毒母映画3本に見る、母と子の共依存と格差社会におけるシングルマザーの生きづらさ

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『MOTHER マザー』
(C)2020「MOTHER」製作委員会
『MOTHER マザー』
(C)2020「MOTHER」製作委員会

大森立嗣監督が長澤まさみとタッグを組んだ映画『MOTHER マザー』が公開中だ。

同作で彼女が演じるのは、男たちとゆきずりの関係をもちながら、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子。彼女は借金を繰り返し、生活保護費もすぐにギャンブルで使い果たしてしまうような自堕落な生活を送っている。息子の周平を学校に通わせることもできない。社会から孤立し、闇に墜ちていく秋子だが、息子に対しては奇妙な執着を見せる。彼女の劇中の言葉を借りるならば、子どもを「なめるようにしてずっと育ててきた」。ある種、共依存ともいうべき母子の関係性だが、それがやがてとんでもない事件を巻き起こす——。まさに女優・長澤まさみの新境地ともいうべき役柄となる。

そこで今回は、いくつかの映画を通じて描かれてきた母子の関係性について見てみたい。

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映画『MOTHER マザー』を見ると、破滅的に生きる秋子の姿に驚きながらも、一方でどんな母親であっても、子どもたちにとっては母親なのだという複雑な感情を抱いてしまう。そうした母子関係で思い起こすのが、2004年に公開された是枝裕和監督作『誰も知らない』だ。1988年に起きた実際の事件をモチーフにした同作は、都内のアパートで、母親に置き去りにされた4人の子どもたちの“漂流生活”を描き出した。

母親を演じるのは、バラエティー番組などで活躍するYOU。彼女が演じるけい子は「自分のしあわせをつかむために子どもたちを置き去りにした」母親ではあるが、それでも子どもたちと一緒にいるときは、実にあっけらかんとしていて楽しそうなのだ。その姿に母性を感じさせるだけに、その後の子どもたちに降りかかる運命がせつない。

そして2017年の映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』も忘れられない1本だ。トランスジェンダーの女性たちの暮らしを全編iPhoneを駆使してポップに描いた『タンジェリン』で世界中を驚かせたショーン・ベイカー監督が、全編35mmで撮影。社会の片隅で生きる人々に優しく寄り添いながら描き出したドラマだ。

6歳の少女ムーニーと母親のヘイリーは、サブプライムローンの金融危機のために定住する家を失い、“世界で最もマジカルな場所”といわれるフロリダ、ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテルでその日暮らしを送っていた。職もなく、家賃を捻出するために時には犯罪行為や、売春行為にも走ってしまう母親の苦労も、無邪気なムーニーは知る由もなかった。だがそんな母子の暮らしも、ある出来事をきっかけに危機を迎える——。

ヘイリーを演じるブリア・ヴィネットは、ベイカー監督がInstagramで発見し、スカウト。演技未経験ながら、印象に残る存在感を見せつけている。(文:壬生智裕/映画ライター)

『MOTHER マザー』は7月3日より全国公開

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