好きなものを素直に好きと言えない現代日本の同調傾向に、真っ向から疑問投げかける

#夜明け告げるルーのうた#映画を聴く

『夜明け告げるルーのうた』
(C)2017ルー製作委員会
『夜明け告げるルーのうた』
(C)2017ルー製作委員会

【映画を聴く】『夜明け告げるルーのうた』前編
自由な発想とアート性が恐ろしいほど高い純度で結晶!

『夜は短し歩けよ乙女』が公開中の湯浅政明監督が、続けざまに新作『夜明け告げるルーのうた』を公開する。長編アニメとしては2004年の傑作『マインド・ゲーム』以来13年ぶりとなった『夜は短し〜』から、今度はわずか1ヵ月。しかも初めてのオリジナルストーリーということで、コアな湯浅ファンにとっては嬉しすぎる、怒涛の展開である。

『夜は短し〜』は、原作=森見登美彦/脚本=上田誠/キャラクター原案=中村佑介/音楽=大島ミチル/主題歌=ASIAN KUNG-FU GENERATIONという、2010年に放映されて高い評価を得たテレビアニメ『四畳半神話体系』と同じ布陣で作られており、加えて主人公の声には旬な男=星野源を起用するなど、公開前から話題には事欠かなかった。

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それに比べると本作はいささか地味に思えてしまうが、「“天才”湯浅政明がほんとうに作りたかった物語」というキャッチコピーに嘘はなく、監督の自由な発想とアート性が恐ろしいほど高い純度で結晶している。身体を自在に変形させるキャラクターたち、リアリティよりも“気持ち”を優先させた色彩や背景美術、2014年の『ピンポン THE ANIMATION』以来のFlashアニメを発展させた動きのスムーズさなど、とにかくすべての要素が新しく、濃密で、オリジナルだ。

物語は、自分の殻に閉じこもりがちな田舎町の中学生=カイが、突然目の前に現れた人魚=ルーとの出会いによって変化し、成長していく過程を描いている。そして、好きなものを素直に好きと言えない現代日本の同調傾向に真っ向から疑問を投げかける物語の根幹は、音楽と密接に絡み合うことで見る者にわかりやすく提示される。

後編「さすが天才・湯浅政明! 斉藤和義の名曲のハマりっぷりに驚く」に続く…