ダーク・ファンタジーの鬼才が来日。ジョイマン・高木のために脚本書き下ろしを約束!?

アメリカン・コミックの異色ヒーロー、ヘルボーイ。地獄で生まれ、モンスター退治を使命とする主人公の活躍を映画化したシリーズ第2弾『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』が来年初頭に日本公開されるが、公開に先駆け、メキシコ人監督ギレルモ・デル・トロが来日。東京・有楽町で記者会見を行った。

アニメやゲームなど、日本のポップカルチャーが大好きだという監督。「今回が4度目の来日ですが、来日時には必ずトランクを2つ持って来ます。ひとつは衣類などの荷物用。もうひとつはカラっぽで、帰りにおもちゃを持ち帰るため(笑)」と嬉しそう。

監督作のひとつ『パンズ・ラビリンス』(06)がアカデミー賞撮影賞、美術賞、メイクアップ賞の3部門受賞に輝くなど、ダークファンタジーの分野で優れた業績を誇るが、『ヘルボーイ』に代表されるようなモンスター映画を愛するようになった理由をこう語る。「モンスターを好きになったのは、人間よりも強く純粋な精神性を象徴しているように感じるからです。人によっては神や天使に惹かれる人もいますが、僕はモンスターや悪魔に惹かれるんです」。ちなみに、今までで一番好きなモンスターは「フランケンシュタインかな」とのこと。

すでに2017年までのスケジュールがぎっしりと埋まっているほどの超売れっ子。そんな多忙な状況下では、創作活動にいそしむ時間などないように思えるのだが……。

「様々な企画がアナウンスされていますが、多くはすでに脚本が書かれてるもの。90年代に書き上げてあったものもあります。創作活動としては、いつもノートを持ち歩き、アイデアが浮かべば書き留め、満足がいくまで手直しし続けるといった感じです。ものを書くという作業はすでに生活の一部なんです。僕には家族と住んでいる家の他にもう1軒、家があります。そこには本やおもちゃやDVDがたくさんあり、モンスターもそこにいます。そこで一日中、創作活動をして、夜は家に帰って普通の人になるんです(笑)。仕事は大好き。時差を利用して、ヨーロッパの会社と午前6時から9時までやりとりし、その後、執筆活動をおこなったりも……。そして、少しだけ家族と過ごしたりしています(笑)」

シリーズ第1弾『ヘルボーイ』(04)も手がけた監督だが、前作と今回の続編との違いはどんなところにあるのだろうか。

「『ヘルボーイ』は自叙伝的な側面のある映画。ヘルボーイは私と同じく身体が大きくて、非常に無責任(笑)。前作ではモンスターたちを叩きのめして人間側に立つ様子を描きました。今回、彼は、敵対しているモンスターにも“美しさ”があることに気づく。特別なのは人間ではなく、むしろモンスターの方なのかも知れないという認識をもつのです。そして……バリー・マニロウが歌えるようになる(!)ことも進化の一部です(笑)」

実は、バリー・マニロウの歌う70年代ポップスには、秘められた思い出があるようだ。

「若い頃に聞いていたのはヘビメタだったのですが、女性に恋をしたりしたとき、誰にも言わずにコッソリと聞いていたのがバリー・マニロウだったんです(笑)。これはとても大きな秘密なんですけどね。だから、とてもバリー・マニロウなんか聞かなそうなキャラクターが彼の曲を歌うのは、すごく良いアイデアじゃないかと思ったんです」

日本のアニメやコミックで大きな影響を受けた作品があるかどうか聞くと、待ってましたとばかりにとうとうと語り始めた。

「非常に影響を受けました。子どもの頃、メキシコでは手塚治虫のアニメがたくさんテレビ放映されていたし、ジャパニメーションが世界的ブームになる前から、よく見ていました。中でも影響を受けたのが宮崎駿や高畑勲。成長するにしたがい、押井守、大友克洋の作品にも触れるようになりました。これらは、僕の創作活動に多大な影響をもたらしています。ガメラやゴジラなど、日本のモンスターは感情移入できる存在だから好きなんです。けれど、特に影響をうけたのは、やはり宮崎駿や高畑勲ですね。伊藤潤二や日野日出志など、日本のホラーも独創的で大好き。読んでいると本当に恐いんですけど(笑)。溝口健二、小津安二郎、黒澤明といった名匠の作品にも多大な影響を受けました」

記者会見の終盤、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のファンだというお笑いコンビのジョイマンがゲストとして登場、監督の前で芸を披露した。笑顔で見ていた監督だが、ダンスに誘われたときには、ヘタだからとやんわり断る場面も。また、映画への起用を強くアピールする高木晋哉に、「あなたのために5作を書き下ろしましょう」と嬉しい回答。だが、モンスター役なので顔は分からないようだが……。

地獄生まれの正義のヒーローが魔界最強の敵に挑む姿を描き、全米でNo.1ヒットを記録した『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は、2009年1月9日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開される。

(写真:左からヘルボーイの腕を装着した高木晋哉〈ジョイマン〉、ギレルモ・デル・トロ監督、ヘルボーイのフィギュアを抱えた池谷和志〈ジョイマン〉)

・関連ページ
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』ギレルモ・デル・トロ監督 記者会見[動画]
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』公式サイト

INTERVIEW