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『家族のレシピ』斎藤工インタビュー

映画作りにも働き方改革を! 海外の現場から学んだ大切なものとは

『家族のレシピ』斎藤工インタビュー
松田聖子さんは、精霊のような不思議な魅力がある

『家族のレシピ』
2019年3月9日より全国公開
(C)Wild Orange Artists/Zhao Wei Films/Comme des Cinemas/Version Originale
国内外問わず、映画というフィールドで挑戦し続けている斎藤工。俳優や監督としてだけでなく、企画、原案、プロデュース、映画評論、さらには映画館の無い地域や被災地に映画を届ける移動映画館の主催にいたるまで、独自の路線を貫いている。ときにはジャンルを超えて才能を発揮しており、その活躍ぶりはもはや言うまでもない。

そんななか、「通行人でもいいから出たかった」と出演を熱望したのがシンガポール映画界の第一人者といわれるエリック・クー監督の最新作『家族のレシピ』。日本とシンガポールのソウルフードをモチーフに、バラバラになった家族の絆を取り戻そうと奔走する主人公の真人を演じている。そこで今回は現場を通して感じた思いや自身の家族のレシピについて語ってもらった。


──今回はスカイプオーディションを経て出演が決まったということですが、この作品に出たいと思った理由は?

斎藤工
斎藤:脚本を読んでとかではなく、監督がエリック・クーだったからです。僕は世界で戦っているアジア出身のフィルムメイカーやクリエイターに以前から着目していましたが、彼はシンガポール映画の創立メンバーとして、後輩を育てながらシンガポール映画界を引率し続けている存在。
 そういう彼の受容性の高さに尊敬と魅力を感じていたので、そんなエリックが日本人のキャストを探しているという情報を得たときは、どんな形でもいいから関わりたいと思いました。

──日本だけでなく、シンガポールでの撮影もありましたが、シンガポールの俳優陣と共演してみていかがでしたか?

斎藤:シンガポールは東京よりも小さくて、人口は神奈川県よりも少ないんですが、国全体が持っているパワーは外に向いていて、跳ねるようなエネルギーを持っていると感じました。
 共演したマーク・リーはコメディアンとしても人気ですし、ジネット・アウも監督や絵本作家としても活動しているので、多才で優秀な方が多いという印象。しかも、彼らは基本的にマンダリンと英語が話せるので、中国語圏だけでなく英語圏でも未来を描ける人たちというのは僕にとっては刺激的でした。

──そのなかでも、彼らとの撮影で印象に残っているシーンはありますか?

斎藤工
斎藤:マーク・リーは僕の叔父役でしたが、本番でいきなりアドリブをしてきました。ただ、すごいのはまったく違う“成分”を入れるのではなく、あくまでも役柄の延長線上にあるもの。そこで空気がグッと彼に吸い寄せられる瞬間を肌で感じましたが、それに対して僕もただ茫然としていてはだめだなと思ったので、真人として反応するようにしていました。
 そういう意味で、彼とのシーンは即興で発展していったシーンが多かったです。シンガポールの俳優さんたちはすごく誠実で、ユーモアのある魅力的な方ばかりだと思いました。

──共演者の松田聖子さんはアジアでも絶大な人気ですが、出演が決まったときはどう思いましたか?

斎藤:あまりにもレジェンド的な存在なので、日本の企画だったらできないキャスティングだと感じました。僕も聖子さんと共演するという未来はまったく思い描いてなかったですから(笑)。

──それはやはりエリック・クー監督だからこそ実現したということでしょうか?

斎藤:そうですね。エリックが聖子さんの大ファンだったということもありますが、今回は聖子さんを認知しているアジアの観客に向けてではなく、エリックの市場であるヨーロッパの人たちが見たときにどう映っているのかを考えたうえでの巧妙なキャスティングだなと感じました。

──実際に松田さんと向き合ってみて、どのような印象を受けましたか?

斎藤工
斎藤:本読みのときに思ったのは、聖子さんの声は耳ではなく心に届く声だということ。第一声を聞いたときに僕のなかではすべてが成立したような感覚でした。そういう精霊のような不思議な魅力をお持ちの方だと思います。

──ご自身が演じられた真人は、ラーメン屋で働いていた青年ですが、役作りで料理なども練習されましたか?

斎藤:今回は実際に麺づくりの工程も全部体験させてもらいました。あとは、麺に合わせたスープを自宅で作ったこともありましたが、自分の好みとして最終的にたどり着いたのは、あさりだしのスープです。そのほかには、シンガポールのバクテーも作ってみたり、ラーメン屋さんに行ったときに店員さんの動きを観察もしていました。

──普段からお料理もされるのですか?

『家族のレシピ』
(C)Wild Orange Artists/Zhao Wei Films/Comme des Cinemas/Version Originale
斎藤:若い頃にパックパッカーをしていた時期があったので、そのときに自炊を余儀なくされていましたが、繊細な料理のレパートリーはあまりないです(笑)。でも、友人が家に来たときに振る舞える固定メニューを4つくらい、自分のなかで用意しています。

──ちなみに、どのようなものですか?

斎藤:代表的なものだとオニオングラタンスープ。おしゃれでも何でもなくて、自分が食べて本当においしかったものや感動したものを再現しているだけです。

──ということは、料理をすることはお好きなんですか?

斎藤:めんどくさがりなので、なかなか習慣になっていないですね。ただ、父が映像業界から料理の世界に転じた人間なので、その姿を見ていると食の世界もクリエイティブでフィルムメイキングと似ているなとは感じています。
 つまり、素材を集めて、それらを合わせて、人に楽しんでもらって、でもあと片付けが大変みたいなところです。父が厨房に立っているのは自然なことだったので、演じるにあたって影響を受けたところもあったと思います。

(2019/03/06)


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斎藤工
さいとう・たくみ

1981年8月22日生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビューを果たしたのち、TVドラマ『最上の命医』(11年)や『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(14年)で注目を集める。映画でも『愛と誠』(12年)や『無伴奏』(16年)、『団地』(16年)、『のみとり侍』(18年)といった話題作に次々と出演。公開待機作は『麻雀放浪記2020』や主演のほかに企画・プロデュースも務める『MANRIKI』など。また、2012年からは齊藤工名義でフィルムメーカーとしての活動を開始。初長編監督作品『blank 13』(18年)では、上海国際映画祭にてアジア新人部門最優秀監督賞の受賞をはじめ、国内外の映画祭で8冠を獲得した。HBOアジアのオムニバスドラマ『FOLKLORE』では日本の代表として『TATAMI』を監督。また、白黒写真家として撮影した『守破離』がパリ・ルーブル美術館で開催された学展で銅賞を獲得するなど、海外での活躍も期待されている。

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