「曲は書けるけど詞が書けない」エルトン、“異色の友情”描くミュージカル

#ロケットマン#映画を聴く#エルトン・ジョン#バーニー・トーピン

『ロケットマン』
8月23日より公開
(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

【映画を聴く】『ロケットマン』前編
わずか10分で生まれた名曲

『ロケットマン』は、エルトン・ジョンと彼の楽曲制作のパートナーであるバーニー・トーピンの「友情」を主軸としたミュージカル映画である。今年でデビュー50周年を迎えるエルトン・ジョンは、いまさら説明する必要のないヒットメーカーでありスーパースターだが、自分でほとんど歌詞を書かないという事実は意外なほど知られていない。

孤独な少年が唯一無二の存在になっていく姿がドラマティック!

「Your Song(僕の歌は君の歌)」も「Crocodile Rock」も「Goodbye Yellow Brick Road」も「Candle in the Wind(キャンドル・イン・ザ・ウインド〜ダイアナ元英皇太子妃に捧ぐ)」も、すべてはバーニーの書いた歌詞にエルトンがピアノでメロディをつけて完成させたものだ。自分で歌詞を書かない歌手/作曲家自体は特に珍しくないが、半世紀にわたってほぼ専属という形で同じ作詞家と組み続けている人となると、エルトン以外にはそう思いつかない。

冒頭に「友情」とカギ括弧つきで書いたのは、2人の関係性が普通の意味の友情とはあまりにも異なるからだ。バイセクシャルのエルトンと、ヘテロセクシャルのバーニー。17歳のバーニーの詞を書く才能に惚れ込んだ20歳のエルトンは、ほどなくバーニーに恋愛感情を抱くようになる。しかしエルトンの気持ちに男性として応えることができないバーニーは、作詞家として自身の思いエルトンに伝えようとする。

バーニーから歌詞を受け取ったエルトンが、起き抜けにピアノの前に座ってわずか10分でメロディをつけたと言われる「Your Song」は、そんな2人の関係性をストレートかつロマンティックに綴った一曲だ。<僕は君のために歌を贈るよ/みんなに君の歌だと言っていいよ>という一節は、バーニーからエルトンに向けられたメッセージであると同時に、エルトンからバーニーへ、さらにはエルトンとバーニーから聴き手に向けられたメッセージとしても解釈することができる。

「曲は書けるけど詞が書けない」エルトンが、『NME』誌のミュージシャン募集欄に載ったリバティ・レコーズの告知に応募し、そこで「詞は書けるけど曲が書けない」バーニーを紹介されたのが1967年。劇中でも描かれているように、70年代にはお互いから距離を置き、それぞれ他者とのコラボレーションを経験した時期もあったものの、現在に至るまで<作詞:バーニー・トーピン/作曲:エルトン・ジョン>という分業スタイルを変えることなく両者のパートナーシップは続いている(後編へ続く…)。

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