ろうあの娘を抱えたシングルマザーに忍び寄る、亡き夫の“幼なじみ”の影…

#イラン#シングルマザー#ベタシュ・サナイハ#ベルリン国際映画祭#マリヤム・モガッダム#冤罪#死刑#白い牛のバラッド#社会問題

『白い牛のバラッド』
白い犬のバラッド
白い犬のバラッド
白い犬のバラッド

ベルリン国際映画祭金熊賞&観客賞ノミネート作品『白い牛のバラッド』

愛する夫が冤罪で死刑を受け、ろうあの娘と暮らすシングルマザーを描いた、第71回ベルリン国際映画祭金熊賞&観客賞ノミネート作品『白い牛のバラッド』が、2月18日に公開される。このたび、注目の本編映像が初公開された。

・冤罪で夫が死刑に! 遺されたろうあの娘を育てるシングルマザー

このたび公開された本編映像は、謎の男が、夫ババクを死刑で失ったシングルマザーの妻ミナと出会う場面。

眉間に皺寄せた神妙な面持ちで近づいてくるその男は、言葉を詰まらせながらも自らをレザと名乗り、ババクの古い友人だという。

そして、突然訪ねてきたワケは、生前に借りたお金を返すためだと説明するが、ミナにとっては初耳だった。

それでも真摯に受け答えをするミナ。“ある秘密”によって結び付けられた2人の今後の展開が気になる場面となっている。

白い犬のバラッド

ここではサウンドにも注目(耳)!

2人の会話の背景に飛び交う街の雑踏やテレビの音など、見る者には暗騒音が際立って聞こえる。しかしレザが「子どもの前でする話ではないですね、すみません」と言うと、ミナは娘がろうあであることを告げ、見る者もはたと気づかされる。

死刑執行世界2位のイラン本国では上映禁止

本作品は、テヘランの牛乳工場に勤め、夫のババクを殺人罪で死刑に処されたシングルマザーのミナの物語。

白い犬のバラッド

刑の執行から1年が経とうとする今なお深い喪失感に囚われているミナは、ろうあの娘ビタの存在を心の拠り所にしていた。ある日、裁判所に呼び出されたミナは、別の人物が真犯人だと知らされる。ミナはショックのあまり泣き崩れ、理不尽な現実を受け入れられず、謝罪を求めて繰り返し裁判所に足を運ぶが、夫に死刑を宣告した担当判事に会うことさえ叶わなかった。するとミナのもとに夫の友人を名乗る中年男性レザが訪ねてくる。ミナは親切な彼に心を開いていくが、ふたりを結びつける“ある秘密”には気づいていなかった……。

死刑執行数世界2位のイラン本国では、20年2月のファジル国際映画祭で3回上映された以降は、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、2年近く上映されていない。

社会的・人間的問題に正直な映画は世界に影響力を発揮できる

べタシュ・サナイハ監督とマリヤム・モガッダム監督は、本作品で身の危険を冒してでもチャレンジに挑み、破格の衝撃性みなぎる冤罪サスペンスに結実させた。

監督兼主演を務めたマリヤムは、「イラン映画の特質のひとつは、社会的、人間的な問題に対して正直であることですが、検閲が存在するため、これを達成するのは容易ではありません」と振り返る。

続けて「この目標を達成した映画は、影響力を持つことができます。映画という窓を通して、世界の人々と孤立したイランの人々が互いを見ることができるからです」と語り、本作品を通じてシングルマザーの女性の生きづらさやイランの死刑制度など、社会の不条理を世界に向けて発信することへの意気込みを見せた。

『白い牛のバラッド』は、2月18日に公開される。