カセットテープを見たことのない子どもたちとのやりとりが、音楽好きの心に残った!

#サントラ#映画を聴く

『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』
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音楽面から映画をチェックするコラム「映画を聴く」。毎週、多彩な映画レビューを掲載していますが、オススメしたい映画が多すぎてお伝えしきれないことも。そんな「取りこぼしてしまった」作品群から、「やっぱりオススメしたい!」という公開中の秀作をピックアップしてみました。

【映画を聴く・番外編】3月のオススメ映画/前編

●『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』(3月4日公開)

世界で最も有名なチェリストのひとり、ヨーヨー・マのドキュメンタリー。古代の貿易ルートがつなぐアジア、アフリカ、ヨーロッパから総勢50名以上の演奏家を招いた彼の“シルクロード・アンサンブル”での活動を中心に描いている。現代の“We Are The World”というキャッチコピーが付けられているが、フィールドワークをもとにボーダレスな無国籍音楽を創造しようとするヨーヨー・マの姿は、アルバム『NEO GEO』や『Beauty』を作っていた時期の坂本龍一を思わせるところもある。モーガン・ネヴィル監督は、『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』で2014年のアカデミー賞&グラミー賞を受賞した音楽ドキュメンタリーの達人だけに、本作でもていねいな仕事ぶりで音楽ファンのツボを刺激する。

『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』心ない言葉もポジティブなものに変えるパワーがそこにある!

●『しゃぼん玉』(3月4日公開)

乃南アサの同名小説を、劇場映画初監督の東伸児が映画化。宮崎県東臼杵郡の椎葉村を舞台とすることから、宮崎にゆかりのある秦基博が主題歌を担当することになったという(同県日南市生まれ)。本作の主題歌「アイ」は2010年にリリースされたシングルの“弾き語りVersion”で、本作を見た秦本人の提案で起用。『STAND BY ME ドラえもん』『言の葉の庭』『あん』『聖の青春』『天空の蜂』など、数々の話題作で主題歌を担当してきたことからも分かるように、秦基博のクセのない歌声は映像にさり気なく寄り添い、それでいて強い印象を見る者に与える。

●『わたしは、ダニエル・ブレイク』(3月18日公開)

イギリスの名匠、ケン・ローチ監督が前作『ジミー、野を駆ける伝説』での引退宣言を撤回して作り上げたヒューマン・ドラマ。病気で働くことを止められた59歳のダニエルと、2人の子どもを持つシングルマザーのケイティの交感を描く。「これは何?」とカセットテープを差し出す子どもに「音楽を聴くものだよ」とラジカセで音楽を聴かせてみせるダニエルの表情が記憶に残る。社会的底辺に追いやられた人々の現実と、かすかな希望を迷いのない筆致で描き切った、ローチ監督のキャリア総仕上げ的な感動作だ。

後編「ベタとマニアックのメリハリが素晴らしい! 選曲センスが絶妙で大ヒットも納得の『SING』」に続く…

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