安藤サクラ、自堕落な女から天真爛漫ヒロインまでを演じきる確かな演技力

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安藤サクラ
安藤サクラ

【この俳優に注目】安藤サクラ

今月から始まったNHK連続テレビ小説『まんぷく』で、主人公の今井福子を演じている安藤サクラ。昨年長女が誕生し、史上初のママさんヒロインと話題になった。32歳という年齢も、これまでヒロインを演じた女優たちよりも少し高いが、ドラマは初回の視聴率が23.8パーセント、第1週目の週間平均視聴率が21.9パーセントと好スタートを切っている。

安藤サクラが家族語る

安藤といえば、今年5月にカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた『万引き家族』で見せた演技が忘れられない。他人の寄せ集め家族で底辺生活を送る女性が、親から虐待されていた幼女をわが子として育てようとする。自堕落な女性の内に隠されていた愛情と優しさ、切なさを豊かに見せた演技は映画祭審査委員長を務めたケイト・ブランシェットが大絶賛、同作の受賞に大きく貢献した。

気だるそうな雰囲気など、若い頃の桃井かおりに似て見える時があるが、そういえば2人とも名門女子校出身のお嬢様育ち。明確に将来の夢があり、目標に向かって10代の頃から自分の意思で歩み始めたところも同じだ。安藤はデビューこそ、父・奥田瑛二の監督作『長い散歩』(06)だが、そこから先は彼女自身の才能が切り開いたもの。アート系作品から『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)など娯楽作まで、幅広いジャンルで活躍している。

これまでの出演作を見ていくと、やはり一癖も二癖もあるキャラクターが魅力的だ。園子温監督の『愛のむ気だし』(06)に始まり、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、ブルーリボン賞主演女優賞に輝いた『かぞくのくに』(12)、『百円の恋』(14)、『0.5ミリ』(14)など、助演でも主演でも強い印象を残してきた。特に、無職の引きこもりの30女が一念発起してボクサーを目指す『百円の恋』では、だらしなさを醸し出すために一度増量して撮影に臨み、撮影後半の10日間で大幅減量してボクサー体型に変身。複雑な内面を伝える表現力に外見の変化も合わせたリアルな演技は忘れられない。

女優が演じている、ということを忘れさせる生々しさを必ず役にもたらす。それは汚れ役の時の方が多少作り込み易いのかもしれない。純真無垢な表情と立ち居振る舞いが、わざとらしい嘘に見えないようにする方が至難の技と考えるのは素人の浅はかさなのだが、そのハードルをクリアするのが安藤サクラの真骨頂だと思う。

パルムドール受賞を受けて、今も上映が続く『万引き家族』の信代役の印象が抜けきらないうちに始まった『まんぷく』では、信代とまさに正反対の屈託ない天真爛漫なヒロインをいきいきと演じている。前向きで明るい福子が、長谷川博己演じる夫と「インスタントラーメン」を世に送り出すまでの試行錯誤と夫婦の愛の物語をどう紡いでいくか、これからの半年間が楽しみだ。

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