『無頼漢 渇いた罪』チョン・ドヨン インタビュー

カンヌ映画祭の常連女優が語る愛の真実とは?

#チョン・ドヨン

愛を夢見る女性という設定に共感した

殺人犯の恋人と、犯人を追う刑事。対立する立場ながらも惹かれ合う2人を官能的に描いた『無頼漢 渇いた罪』は、韓国を代表する女優チョン・ドヨンと、ヒットドラマ『赤と黒』などで日本でも人気のキム・ナムギルが共演するハードボイルド・メロドラマだ。

『シークレット・サンシャイン』で第60回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞し、昨年の同映画祭では審査員をつとめ、国際的にも高い評価を得るドヨンに、本作について語ってもらった。

『無頼漢 渇いた罪』
10月3日よりシネマート新宿ほかにて公開
(C)2015 CJ CGV Co.,Ltd ALL RIGHTS RESERVED

──これまでカンヌに大変縁のあるドヨンさんですが、本作もカンヌ映画祭の「ある視点」部門に招待されています。逃亡犯の恋人を待ちながら場末の街で生きる女ヘギョンを圧倒的な存在感で演じていますが、この役のどこに一番魅力を感じましたか?

ドヨン:ハードボイルドな、男性が中心の映画の中でも、メロドラマ的な部分が魅力的だったと思います。

『無頼漢 渇いた罪』
(C)2015 CJ CGV Co.,Ltd ALL RIGHTS RESERVED

──-ヘギョンはとても複雑な女性です。どこの部分に共感したんでしょうか?

ドヨン:愛を夢見る女性、だというところです。

──あなたも愛を夢見ていますか?

ドヨン:イエス!

愛する人がいたとしても、愛や感情は停止しない
チョン・ドヨン

──あなた自身は、お子さんもいて、愛を手にしていますよね?

ドヨン:愛する人がいたとしても、愛や感情が停止したり、想う気持ちが途絶えるものではないと思います。

──日本でも評価の高い『八月のクリスマス』の脚本を手がけたオ・スンウクが監督をつとめています。監督としては今回15年ぶりに映画を撮りましたよね。お仕事していかがでしたか?

ドヨン:新人監督とやるよりも戸惑いましたよ、最初は(笑)。でも、もともと脚本がとてもうまい人。『無頼漢』はその監督の頭の中から出てくる文章であり、彼のイメージですから、それをもって現場で演出されるわけなので、まったく迷いもなく、なんて言えばいいかな、とてもこだわりを持って演出されていたと思います。その点で、私はとても信頼ができました。

──キム・ナムギルさんとの共演はいかがでしたか?

ドヨン:ナムギルさんが映画のなかで演じたキャラクターと違い、ご本人はすごく愉快でユーモアがあって、愛嬌もあり、とても楽しかったです。ですので、かなり暗くてつらい撮影が多かったんですが、ナムギルさんのおかげで、いつも楽しかったと思います。

チョン・ドヨン

──あなたはカンヌ映画祭で主演女優賞を受賞し、韓国ではもっとも実力派の女優だと思います。今回の現場ではキム・ナムギルさんにアドバイスをしたと聞きましたが、あなたが若い俳優に送るアドバイスとはどんなものなのでしょう?

ドヨン:私も若い俳優ですから(笑)。演技に対して、もともと自分の個性をよくわかっている人なので、アドバイスというよりもお互いの呼吸(ハーモニー)について話をしました。本人の個性もそうだし、ストーリーもとても強いので、登場人物はもう少しやわらかくてもいいんじゃないかという意見を交わしたことはあります。

──カンヌ映画祭には何度もいらしていると思いますが、今回は今までと比べて何か違いがありましたか?

ドヨン:今までよりも緊張したと思います。カンヌには4回来ましたが、今回ほど作品そのものを見てもらうことが大事だと思ったことはありません。「ある視点」部門は作品に対する基準がとても大きいセクションですから、誤解なく『無頼漢』という作品が受け入れられたかどうか、とても緊張して、心配もしました。

チョン・ドヨン
チョン・ドヨン
Jeon To-Yeon

1973年2月11日生まれ、韓国のソウル出身。 CM出演などを経て、ドラマ『われらの天国』(92年)で女優デビュー。『接続 ザ・コンタクト』(未/97年)で注目を浴び韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞と青龍映画賞の新人女優賞を受賞。高い演技力に定評があり、『シークレット・サンシャイン』(07年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。その他の出演作に『ハッピー・エンド』(99年)、『ユア・マイ・サンシャイン』(05年)、『ハウスメイド』(10年)、『マルティニークからの祈り』(13年)などがある。