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『ファースト・マン』デイミアン・チャゼル監督インタビュー

謎に包まれた“最初の男”の重責を映画化

『ファースト・マン』デイミアン・チャゼル監督インタビュー
たった1人で背負い第一歩を踏み出した彼の勇気に感銘を受けた

『ファースト・マン』
2019年2月8日より全国公開中
(C)Universal Pictures
大ヒット作『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再タッグを組んだ『ファースト・マン』。前作から一転、本作で描かれるのは月面に最初に降り立った男の物語だ。

過酷なミッションの裏にあった様々なトラブルや、志半ばで亡くなった仲間たち……。今振り返れば無謀すぎる挑戦の全てが描かれていく。

栄光の記録とは異なる描き方に、トランプ大統領は「見るつもりはない」と発言したというが、そんな本作についてチャゼル監督に聞いた。


──まずは作品の内容をご説明ください。

『ファースト・マン』
(C)Universal Pictures
監督:『ファースト・マン』は宇宙飛行士ニール・アームストロングの月面着陸までの活躍を本人の視点で描いた作品だ。

──どのような経緯で本作を手がけることになったのですか?

監督:この作品との関わりが始まったのは、『セッション』の仕事が終わった直後だった。ウィク・ゴッドフリーらといった本作のプロデューサーがニールの自伝の映画化権を手に入れていた。 だが、僕は監督の打診を受けても躊躇していた。宇宙に強い思い入れはなかったからね。子どもの頃に宇宙飛行士に憧れたりはしたけど、ニール・アームストロングもアポロ計画もよく知らない。でもある時、原作の本を眺めていたら、突然作品のイメージが湧いたんだ。当時のロケットや宇宙船は本当に壊れやすく、月面着陸は無謀な挑戦だった。だからこそ国を挙げて取り組んだんだ。ニールはその重荷をたった1人で背負い、第一歩を踏み出した。その勇気に僕は感銘を受けた。そこで 生涯を描く伝記映画ではなく、彼の目線で描くことにした。1962年にNASAに入ってから、1969年に月を訪れ生還するまでの物語だ。彼と家族がどんな思いで過ごしたかを描いたよ。

──ニールは謎に包まれた人でした。初めて月面を歩き、歴史に名を残しましたが、私生活や家族についてあまり話さなかったそうですね。これもリサーチを行う上で、初めて知った意外な一面でしたか?

『ファースト・マン』
(C)Universal Pictures
監督:謎に包まれているからこそ魅力を感じたんだ。世界的な有名人であるニールの素顔が知られていないのは驚くべきことだが、だからこそ観客は自分自身を重ねやすい。ニールはあの時代を象徴する人物だ。だが、生身の人間として見るならば、父親、夫、息子であり、1人の男だ。そう考えて調べてみると、予想外の人物像が浮かんでくる。彼は宇宙開発レースの立て役者だが、決して熱血タイプのパイロットではない。彼は元々エンジニアで、飛行機を理解するためパイロットになったんだ。命知らずの冒険家というイメージだったが、実際には月面着陸のミッションも、仕事の一環だった。問題を解決するのが彼の仕事で、月面着陸は単に大きな問題の1つなんだ。性格も謙虚で物静かだったらしい。僕にとっては、そこが魅力だ。ライアン・ゴズリングならうまく演じられると思ったよ。

──『ラ・ラ・ランド』製作の前にライアン・ゴズリングにニール役を打診したそうですね。

監督:『ラ・ラ・ランド』の時とはまったく違う演技を見せたね。僕は『ラ・ラ・ランド』の前にライアンと会い、ニール役を打診したんだ。まだ、ジョシュ・シンガーも脚本の執筆を始めたばかりだったが、僕はライアンしかいないと思っていた。彼以外で撮るなんて、想像もできなかったよ。ライアンはニール役に興味を持ってくれたが、なぜか話が脇道にそれて、ジーン・ケリーの話になった。それがきっかけで先に『ラ・ラ・ランド』を撮り、彼への信頼がさらにあつくなった。彼ならニールをうまく演じてくれると確信したよ。そして『ラ・ラ・ランド』の後、すぐに準備を始めた。脚本家と共にストーリーを練り上げ、彼以外の出演者も決めた。ライアンと僕にとって充実した準備期間だった。ニールの家族にも会うことができたし、ヒューストンやフロリダの基地なども訪問した。あらゆるディテールをできる限り取り入れ、ドキュメンタリーに近づけた。1960年代のヒューストンを訪れて、撮ってきたような映像にしたよ。過去を美化するような映像ではなく、ニールの身になって観客に体感してもらいたい。狭いカプセルの中まで入ってもらうよ。

──最初の妻ジャネット役にクレア・フォイを選んだ理由は?

