大人がマジ泣き! 今さら聞けない、120万人が感涙の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』魅力とは?

#アニメ#アニメーション#ヴァイオレット・エヴァーガーデン#テレビ#京都アニメーション

ヴァイオレット・エヴァーガーデン
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

いきなり映画だけ見ても大丈夫、
『劇場版 ヴァイエヴァ』はここを押さえて行け!

今年の秋の映画は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が席巻しているが、そんななか健闘を見せているのが『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』だ。観客動員数は120万人を突破して週末動員数は9週連続でトップ10入りし、興行収入は18億円を記録している。

・『ヴァイエヴァ』観客動員123万人突破のスマッシュヒット!

「気になる」と思いつつも、よく知らないし、“劇場版”とあるだけに何やら元ネタがありそうだし……と尻込みしている方のために『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズをざっくりと紹介しよう。ここを読んでいただければ、いきなり劇場版を見てもそれなりに楽しんでいただけるはずだ。

そもそも『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は続編であり、もとの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は2018年の冬クールに放送されたTVアニメシリーズだ。原作は暁佳奈の同名ライトノベルで、「第5回京都アニメーション大賞」の小説部門で大賞を受賞している。

特筆すべきは、京アニクオリティーの美しさ!

そう、これは京アニこと京都アニメーションの作品で、TVアニメシリーズも劇場版も京アニが制作している。京アニは京都アニメーション放火殺人事件でアニメ好きでない方も全国的に広く知られることとなったアニメ制作会社だ。

2019年7月に京アニ事件の起こったすぐ後の2019年9月には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形』というスピンオフ的な劇場版が公開され、当初公開が危ぶまれたが、無事に公開されてこちらも好評を博した。今回の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は2020年1月10日に公開を予定していたが、公開が延期されて4月24日公開となったものの、新型コロナウィルスの影響で再延期されて9月18日に公開という運びとなった。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズの魅力はまず、“京アニクオリティー”と呼ばれるほど映像のレベルの高さに定評がある京アニだけに、非常に美しい映像にあるだろう。人物もさることながら街並みや独特の世界観が作品を盛り立てる重要なポイントとなる作品だからこそ、美しい映像で魅せて京アニの真骨頂を発揮している。TVアニメシリーズの総集編などではなく完全新作となる今回の劇場版でも、その京アニクオリティーが健在であることを示したのはファンにとって感慨深いことだと思う。

TVアニメシリーズは1話完結

そして、もちろん映像だけではない。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズはストーリー性が高く、とても感動的な物語なのだ。物語の主人公はタイトルでもあるヴァイオレット・エヴァーガーデンという名の少女。彼女は幼い頃から兵士として戦い、心を育む機会が与えられず、大切な上官であるギルベルト・ブーゲンビリア少佐が残した「心から、愛している」という言葉が理解できずにいた。

壮絶な戦いで両腕を失ったヴァイオレットは自在に動く義手をつけ、郵便社で手紙を代筆する「自動手記人形」として働くこととなる。「人形」と言っても彼女を含めて生身の人間であり、物語のメインは戦争ではなくこの「自動手記人形」として働く日々が描かれる。心が未熟なヴァイオレットは感情が乏しく事務的な話し方で、トンチンカンなことを言ったりするのが、シリアスな物語に笑いを添えている。

TVアニメシリーズは基本的に1話完結形式となっていて依頼人のエピソードが綴られる。ヴァイオレットはただ手紙を代筆するだけでなく、依頼人の気持ちを汲みとりながら手紙に思いを込めていく。依頼人との交流によってヴァイオレット自身も変化し、依頼人の成長と再生が描かれ、さらにベースとしてヴァイオレット自身の成長と再生も描かれるのだ。これらのストーリーが本当にもうエモーショナルで泣かせる! ウェルメイドでこちらの感情を揺さぶってくるのだ。

純粋に本気で「泣ける」!

劇場版も「泣ける映画」と評判で、「ハンカチどころかバスタオルが必要」とまで言われているが、実際にもボロ泣きさせられてしまう。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』も泣かせるが、個人的な印象では劇場で泣いている観客は『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の方が多く、泣き方も激しいように感じた。声を我慢することができずに大人がマジ泣きする声が漏れ出ている人が何人かいたほどだ。

斜に構えると、今回の劇場版は京アニ復活の応援を込めて見に行った京アニファンの後押しによってヒットしたという見方もあるだろう。もっと斜に構えると、ヴァイオレットの存在が女性戦士萌えであるだとか、義手がフェチ的に魅力があるだとかいうこともできるかもしれない。でも、この“純粋に本気で「泣ける」”という要素が劇場版をヒットに導いたいちばんの勝因だったのだろうと思う。

ヴァイオレットはギルベルトに思いを伝えることができるのか?

ネタバレは避けるが、劇場版ではこのシリーズのフィナーレを飾るにふさわしく、ヴァイオレットとギルベルト少佐にスポットが当てられて描かれる。

「愛している」を少しは理解できるようになったヴァイオレットは静かに熱くギルベルトを思い続けているが、ギルベルトは果たして生きているのか? ヴァイオレットはギルベルトに思いを伝えることができるのか? 今回も見事なストーリーテリングだ。

また、劇場版でも手紙の代筆業のエピソードが描かれ、劇場版だけをいきなり見た方も楽しめる構成になっている。そしてある少年が依頼者なのだが、これがまたものすごく泣かせるのだ。

TVアニメシリーズで印象的なエピソードのキャラクターも顔を見せていて、ファンにとっては嬉しいところだろう。劇場版はある人物の視点で描かれていて、そう来たか!と、これまたとてもエモーショナルな要素となっていて、胸に熱い感動が押し寄せる。

映画鑑賞の前に抑えておきたいのは……

というわけで、初心者がいきなり『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見ても、きっと楽しんでもらえることと思う。

そうは言っても少しは予習しておきたいという方は、ヴァイオレットの背景がわかるTVアニメシリーズの1話目と、ファンの間で神回と言われる10話目を押さえておいてはいかがだろう。胸を揺さぶる落涙必至の作品であることがよくわかるはず。そして、劇場版を見た際に10話目をオススメしたことに感謝してもらえるのではないかと思う。ぜひともスクリーンで京アニクオリティーを改めて証明した素晴らしい映像と感動的な物語を堪能してほしい。(文:入江奈々/ライター)

INTERVIEW