ピクサーの先行きに懸念材料?『インクレディブル・ファミリー』大ヒットも、ジョン・ラセター退社の影響は…

#インクレ ディブル・ファミリー#興行トレンド

『インクレ ディブル・ファミリー』
(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『インクレ ディブル・ファミリー』
(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ピクサーアニメーションの新作『インクレディブル・ファミリー』が快進撃を続けている。7月8日時点で興収5億400万ドルをあげ、アニメ映画歴代興収1位の『ファインディング・ドリー』(4億8600万ドル)を抜いて新記録を樹立した。

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『リメンバー・ミー』に続く大ヒットで絶好調のピクサーだが、先行きに不安なニュースが出ている。ピクサーの共同創設者であり、チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)を務めるジョン・ラセターが年末にピクサーを退社する。昨年11月、ラセターが多くの女性社員に対して不適切なハグや接触を長年にわたり行っていたことが明るみになり、自主休職に入ったが、昨今のセクハラ問題もあってか、ピクサーへの復帰は叶わなかった。ピクサーの親会社はウォルト・ディズニーであり、企業イメージを重視してセクハラ問題に対して強い態度で臨んだ面がありそうだ。ラセターの後任のCCOには『インサイド・ヘッド』のピート・ドクターが就くとみられる。

ラセターの退社で今後のピクサーはどうなるのか。結論からいえば変わらず安泰が続きそうだ。実はラセターは、彼と同じピクサーの共同創設者でCEOのエド・キャットマルと共に、後進の人材育成に努めてきた。ピクサー1作目『トイ・ストーリー』、2作目『バグズ・ライフ』、3作目『トイ・ストーリー2』はラセターが監督を務めたが、その後は監督を若手にバトンタッチ。4作目『モンスターズ・インク』ピート・ドクター、5作目『ファインディング・ニモ』アンドリュー・スタントン、6作目『Mr.インクレディブル』ブラッド・バードが務めた。

同社には「ブレイントラスト会議」があり、ラセター、ドクター、スタントン、バード、『リメンバー・ミー』のリー・アンクリッチら中心クリエイターが企画中の作品に対して定期的に意見を述べ合い、企画をより良いものにしていくシステムがある。また、監督候補者たちは短編映画で腕を磨いていく。さらに若手スタッフに対しては社内に「ピクサー大学」と呼ぶ学習カリキュアラムを設け、ベテランスタッフたちが技術ノウハウを教えている。

今後のピクサーの新作だが、19年6月公開(米国)で『トイ・ストーリー4』が控え、その後も20年3月、6月、21年6月に新作(タイトル未発表)を公開すると発表している。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。