『ファースト・マン』
(C)Universal Pictures
監督:実は、クレアのことはよく知らなかった。もちろん(Netflixのドラマ)『ザ・クラウン』の演技は見事だったが、ニールの妻役に適しているかは未知数だった。1960年代の話で、アメリカ中西部で育った女性という設定だ。だが、クレアと会ってみたら彼女なら大丈夫だと確信を持てた。演技力もあるし、人柄もすばらしいんだ。彼女に決まると約3週間のスケジュールを組み、家族役のリハーサル期間を設けた。ライアンとクレアと子役の2人を呼び、ロケ地で過ごしてもらった。その映像は完成版でも使っているよ。彼ら4人に家族ごっこを命じたんだ。一緒に公園に行き、食事やケンカをして……、口論して仲直りする姿などを全部撮った。映画初出演の子役はカメラに慣れることができたし、夫婦役の2人は役がなじんできた。クランクインの頃には4人は家族の顔になり、しっかりとした絆を感じられたよ。準備期間のおかげで、撮影がすんなりと進んだんだ。

──ライアンとクレア以外の出演者もすばらしいですね。

監督:本作に出演した俳優の顔ぶれは、映画監督にとって夢のようだよ。豪華な俳優陣と仕事ができて幸せだった。キャスティング担当のF・マイスラーの功績も大きい。僕らは俳優たちを慎重に選択していった。実力のある俳優を集めたいのはもちろんだが、ドキュメンタリー風の映像で目立ちすぎる人は避けた。たとえばNASAの管制室のシーンには、実際にNASAで働く管制官やエンジニアが出演した。なるべく本物の職員に出てもらうことで、俳優たちに実際の現場の空気を感じてもらった。徹底的にリアリティーを追求した環境の中で、俳優と職員の共演は、驚きの効果を生み、ドキュメンタリー風に撮影が進んだ。カメラのフレームの外でもいろんなことが起きていたが、本当に優秀な俳優たちがそろっていたので、すべてを演技に生かしてくれた。最近では珍しい撮影方法だが、勇気を抱いて挑戦した甲斐があったよ。

──『ラ・ラ・ランド』と違い、今回はかなりCGが使われていますね。

監督:撮影監督はどちらもリヌス・サンドグレンだ。『ラ・ラ・ランド』に比べると多いけれど、彼と意見が一致していたのは「なるべくCGを減らす」ということだった。特殊効果を最大限使うようにして、CG合成のみに頼るシーンは少なくした。セットの窓からは宇宙が見えたんだ。巨大なLEDスクリーンで背景を映し出した。宇宙船などのセットは実物大で“X-15”や訓練用の装置も作った。ジェミニ宇宙船やアポロ宇宙船もだ。俳優たちは宇宙服を着て、コンピューター制御のセットに乗り込み、前後左右に揺さぶられていた。3Dシミュレーターと同じで、小型カメラを仕込み、乗組員の目線で撮影している。彼らの心情まで捉えたかった。それが、本作の宇宙空間の表現だ。宇宙飛行士の主観的な視点で撮った。彼らと同じ光景を見て、宇宙船の狭さを体感してほしい。宇宙に飛び出し、月に着陸した時の感動もね。限りない開放感を味わったと思う。それまで恐ろしいほど狭苦しく、頼りない宇宙船に乗ってきたんだ。

(2019/02/08)


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デイミアン・チャゼル
Damien Chazelle

1985年1月19日生まれ、アメリカのロードアイランド州出身。ミュージシャン志望から映画志望に転身し、ハーバード大学を卒業後、脚本家を経て『セッション』(14年)で本格的に監督デビュー。『ラ・ラ・ランド』(16年)でアカデミー賞監督賞ほか6部門受賞に輝く。

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