億単位を売り上げたAV出演料はたった30万円、そのうえ被害者となってしまった過去も

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小室友里

撮影時の本番行為を選べるようになったことは大きなメリット

【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV出演のリスクとは? 2】施行されてから5ヵ月が経過するも、いまなお賛否両論が上がっている「AV新法」。その成立に寄与したのが小室友里だ。かつてAV女優として一時代を築いた小室に話を聞いた。

AV新法には、「契約から1ヵ月は撮影禁止」「公表や販売ができるのは撮影から4ヵ月後」「公表から1年間は無条件で契約を解除できる」などさまざまな項目が設けられている。そのなかでも、元AV女優の視点から小室が評価している点があるという。

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「私が一番良かったなと思うのは、撮影時の本番行為を選べるようになったこと。自分がしたければすればいいし、やりたくなければやらなくていいという文言が入ったことを評価しています。パートナーがアダルトビデオに出ていたことを知ってしまったという相談を受けるなかで、『自分以外の男性と性行為をしたかどうか』を男性が非常に重要視しているからです。アダルトビデオに出演していたとしても、女優として必要な過程であり、セックスシーンが演技だったと分かれば、パートナーにとっての安心材料となる場合も多いでしょう。男性にとっては本番行為は、心理的な逃げ場のない事実になってしまうのです」

また小室は、AV業界の現状に危機感を感じているとも話す。

「AV女優も男優も“実演家”といって、『演じることを生業とする人』として映画やテレビに出ている俳優たちと同じ扱いです。けれども、業界内部から『AVは性産業だ』と発言してしまうと、AVがエンターテインメントではなくなってしまう危険性に繋がります」

原因となっているのは、先に挙げた本番行為に関する選択権がたどってきた歴史にある。

「AV史の専門家ではないので、あくまで私の知る限りの伝聞でお答えしますが、1981年にAV業界が始まったと言われています。当時は役をもらえない映画俳優たちがバイトのような感覚で始めたことなので、本番行為がなくて当たり前。みんな前貼りをして演じていたそうです。そこにセックスをしたい女性たちが業界に入ってきた。そんなふうに、一時は女優としてAVに出ている方とセックスが目的の方が混在していた時期もあったそうです。それでも女優の名前を出して作品を発表していた方は、本番行為をしたいかしたくないかの選択が可能。実際、私がデビューした1996年頃も女優たちはこの2タイプに分かれていました。ただ、それがだんだん本番行為をするのが当たり前という文化に変わっていったのです」

そしてその要因のひとつにある技術の進化が関係しているという。

「きっかけは、モザイクの進化。薄くて小さくなってくると本番をしていないことがバレるので、メーカー側すると『してもらわないと困る』という考えになりますよね。さらに、新たに業界に入ってくる方は、本番行為をしている作品を見て入ってくることもあり、『するのが当然』という認識。そうやって少しずつ本番行為に対する概念が変わっていったのが背景にはあるのではないでしょうか。ただ、いまでも1日に複数の撮影を行わないといけない場合、女性にとっては何度も本番行為をするのは負担なので、女優さんたちの体調を見ながら調整しているという話は聞いたことがあります」

モザイクが引き起こした問題に関しては、小室自身も被害者の一人だったと明かす。

「1997年頃に、新規参入のメーカーからご依頼である企画に起用していただいたことがありました。作品が出来上がるまで私もプロダクションも知らなかったのですが、実はモザイクが、目を凝らせば性器が見えてしまうくらい薄いものだったんです。メーカーは初めからギリギリの薄さを選んで制作するつもりだったようです。一度世の中に出てしまうと私もプロダクションもどうすることもできません。結果、売り上げは億単位になるほどの大ヒットになったと聞いています。当時の出演料は二次使用料も含めた契約が主流。私がもらった出演料は、たった30万円でした。その後、メーカーの方が別件で逮捕されたのをきっかけに、この作品も回収されることになりましたが、出演者であっても傍観者の一人になってしまうのが現実でした」【3 AV引退後に突きつけられた拒絶、「変なビデオを流すんじゃないだろうな」と怒鳴り込まれたことも】に続く(2022年12月10日掲載予定)(text:志村昌美/photo:中村好伸)

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