芸術と科学の共通項についての考察が根底

3月19日は「世界睡眠デー」。眠ながら音楽を聴くという斬新なコンサート【スリープ】と、それを企画した音楽家マックス・リヒターの素顔を写し取ったドキュメンタリー映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』が、3月26日に公開。このたび、その本編映像が公開され、各界からもコメントが寄せられた。

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動画は、芸術と科学の共通点を解説するところから始まる。数学は法則の科学であり、音楽は法則の芸術だとリヒターは言う。その例として、フィボナッチ数列について話が及ぶ。花びらの枚数や貝殻のらせん模様、松ぼっくりのかさの並び、蜘蛛の巣など自然界に数多く存在する不思議な法則だ。リヒターによれば、これが作曲に利用されることも多く、実際、ドビュッシーやバルトークは、この数列を用いて曲の盛り上がりを表現したと言う。そして、「数学も芸術も、こうした自然界の現象を捉え直すためにある点で共通している」と考察の一端を示した。

続いて映し出されるのは、ピアノに向き合いひとり静かに作曲活動に勤しむリヒター。「作曲中はうまくいくか不安で、落ちていくような感覚だった」と当時を思い起こし「これほど⻑い曲は頭の中にとどめておけない、思いついた瞬間に書く」と、従来の作曲法には反したやり方で行ったことを明かす。「自分が熟知している領域の中なら、マックス・リヒターらしい曲がすぐ作れる。でも【スリープ】はそういう光から出て、暗闇を探りながら作った」と、8時間にも及ぶコンサート曲【スリープ】を製作した際の苦労を明かす。また、演奏に際して最も困難だったのは、印象的な低周波音を生楽器で表現することだったと言う。

クリエイターや音の専門家が絶賛!

この映画を見た各界の著名人がコメントを寄せている。

映画『この世界の片隅に』のすべての音楽を担当したコトリンゴは、「不思議で穏やかな夢を見ているようだった。とても贅沢な音楽会、そして睡眠のかたち。自分のベッド持参で参加してみたい!」とコメント。

坂本龍一やBjorkらとのコラボレーションで知られるアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJの真鍋大度は、「作り手として何を大事にすべきか、そして人生において何に重きを置くかを強く問いかけてくる」と推薦する。

指揮者でクラシカルDJの水野蒼生は、「こんなに心地の良い超低音を体験したのは初めての経験。あの【スリープ】の音楽を映画館で堪能できるのは、本当に贅沢な体験」と感動を口にした。

オーディオブランド・イースタンサウンドファクトリー代表の佐藤博康は、「音のすごさに驚かされました。様々な低周波をコントロールして、エネルギー感を操っているようで、心地良い低周波の海にいるようでした」と独特の低周波サウンドに魅せられた様子だ。

ポスト・クラシカルの旗手が考える、現代人のための“夢の中で聞く音楽”

リヒターは、クラシックとエレクトロニック・ミュージックを融合させるポスト・クラシカルの旗手で、映画やテレビのサントラも数多く手掛ける。『戦場でワルツを』(08年)がヨーロッパ映画賞作曲賞、『メアリーとエリザベス ふたりの女王』(18年)がハリウッド音楽メディア賞作曲賞を受賞したほか、『アド・アストラ』(19年)が2021年度開催予定の第63回グラミー賞最優秀スコア・サウンドトラック賞にノミネートされた。日本でも、SF映画『メッセージ』(17年)で使用された「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」がiTunesクラシック・チャート1位を獲得している。

本作品では、リヒターと公私にわたるパートナーで、コンサートも一緒に作り上げたマールのインタビューや、15年間彼女が撮りためていたリヒターの創作の様子を捉えたプライベート映像が映し出されるほか、彼が作曲家として成功するまでの苦難の道のりやマールとの強い絆も明らかにされる。

監督は、ボノやサム・スミスなど様々なミュージシャンとコラボレートしてきたナタリー・ジョンズ。

睡眠と芸術を題材に、人間にとって本当に必要なものは何かを考えさせてくれるコンサート【スリープ】。この作品を見てその趣旨を理解した後は、最高級の“眠り”と“目覚め”を習得できたように感じるだろう。(文:fy7d)

『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』は3月26日に全国公開される。

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