『イエスタデイズ』塚本高史&國村隼インタビュー

ファンタジックな感動作で反発し合う親子を演じた塚本高史と國村隼を直撃!

『イエスタデイズ』塚本高史&國村隼インタビュー

國村隼さんみたいな人になりたい(塚本高史)
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  • 人気ミステリー作家・本多孝好の短編を映画化した『イエスタデイズ』は、父に反発する息子が、がんに冒され余命幾ばくもない父の願いを聞き入れ、32年前に姿を消した当時の恋人を探しをはじめるというストーリー。ヒョンなことから時空を飛び越えてしまった息子が出会ったのは、若かりし日の父とその恋人。やがて息子は、知られざる父の思いを知ることになる──。
    人を思う気持ちや父子関係を綴ったこの映画で、主人公の息子とその父親役に扮したのは、これが初共演となる塚本高史と國村隼。取材中、息もピッタリなところを幾度も見せてくれた2人に、お互いの印象や映画の見どころについて語ってもらった。
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  • ──まずは初共演ということで、お互いの感想を。
  • 塚本高史(以下、塚本):あまり僕は、人のことを尊敬したり、素晴らしいと思ったりしないのですが、國村さんは「こんな人に出会ったことがなかった」というくらい、素晴らしい人なんですよ。
     
  • 國村隼(以下、國村):どうしましょうか(笑)。
     
  • 塚本:本当に。大御所の人だと、もっと上から目線で言ってくる人もいると思うんですけど、現場の空気を大事に芝居をしている人っていうのは、こういう素晴らしい人に育つのだなって(笑)。僕も50歳を過ぎて、まだ役者をやっていれば、國村隼さんみたいな人になりたいなと思います。
     
  • 國村:何を仰いますやら、ねえ? 塚本君という人はね、初日に会って、ファーストカットを撮ったときに、すごくキャラクターに対するアプローチの方法論が自分に似ているなと思って。お互いが次にどういう風に出てくるのか? 僕はいつも、それを楽しむタイプなんですけど、彼もそうなんですよね。だから、やりやすいって言葉は語弊があるかもしれないけど、そういう意味じゃ、一番わかりやすいかな。楽しいんですよ。何テイク重ねても、同じテイクがないので(笑)。
     
  • ──この映画では、父と息子の関係やわだかまりがテーマになっていますが、一般的にその関係は複雑になりがちだと思います。ご自身の父と子の関係はどうでしょう?
  • 塚本:近いものがありますね。まったく同じじゃないけれど、何となくわかるって感じで。オヤジとの微妙な距離感っていうのは、こんな感じだよねっていう点では、僕は共感しましたね。
     
  • ──塚本さんはお子さんができ、今は父親の立場でもあるかと思いますが。
  • 塚本:反面教師というか、こういう親子関係にはしたくないな、と(笑)。歩み寄ってくれるのは子どもの方。でも、血のつながっている友だちのような関係でいたいという気持ちもあるので。子どもは物心がついて、体が大きくなれば、親を意識して壁を作ったり、距離をとったりすると思うんですよ。それを、壁を作らせないように近づいて、お互いに成長していける親になればいいなと思います。
     
  • 國村:いい親になりそうだね(笑)。
     
  • ──國村さんはいかがですか?
  • 國村:えー、父と子という関係はむずかしくてね。父親って、母親と比べたら、子どもに対する距離って、もう1つ何かがはさまっているようなところがある。母親と子どもって、身を2つに分けたというか、細胞レベルで一緒っていうイメージがある。それに対し父親は、遺伝子はつながっているけど、肉体的というより、むしろ観念的な役割なんだ、と。この映画の中の昭彦(國村演じる父親)と聡史(塚本演じる息子)は、父子であると同時に、人として似ている点も多い。それだけに、余計に息子は反発するのかなって、そんな感じでとらえていました。
     
  • ──自分の将来をどうするかという、決断の映画であると思いますが、役者になっていなかったら、何になっていたと思いますか?
  • 塚本:役者の世界に入る前はサッカーをやっていたので、サッカー選手を志していたんじゃないかと。ただ、漠然とした夢だったので、なっているかはわからないですが。
     
  • 國村:僕はこの世界に入る前はエンジニア志望だったので、今でも金属が大好きで、人からは金属フェチと言われています(笑)。クルマが好きなんですよね、エンジンといわれるパーツが。あの金属の固まりが。
     
  • ──今でもいじったりするのでしょうか?
  • 國村:手が油まみれになるのがイヤなので、触りはしないんですけど(笑)。ただメカニカルな部分がね、ピストンがあって、シリンダーの中で一生懸命動いている、それが動力になっていく様って健気じゃないですか。ほとんどセクシーでさえあるな、と。
     
  • ──この映画には、タイムスリップ的な要素が出てきます。ファンタジーの要素とリアルな要素の両方が要求される作品だと思いますが。
  • 塚本:監督ともずっと話していたんですけど、そこを描き過ぎないようにしようと。あくまでも、この映画が一番伝えたいのはオヤジと息子の微妙な距離感であり、最後に息子から歩み寄ることで、お互いに家族になれるというところ。それを伝える映画的要素の1つが、32年前のオヤジに会って、当時のオヤジが何を考えていたかを知ること。そのための1つのツールに過ぎないと思うんですよね。
     
  • 國村:その通りだと思います。もともと、すごくシンプルなお話ですからね。父と子の確執がありながらも、最後にはお互いに理解し合うという。そこに至るまでのドラマの1つの要素として登場するのがファンタジーであり、それによって物語が、いい形でフワッと膨らんでくる。それは映画にとって大事なところだけど、ファンタジー部分を拡大し過ぎちゃうと、伝えたい趣旨が逆転しちゃう。監督は、そのバランスをうまくとったなと思いますよね。そこがうまく描かれたからこそ、1970年代と現代という2つの時代があわさり、エンタテインメントとしての魅力を発揮できたのじゃないかと、そう思っています。

    (08/10/29)

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『イエスタデイズ』

 

『イエスタデイズ』

『イエスタデイズ』

 

『イエスタデイズ』
 

 

 

『イエスタデイズ』

『イエスタデイズ』

2008年11月1日よりシネマート新宿ほかにて公開

『イエスタデイズ』