『Samurai Monogatari』を監督。監督・脚本を手がけた長編『Footsteps』(06年)でスウォンジー湾映画祭最優秀映画賞を受賞。07年にプンチャック・シラットなどを捉えたドキュメンタリー『The Mystic Arts of Indonesia: Pencak Silat』を監督。その後、イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンを主演にした『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09年)を監督。米ユニバーサル企画のクライムアクション『Breaking the Bank』も監督する予定。

ヤヤン・ルヒアン
ヤヤン・ルヒアン
Yayan Ruhian

1968年、インドネシア生まれ。 インドネシアの伝統的な武術・シラットの他に空手や合気道を学び、武術インストラクターとして活動。2009年に武術指導として参加した 『ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~』(09年)で映画デビュー。前作『スカイライン—奪還—』(17年)に続き本作にも出演。その他の出演作は『ザ・レイド』(11年)、『ザ・レイド GOKUDO』(13年)、『極道大戦争』(15年)、『スターウォーズ/フォースの覚醒』(15年)、『ジョン・ウィック:パラベラム』(19年)など。

ヤヤン・ルヒアン
ザ・レイド
2012年10月27日よりシネマライズほかにて全国公開
[監督]ギャレス・エヴァンス
[出演]イコ・ウワイス、ジョー・タスリム、ドニー・アラムシャ、ヤヤン・ルヒアン、ピエール・グルノ、テガール・サトリヤ、レイ・サヘタビー
[DATA]角川映画/R15+
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