『もらとりあむタマ子』前田敦子&山下敦弘インタビュー

強力のコラボが新境地に挑む!

#前田敦子#山下敦弘

また大好きな山下敦弘監督の作品に出られるというだけで嬉しかった(前田)

映画『苦役列車』(12年)でヒロイン桜井康子を好演し、日本映画プロフェッショナル大賞・主演女優賞を受賞するなど、女優として大いなる可能性を見せた前田敦子。AKB48卒業後は「女優業」を中心に活動し、本年公開の映画『クロユリ団地』ではホラー作品で恐怖におののくヒロインを熱演。絶叫シーンは話題を呼んだ。

着実に女優としてステップアップしている前田の最新作は、自身が「大好きな監督」と公言している山下敦弘監督のオリジナル作品『もらとりあむタマ子』。

「逆ギレ、ぐうたら、口だけ番長」というキャッチフレーズが並ぶ本作のヒロイン・タマ子はいったいどんなキャラクターなのか? 『苦役列車』以来、2度目となるタッグを組んだ前田と山下監督に話を聞いた。

──山下監督から『もらとりあむタマ子』の話をいただいたとき、どんなお気持ちでしたか?

前田:実はお話をいただいたのは『苦役列車』の初日舞台挨拶のときだったんです。だから、こんなに早くまた大好きな監督の作品に出られるというだけで嬉しかったので、どんな役かも聞かずに、すぐに「やりたいです!」って言いました。

──その役は食っちゃ寝、食っちゃ寝のダラダラした女の子でした。

監督:四季をテーマに、季節ごとにショートストーリーを前田さんで作らないかって話があったんです。僕のなかでは、前田さんって普通の役をやっているイメージがなかったので、等身大の23歳を見てみたいって思ったんです。まあ、ぐうたらな部分は僕の趣味なんですけど、『苦役列車』の舞台挨拶で1日何回も一緒に劇場を回っていると、最後の方は集中力がなくなって、舞台袖でなんかフワフワしてたり、スカートをバサバサしたり……。その姿が魅力的だったので「こういう前田さんを撮ろう」って思ったんです。

前田:台本いただいたときは、設定とかはすごい面白いなって思ったのですが、前半部分はほとんどセリフがなかったので、どんな感じなんだろうという思いと、(現場に)行ってみないとわからないというワクワク感がありました。タマ子はダラダラした感じですが、私のことを知っている人が見ると、食べ方とかはそのままみたいですよ(笑)。

僕のなかでは、スケールの小さい「北の国から」みたいな感じ(笑)(監督)
前田敦子

──タマ子みたいな生活、前田さんはどう思いますか?

前田:学生時代は部活も入っていなくて帰宅部だったんです。しかもあんまり友だちもいなかったので毎日学校が終わると家に帰って、夕方から夜まで寝て、晩ご飯食べてまた寝るみたいな(笑)。だから学生時代を思い出しましたね。今も毎日バタバタしているわけじゃないので、そういう日もあったりします。ただずっとだと嫌かも……。メリハリは必要だと思います。

──当初、映画にする予定ではなかったと聞きましたが?

監督:最初は音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」の30秒のステーションIDとして短編を……という話だったので、映画を作るって構えて臨んだ作品じゃなかったんです。みんな他の仕事をやりつつ、半年ぐらいかけて、その季節になると集まって撮影してって感じで。僕のなかでは、すごいスケールの小さい「北の国から」みたいな(笑)。そんななかでも(物語の舞台となる)甲府スポーツに集まると、独特の空気感になるんです。今まで経験したことない不思議な現場でしたが楽しめました。

前田:本当にそんな感じだったから、映画になって、こうやって取材を受けているのが不思議なんです。

山下敦弘監督

──それだけ間隔が空くと、役に入るのが大変じゃなかったですか?

前田:前の撮影から3ヵ月間空いたりするので、久々に撮影するときはタマ子の感覚を忘れてしまっているのかなって思っていたのですが、意外とすんなり入れました。

監督:1年の話だから、時間が空いていてもつながりを気にする必要がないんですよ。だから、その時々の前田さんの状態を活かして撮影ができた。普通の現場だとつながりがあるから、髪の毛が短くなったり、印象が変わったりすると大変なんだけど、逆にその変化を活かして撮ろうっていうことが出来たんです。そういう部分もこの作品の空気感になっていると思います。

──父娘の微妙な関係がリアルに描かれていますが?

前田:好きだけど、あるラインで線を引いているような……。ここまではしゃべるけど、これ以上はしゃべる必要がないとか、そういう感じはとてもしっくりきましたね。お互い嫌いじゃないって分かっているから、喧嘩しても大丈夫という信頼関係。演じていて心地よかったです。

──何事にも淡々としていたタマ子が、父親の再婚の話である変化を見せます。前田さんにとって、理想の夫婦像は?

