『渇き。』小松菜奈インタビュー

新人女優が中島監督、役所広司ほか豪華俳優陣と対峙。現場に臨んだ気持ちとは?

#小松菜奈

役所さんの「心に余裕をもって演じれば大丈夫だよ」という言葉に救われた

映画『嫌われ松子の一生』(06年)や『告白』(10年)など、独創的な世界観をスクリーンで表現してきた中島哲也監督の最新作『渇き。』。謎の失踪を遂げた娘を狂気に満ちた形相で追い続ける父親。次第に明らかになる娘の裏の顔……。人間の持つ愚かさや残酷さを中島監督ならではのエンターテインメント作品に仕上げた快作だ。

そんな本作で役所広司演じる藤島の娘・加奈子に抜擢されたのが、劇場公開映画初出演となる小松菜奈だ。“厳しい現場”と言われている中島組に挑んだ18歳の新鋭女優の素顔に迫った。

──中島組での撮影はいかがでしたか?

小松:中島監督は怖いと聞いていたので、現場では怒られるんだろうなって思っていたんです。でもそれには負けたくないという気持ちは強かったです。また登場人物のキャラクターがとても個性的なので、加奈子の存在感が消されてしまうのも嫌だなって思っていました。撮影は緊張するし、大変だろうと想像していましたが「私が加奈子を演じるんだ」という強い気持ちを持って臨みました。実際、監督はとても優しかったですけどね(笑)。

──お父さん役の役所さんをはじめ、中谷美紀さん、妻夫木聡さんなど、錚々たる顔ぶれに囲まれての大役でしたが、いかがでしたか?

小松:共演者の名前を聞いたときは「どうしよう!」って不安しかなかったですが、そのなかでも、自分にしかできない加奈子を演じたいという思いは強かったので頑張りました。出来上がった作品を見て、加奈子の伸び伸びとした部分は表現することができたのかなって感じることができたので良かったです。

小松菜奈

──役所さんとはかなりハードなシーンがありましたが、共演してみていかがでしたか?

小松:対峙するシーンでは、中島監督から、なかなかOKがもらえずパニックになってしまったんですね。でもそのとき、役所さんに「心に余裕をもって演じれば大丈夫だよ」って言っていただき、それで緊張がほぐれてOKが出たんです。その言葉にはとても救われました。

橋本愛ちゃんは一度会ってみたいと思っていた
小松菜奈

──一方で、同世代の俳優さんたちとのシーンでは伸び伸びとした表情が出ていますね。

小松:カラオケのシーンがあるのですが、唯一同世代の子たちと一緒にワイワイやる場面だったので、素で楽しめました(笑)。橋本愛ちゃんは一度会ってみたいと思っていたし、森川葵ちゃんも元々仲が良かったので、楽しく話ができて元気付けられました。

──同世代の俳優さんとの共演は刺激になりますか?

小松:“ボク”役の清水(尋也)くんとの撮影が多かったんですね。彼もすごく大変そうだったのですが、雰囲気も出せているし、自然な演技で上手だなって……。一緒に演じていても、すごく余裕があるように感じたんです。私は演技するのもセリフを覚えるのも、精一杯だったのですが、清水君は休憩中とかも色々な人と話をしていたり、緊張している風に見えなかったんです。でも、話をすると「緊張しているよ」って。うらやましいなって思う一方で、私は負けず嫌いな性格なので「自分も頑張らなくちゃ!」っていう気持ちが生まれて刺激になりました。

小松菜奈

──緊張しやすいタイプなんですか?

小松:スタジオとかで周りを壁に囲まれていると緊張しちゃうんです。カメラとか回っていると、なんかうまくしゃべれなくて……。でも、ロケだと緊張しないんですよ。この映画でも屋上のシーンとかは、開放感があって伸び伸びと演じることができたんですけどね(笑)。

──インドアよりもアウトドアがお好きなんですか?

小松:はい。運動がすごく好きなんです。学生時代はジャズダンスやチアリーディングをやっていましたし、中学の陸上大会でも選抜選手に選ばれたりしたんです。NTT docomo dビデオBeeTVのCMとかでも走るシーンがあったのですが、「足が速そうだね」とか「走り方が格好いいね」って言われると嬉しいですね。

制服を着ていると若返ったような、新鮮な気持ちになる
──本作では「愛する娘は、バケモノでした。」というコピーがつくような役でしたが、今後やってみたい役はありますか?
小松菜奈

小松:私は蒼井優さんが好きなので、彼女が出演しているような雰囲気のある映画に出てみたいですね。あとは田舎に住む女の子みたいな……。自然の多い場所で撮影したいです。あとは、学生の役は嬉しいですね。制服を着ていると若返ったような気持になると言うか、新鮮な気持ちになります!

──何歳ぐらいまで制服は着たい?

小松:制服って憧れで、着ているだけで楽しい気分になりますよね。だからいつまでも……とは思いますが、周りの人から痛々しいって思われたら嫌かもしれませんね。「それはアウトだろう」って(笑)。

──いよいよ公開が近づいてきましたね。

小松:早く公開してほしいって思っていたので、とても楽しみです。色々な人に見てほしいのですが、特に同世代の若い子がどんなことを感じるのかとても興味があります。私が演じた加奈子の不思議な魅力によって、周囲の人がどんどん狂わされていくさまに注目してほしいです。

(text&photo 磯部正和)

小松菜奈
小松菜奈
こまつ・なな

1996年2月16日生まれ。東京都出身。08年よりモデルとして活動を開始。その後、雑誌やPVなどで活躍し、「NTT docomo dビデオ」のCMで話題を集める。『渇き。』(14年)で中島哲也監督に抜擢され、劇場公開映画デビューを果たす。その他の作品は『近キョリ恋愛』(14年)、『バクマン。』(15年)、『ヒーローマニア-生活-』(16年)、『ディストラクション・ベイビーズ』(16年)など。

小松菜奈
渇き。
2014年6月27日より全国公開
[製作]小竹里美、鈴木ゆたか
[監督]中島哲也
[脚本]中島哲也、門間宣裕、唯野未歩子
[原作]深町秋生
[出演]役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、清水尋也、二階堂ふみ、橋本愛、オダギリジョー、中谷美紀
[DATA]2014年/日本/ギャガ

(C) 2014「渇き。」製作委員会