『ブレイン・ゲーム』アフォンソ・ポイアルチ監督インタビュー

実力派スターが火花を散らすシリアルキラー・スリラーを監督

#アフォンソ・ポイアルチ

優れた俳優の共通点は、明確な視野を持って撮影に臨むこと

隠遁生活を送る元FBI捜査官。予知能力を持つ彼は、ある連続殺人事件捜査への協力を求められ容疑者を追い始めるが、殺人犯が自分を上回る能力の持ち主であることに気づいていく……。

『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスと『ロブスター』のコリン・ファレル。実力派スターが共演した『ブレイン・ゲーム』が、先週末から公開中だ。スリリングで手に汗握る本作について、“ブラジル版タランティーノ”とも賞されるアフォンソ・ポイアルチ監督に話を聞いた。

──まずは、初めて本作の脚本を読んだ時の感想からお聞かせください。

『ブレイン・ゲーム』
(C)2014 SUPERSENSORY, LLC

監督:心を奪われたよ。この作品には、構成、ストーリー、キャラクター描写の完璧なバランスがあった。知的で、サスペンスフルで、アクション満載で、ヴィジュアル的に非常に力強い。僕は脚本の映画的ポテンシャルを開拓するチャンスにとりわけ魅かれた。アンソニー・ホプキンスが演じる超能力者ジョン・クランシーの心象風景へと入りこんで、彼が目にするものを視覚化してみたいと思った。この映画は、ジョン・クランシーの物語なんだ。

──アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルをはじめ、『ウォーキング・デッド』で人気のジェフリー・ディーン・モーガン、『ジオストーム』のアビー・コーニッシュなど素晴らしいキャストが揃いました。

監督:アンソニー・ホプキンスが主演を演じることは初めから決まっていたから、魅力的な助演俳優を見つけるのは容易いことだった。
 ジェフリー・ディーン・モーガンには、LAで会って、間違いなく彼しかいないと思って決めた。キャラクターを大事にしてくれたし、満足している。
 キャサリン役は、クランシー博士(アンソニー・ホプキンス)が捜査に手を貸す理由となる大事なキャラクターだから、アンソニー・ホプキンスと一緒にホテルでオーディションをして選んだんだ。アビー・コーニッシュはキャサリンの内的葛藤を完璧に表現してくれたと思う。
 コリン・ファレルは、最後の2週間の撮影に参加した。長期間の撮影で皆疲れきっている中、現場に新しい活力を注いでくれた。撮影は短期間で厳しいものだったが、彼は本当にプロフェッショナルでセリフを一言も間違えなかったし、十分な準備が出来ていた。ステレオタイプの殺人者ではなく、自分をコントロール出来るキャラクターを持ってくれて、素晴らしかった。
 優れた俳優の共通点は、まず自身が演じるキャラクターについて事前に明確な視野を持って撮影に臨むことだと思う。トニー、コリン、アビー、ジェフリーは、皆アイデアを持ちこんで、ストーリーと映画全体に働きかけてくれた。キャラクターを発展させるために俳優とやり取りしている内に、僕が方針を変えることもあれば、相手が僕の考えに合わせることもあったよ。

『ブレイン・ゲーム』
(C)2014 SUPERSENSORY, LLC

──映像が印象的ですが、どのように構築していったのでしょうか?

監督:撮影監督のブレンダン・ガルヴィンやプロダクションデザイナーのブラッド・リッカー、視覚効果監修のランディ・グー、衣装デザイナーのデニス・ウィンゲイトらと相談して、連続殺人や超能力といったジャンル映画の典型的な外見に反するような雰囲気を作り上げた。
 この作品には、人々が期待するようなジャンル映画の雰囲気はない。主題は、犯罪ではなく、それを解決するキャラクターたちだからだ。僕は他とは異なるザラついた感触があり、美しく印象主義的なヴィジュアルを求めていた。滑らかで冷たい感触ではなく。そういった面では『セブン』と共通点が多いだろう。ストーリーも登場人物も、とても力強くエモーショナルだ。ストーリーとアクションを視覚的にブレンドすることで、そうした側面を反映し、リアリティに基づく鮮やかでエモーショナルな作品にしたかったんだ。それと、常にストーリーとアクションのバランスを考えて、キャラクターの妨げとなることがないよう配慮した。

──最後に、見どころを教えてください。

監督:僕はこの映画をリアルなものにしたかった。アンソニー・ホプキンスのクランシーのキャラクター、能力をリアルな世界として見せたかった。この映画は、新たなシリアルキラー・スリラー。強いメッセージもある。殺人はレイヤーの一枚に過ぎず、奥が深く、メッセージを探す価値があるんだ。映像的に楽しめるアクションもある。俳優陣も魅力的だ。考えさせられる映画になっているのでぜひ楽しんで欲しい。

アフォンソ・ポイアルチ
アフォンソ・ポイアルチ
Afonso Poyart

1979年ブラジル生まれ。『トゥー・ラビッツ(原題:2Coelhos )』(12年)で長編監督デビュー。本作はブラジルで大ヒットを記録し、ブラジルのアカデミー賞で最優秀フィクション賞など3部門を受賞。アメリカでは、ロサンゼルスで開催されたブラジリアン・フィルム・フェスティバルで称賛を浴び、日本では17年に公開された。タンゴ・ピクチャーズが製作する英語版リメイクも決定、製作総指揮に就任している。『ブレイン・ゲーム』はハリウッドデビュー作。その他、ブラジルの総合格闘家ジョゼ・アルドの人生を描いた『Mais Forte que o Mundo(世界よりも強く)』(Netflixにて配信)も制作。