大ヒット映画がイスラム教徒への偏見を増幅? イスラム教徒俳優が投げかけた問い

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リズ・アーメッド
リズ・アーメッドのYouTubeチャンネル

イスラム教徒のキャラクターは、テロリストなどステレオタイプな描写に

今年の第93回アカデミー賞で、イスラム教徒として史上初の主演男優賞候補になったリズ・アーメッドが、映画におけるイスラム教徒の描写について「ショックを受けている」と語った。

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重度の難聴に苦しむミュージシャンを演じた『サウンド・オブ・メタル〜聞こえるということ〜』でオスカー候補になったアーメッドは、トム・ハーディ主演の『ヴェノム』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などで活躍するイギリス出身の俳優。両親はパキスタンからの移民だ。

アーメッドはツイッターに「スクリーンに登場するイスラム教徒のキャラクターがネガティブなものか、存在感のないものばかりなことにうんざりしています。映画業界は変わらなければなりません。私たちの新しい研究は、映画の中のイスラム教徒について、私たちの多くが常に感じていたことを証明しました。その代償は、憎しみと失われた命です」と投稿、13分に及ぶ意見動画のYouTubeのリンクを貼った。

アーメッドは、南カリフォルニア大学(USC)の研究チーム「アネンバーグ・インクルージョン・イニシアチブ」がフォード基金、ピラーズ・ファンドと共にメディアにおけるイスラム教徒の表現のために新しいイニシアチブをとることを支援している。

USC研究チームのリポートによると、2017年から19年にかけて、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージランドの興行成績上位200作のうち、イスラム教徒でセリフのあるキャラクターが登場する作品は10%未満であることが判明した。

ヒット作にはイスラム教徒のキャラクターはほとんど登場せず、たとえ登場したとしても、テロリストなどステレオタイプの描写になっている。女性や少女は特に目立たない存在になっていて、イスラム教徒のキャラクターのうちでも4分の1以下であり、76.4%が男性または少年だ。

アーメッドはこのリポートについて、「データは嘘をつきません」と明言。「この研究は、人気映画における問題の規模を示しており、その代償は、失われた可能性と失われた命です」とコメントした。

アーメッド自身、主演のミニシリーズ『ザ・ナイト・オブ』で17年にエミー賞主演男優賞を受賞するなど成功を収めているにもかかわらず、19年に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の宣伝活動で渡米した際、空港で厳しいセキュリティ・チェックを受けて、イベントへの出席をキャンセルせざるを得なかったことがある。飛行機に乗るたびに何度も検査され、無事搭乗して機内誌を手に取ると、自分が表紙を飾っていたこともあるという。

アーメッドは自身の製作会社 「Left Handed Films」とピラーズ・ファンド、USC研究チーム「アネンバーグ・インクルージョン・イニシアチブ」と共同で「Blueprint for Muslim Inclusion」というプロジェクトを立ち上げ、「ピラーズ・アーティスト・フェローシップ」を設け、選ばれた助成団体に2万5千ドルの無制限の資金を提供している。

この取り組みについて、アーメッドは「私は、業界にはこの問題を解決するための想像力とリソースがあることを知っています。そして、『Blueprint for Muslim Inclusion』は、変革のための実践的なロードマップを提供できるのです」「このフェローシップは、介入するための有意義な方法でもあります。イスラム教徒のアーティストやストーリーテラーへの無制限の資金提供は、大きな変化をもたらすでしょう。アメリカやイギリスのイスラム教徒のコミュニティは、経済的に最も恵まれていないものの1つですが、現時点でピラーズ・アーティスト・フェローシップのように、才能を信じて本気で投資する団体は、今のところありません。私自身、奨学金と個人の寄付なしでは、演劇学校に通うことができなかったでしょう」と語った。

このフェローシップについてアーメッドは、「私たちが才能ある人材の発掘と育成に時間とエネルギーを費やすことができるという意味で、大きな変化となります。それが長期的な変化をもたらすのです」と前向きに語っている。

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