『この世界の片隅に』片渕須直監督、実写映画のプロデュースにも意欲! 強制収容所描く『ジュゼップ 戦場の画家』トークイベントで

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ジュゼップ 戦場の画家
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スペイン内戦の歴史認識の違いに「驚きだった」

セザール賞長編アニメーション賞などヨーロッパの映画賞を総ナメし、「東京アニメアワードフェスティバル2021」でも絶賛されたオーレル監督の長編アニメーションデビュー作『ジュゼップ 戦場の画家』が、8月13日より公開される。8月3日、本作品の公開に先立ち、「東京アニメアワードフェスティバル2021」でも審査員を務めた片渕須直監督と、映画評論家の森直人によるトークイベントが開催された。

・スケッチとアニメーションが融合! 「実写にはない、絵が持つ力を表現」

片渕は、日大在学中から宮崎駿監督作品『名探偵ホームズ』に脚本家として参加。『魔女の宅急便』では演出補を務め、TVシリーズ 『名犬ラッシー』で監督デビューした。2016年には『この世界の片隅に』で日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞をはじめ数々の賞を受賞、19年には新たなエピソードを加えた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を公開した。

ジュゼップ 戦場の画家

まず片渕監督は、スペイン内戦という歴史的な事実についてはよく知られているものの、本作品の描く内容は自身の認識とは大きく異なっていたことに驚きの感想を寄せた。

「フランコに味方したナチス・ドイツとやがて戦うことになるフランスは、ジュゼップもいた共和国側を応援していたのだろうという意識がこれまであったが、ジュゼップ含めスペインを逃れた人々はフランスの強制収容所に入れられ、かなり差別的な待遇をとられていた。驚きだった」

一方の森も「スペイン内戦の末期、人民戦線側の人々が避難先であるはずのフランスの強制収容所に入れられた事実は、本作で初めて知った」と語る。

ジュゼップ 戦場の画家

先にリモートでオーレル監督と対談をした片渕監督は、「オーレル監督は元々、新聞に載せる政治漫画を描く人でアニメーターだから、『動かすのは専門ではない』と言っていた。だが、映画で重要なところは全部描きたくなって自分で描いたと。だから自分が描いたパートは動いてないんだと言っていた」と会場を笑いに包みながらも、この特徴的な画風について「動いていないというのはこの映画の場合、弱点になっていない」と称賛した。

劇中では、一人の老人が孫に向けて戦争の悲惨さを語り伝える形で物語が展開されていく。それを反映し、孫の視点から描いたパートと、老人の視点から描いたパートとでそれぞれ異なった画風を見せる。

この点、片渕監督は、「孫の視点で描かれたパートの画風は、まさに『タンタン』のよう」とベルギーのアニメーションと重ねた。

一方、老人視点のパートの画風については、いかにも老人の記憶らしく時間の感覚が曖昧になっていることが上手く表現されていると指摘。

「日本のアニメでは手を抜いたと思われかねない手法を大胆に使って、時の流れの不思議さが動かない絵を滲み出させている」とこの演出を評価した。

『この世界の片隅に』との史実の描き方に相違

『この世界の片隅に』で、第二次世界大戦末期の広島を舞台に市井の人々の生活を描いた片渕監督。史実を描く際に心がけていることを問われると、自身は、写真や一次資料から実際の世界の片隅を復元するように作ると回答した。

一方、オーレル監督のアプローチは異なり、“記憶”を描いていると片渕監督は分析する。その上で、“記憶”をテーマにしたアニメーションとして、クメール・ルージュの虐殺を描いた『FUNAN フナン』を挙げる。

「『FUNAN フナン』は、虐殺の時代を体験していない監督が、親世代の体験の記憶を受け継いで描き、やはり“記憶”を大切にしている。その“記憶”を薄れさせてはいけない」と、次代へ語り継ぐことの重要性を述べ、『ジュゼップ 戦場の画家』との共通性を指摘した。

・映画『FUNAN フナン』ドゥニ・ドー監督は高畑勲監督を尊敬、「日本公開は僕の夢」

また、森から実写を作ろうと思ったことはあるかと問われた片渕監督は、実写よりアニメーションの方が表現したいものを直接伝えられると言いながらも、「でも今年で、アニメーションの仕事をはじめて40年。実写映画のプロデュースなどにも挑み、映像や映画の新しい楽しみを見つけ続けていく」と力強い言葉も聞かれた。

実在した画家ジュゼップ・バルトリの生き様描く感動作

本作品の舞台は、1939年2月のスペイン内戦を逃れた大勢の難民が押し寄せた南フランス。フランス政府によって強制収容所に入れられた難民たちは、劣悪な環境のもとで飢えや病気に苦しみ、監視役のフランス人憲兵たちにより虐待が加えられていた。

ジュゼップ 戦場の画家

そんな中、粗末な小屋の壁や地面に黙々と絵を描いているジュゼップ・バルトリという画家がいた。新米の憲兵セルジュは先輩の憲兵たちの目を盗み、ジュゼップに紙と鉛筆を与え、ふたりの間にはいつしか有刺鉄線を越えた友情が芽生える。セルジュは、ジュゼップがスペイン脱出のとき離ればなれになった婚約者がいたことを知り、再会を夢見る切なる思いに触れ、彼女を探すのを手伝うが………。

ジュゼップ 戦場の画家

・その他バリエーション豊かな場面写真の数々はコチラ!

『ジュゼップ 戦場の画家』は、8月13日より公開される。