貫禄も十分、女優と歌手を軽やかに往来する新世代の最注目株!

#スウィート17モンスター#映画を聴く

『スウィート17モンスター』
(C)MMXVI STX  Productions, LLC.  All Rights Reserved.
『スウィート17モンスター』
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…前編「“思春期あるある”に共感しまくり〜」より続く

【映画を聴く】『スウィート17モンスター』後編
“こじらせ&空回り系女子”になりきった演技力に舌を巻く!

ヒロインのネイディーンを演じるのは、ヘイリー・スタインフェルド。14歳の時、コーエン兄弟の2010年作品『トゥルー・グリッド』でデビュー。アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、一気にスターの仲間入りを果たしている。

音楽ファンならジョン・カーニー監督の『はじまりのうた』や人気ミュージカル映画の続編『ピッチ・パーフェクト2』での演技が印象深いかもしれない。前者では内気ながらギターの才能を秘めたバイオレットを、後者では作曲家志望のエミリーを演じている。

自身もアーティストとして昨年、シングル「Love Myself」でデビュー。アッパーなダンス・チューンをキレ味よく歌って踊るMVが話題となり、すでに100万ダウンロードを記録している。『ピッチ・パーフェクト2』でのエミリー役を通じて「自分はこれ(歌手)をやらなくちゃ!」と理解したそうで、デビュー曲とは思えない貫禄を見せつけている。女優と歌手を軽やかに往来できる、新世代の最注目株と言ってしまっていいだろう。

本作でのネイディーンの役どころは、アーティストとしての彼女の堂々とした存在感とは真逆だ。実際、ヘイリー自身は家族との絆が深く、ネイディーンのような複雑で孤独な環境に置かれた役を演じることを難しく感じたそうだが、ここでのヘイリーは完全に“こじらせ&空回り系女子”のネイディーンになりきっており、女優としての演技力にも改めて驚かされる。

物語は終始、このネイディーンの持つささくれ立った感情に引っ張られて進むのだが、終盤のある部分で軽やかな“転調”を迎える。それはネイディーンの思春期の終わりと、大人になる準備期間の到来を告げている。“『ゴーストワールド』よりリアルで『JUNO/ジュノ』よりイタくて身に迫り、『リトル・ミス・サンシャイン』より家族愛に感動する”というキャッチコピーの通り、“青春こじらせ映画”の新定番となりそうな一本である。(文:伊藤隆剛/ライター)

『スウィート17モンスター』は4月22日より公開される。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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