監督:それ、俺も聞きたい!

前田:基本はうちのお父さんとお母さんですかね。両親仲良しですし、母親は私が小さいときからずっと専業主婦をしていました。

前田敦子

──ということは専業主婦願望があるんですか?

前田:う〜ん、まだ分からないですけど、男の人がしっかりしている人だったら、女の人が家にいるっていうのもいいかなって思いますね。

監督:相手によるってことか……。でも、もししっかり仕事をしている人で「仕事やめてくれ!」って言われたやめちゃうの?

前田:やめちゃうかもしれません。あ〜でも、そのときになってみないとわからないかな(笑)。

自由気ままに生きている小悪魔的な女の子を見るのは楽しい(前田)
前田敦子

──昨年AKB48を卒業してから、映画三昧の日々と話されていましたが、今もそうですか?

前田:見ていますね。毎日というわけではありませんが、平均すると月に20〜30本は見ていると思います。

──最近見た作品で印象に残っているものはありますか?

前田:山下監督から勧められた『なまいきシャルロット』は見ました。可愛かった! 最近フランス映画にはまっているんですが、女の子が本当に魅力的に描かれていて、とっても可愛いんです。ゴダール監督の『女は女である』も面白かった。あとは、山下監督は「見ない!」って言うのですが、私は恋愛映画も好きですね。

──どんな恋愛映画が好みですか?

前田:『(500)日のサマー』とか好きです。ちょっと変わった女の子が出てきて、男の子を困らせたり。そんな映画が好みですね。

──困らせたい願望があるのですか?
前田敦子

前田:あるかもしれませんね。そういう映画のなかで描かれている女の子って、みんなとっても可愛いじゃないですか。可愛い子だったらなんでも許されるみたいな(笑)。自由気ままに生きている小悪魔的な女の子の姿が描かれているのを見るのは楽しいです。でも自分にはそういう部分がないから……。

──監督が次にオリジナルで前田さんを撮るならどんな映画にしたいですか?

監督:自分の好みだけで言うと、タマ子みたいな女の子が好きなんですよ。1人で生きている気になっていて、根拠のない自信を持っている子(笑)。でも、もし脚本の向井(康介)と一緒にやることになったら、「山下、そろそろ前田さんで恋愛映画やれよ!」って言われると思う。自分でも前田さんの恋愛映画は見てみたいんだけど、恥ずかしいので、たどたどしい演出になっちゃうと思うんですよね。『苦役列車』の康子、そして今回のタマ子、次は全く違ったものを撮りたいですね。

前田敦子(左)と山下敦弘監督(右)

──山下監督がこう仰っていますが?

前田:監督と向井さんが用意する作品なので、きっとまっすぐな恋愛映画じゃないと思うんですよね。その意味ではすごく興味あります。

──歪んだ恋愛と純愛、どっちをやってみたいですか?

前田:歪んだのは……嫌ですね。自分で演じているのを見たくないかも(笑)。

(text&photo=磯部正和)

前田敦子
前田敦子
まえだ・あつこ

1991年7月10日生まれ、千葉県出身。05年「AKB48オープニングメンバーオーディション」に合格し歌手デビュー。07年には映画『あしたの私のつくり方』でスクリーンデビューを果たすと、『伝染歌』(07年)『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(11年)、『苦役列車』(12年)と女優としてのキャリアを積む一方で、AKB48の絶対的エースとして、シングル選抜総選挙では2度1位を獲得。12年8月27日には、ファンに惜しまれながらもAKB48を卒業。卒業後も、映画『クロユリ団地』(13年)に主演するなど女優として活躍している。

山下敦弘
山下敦弘
やました・のぶひろ

1976年8月29日生まれ、愛知県出身。学生時代から自主映画を製作し、『どんてん生活』(99年)、『ばかのハコ船』(02年)、『リアリズムの宿』(03年)などの劇場公開作品を輩出し、注目を浴びる。07年には『天然コケッコー』で第32回報知映画賞監督賞など、数々の賞を受賞した。その後も『マイ・バック・ページ』(11年)、『苦役列車』(12年)などを発表し、国内外で高い評価を得ている。

山下敦弘
もらとりあむタマ子
2013年11月23日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開
[監督]山下敦弘
[脚本]向井康介
[出演]前田敦子、康すおん、鈴木慶一、中村久美、富田靖子
[DATA]2013年/日本/ビターズ・エンド

(C) 2013『もらとりあむタマ子』製作委員会