ボブ・ディランも太鼓判! 6曲もの使用を許可した注目映画とは?

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『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』
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【映画を聴く】『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』前編
あまりに壮大かつ濃厚! ボブ・ディラン楽曲が彩る物語

ボブ・ディランを題材とした映画は、本人が出演するコンサート・フィルムやドキュメンタリー以外にもたくさん作られている。パッと思い浮かぶだけでも、ケイト・ブランシェットやリチャード・ギアなど、年齢も性別も異なる6人の役者がディランを演じたトッド・ヘインズ監督による異色の伝記映画『アイム・ノット・ゼア』、ディランの師匠筋にあたるフォーク・シンガーのデイヴ・ヴァン・ロンクをモデルに60年代初頭のNYグリニッチ・ヴィレッジ界隈を描いたコーエン兄弟監督の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』などがあるし、ディランが本人役で役者として主演(!)したラリー・チャールズ監督の『ボブ・ディランの頭のなか』という怪作もあったりする。

コーエン兄弟『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』の音楽がスゴい!

ここで紹介する『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』は、劇中にディランが登場するわけではないものの、彼の代表作のひとつである『Time Out of Mind』がストーリーラインに欠かせない要素として組み込まれている。

2016年のテレビドラマシリーズ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』で知られるダン・フォーゲルマン監督は、映画監督としてのデビュー作である2015年の『Dearダニー 君へのうた』ではジョン・レノンを題材に取り上げている。30年以上前に飛ばした大ヒット曲を歌い続けることだけで何とか業界を生き延びている初老の歌手が、43年前に書かれたジョン・レノンからの手紙を読み、再起をかけて新曲に取り組むというもので、イギリスのシンガー・ソングライター、スティーヴ・ティルストンの身に実際に起きた出来事を基に創作された物語である。

監督作としては2作目となる本作でボブ・ディランの作品を取り上げた理由についてフォーゲルマン監督は、脚本執筆時に「Time Out of Mind」を繰り返し聴いていたことを挙げている。書き進めるうち、このアルバムの収録曲が物語に馴染み、次第に欠かせないと思うようになったという。幸運にも脚本を読んで気に入ったディラン本人から楽曲の使用許可が下り、6曲ものディランの楽曲が使用されることに。しかも6曲すべてが「Time Out of Mind」の収録曲で、スコアもそれらの楽曲にインスパイアされたもので固められている。

アメリカとスペインに住む2組の夫婦とその家族の数十年にわたる歴史を描いた本編は、2時間前後の映画サイズに収めるにはあまりに壮大かつ濃厚なので、どちらかと言えばテレビドラマに向いているのでは?と思わなくもない。しかし現実と妄想、現在と過去を自由に往来しながら登場人物たちのつながりを明らかにしていく巧妙なストーリーテリングは、脚本家としてキャリアをスタートさせたフォーゲルマン監督の真骨頂。目まぐるしく時代と場所が変わっても、劇中で言葉が英語からスペイン語に切り替わっても、そのトーン&マナーがブレることはない。

なお、主人公のひとりであるウィルを演じるオスカー・アイザックは、最近では『スター・ウォーズ』シリーズへの出演でよく知られているが、初主演となったのは先述の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』。この作品では、プロ顔負けの歌とギターを披露しており、未見の方は併せてチェックいただきたい(後編へ続く)。

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