アカデミー賞、ミシェル・ヨーがアジア系初の主演賞受賞者に！『エブエブ』作品賞ほか7冠の快挙

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ミシェル・ヨー「私のような姿をしている少年、少女たち、夢は叶います」

第95回アカデミー賞が12日（現地時間）、ハリウッドのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』（以下『エブエブ』）が作品賞ほか最多7部門を受賞した。

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最多10部門11ノミネートの同作はほかに監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞、編集賞を受賞した。

ミシェル・ヨーはアジア系を自認している俳優で初めての主演女優賞受賞者となった。候補者の名前が読み上げられる時点で大喝采を受けていたヨーは会場からの歓声と拍手に包まれながら、まずは自席で共演者たちと抱き合って喜びを分かち合ってからステージに上がった。

「私のような姿をしている少年、少女たち、夢は叶います」とトロフィーを手に「これが希望の狼煙です」と語りかけると、さらに「私のママ、世界中のすべてのママたちにこの賞を捧げます。彼女たちがスーパーヒーローですから。彼女たちなしでは私たちは誰もこの場にはいないのです」と語り、母国マレーシアでTV中継を見ている母に向かって「この賞を持って帰るからね」と呼びかけ、『エブエブ』関係者やこれまでサポートしてくれた人々、家族に感謝し、「アカデミー、ありがとうございます。歴史が作られました」と締め括った。

コインランドリー経営と税金問題に追われ、老父の介護や娘との確執など悩み多き中年女性が突然マルチバースに放り込まれ、全宇宙を救うために強大な悪と戦うという奇想天外な『エブエブ』はオスカー・レースの前哨戦をほぼ総なめで、映画俳優組合（SAG）賞、製作者組合（PGA）賞、監督組合（DGA）賞、脚本家組合（WGA）賞などを受賞し、2022年度の賞シーズンを締めくくるアカデミー賞も予想通りの受賞となった。

今年の俳優賞は男優賞と女優賞を同時発表する形式が取られ、主演賞は昨年の主演女優賞受賞者のジェシカ・チャステインと、昨年の授賞式の平手打ち事件でアカデミーを除名された受賞者のウィル・スミスの代わりにハル・ベリーがプレゼンターを務めた。

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主演男優賞は『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが受賞

主演男優賞を受賞した『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーは、作品賞ノミネートなしでの受賞となり、これは第82回のジェフ・ブリッジス（『クレイジー・ハート』）以来の快挙だ。

『ハムナプトラ』シリーズなどで活躍しながら、しばらくハリウッドから遠ざかっていたフレイザーは「マルチバースって、こんな感じなのかな」と言いながら、「30年前に仕事を始めて、物事は簡単には進まなかったですが、当時の私が感謝すらしなかったものがあったのです」と若かりし日を自省し、「ただただ感謝したいです」と今の心境を語った。

ダーレン・アロノフスキー監督をはじめ、『ザ・ホエール』の関係者への感謝を述べ、「そしてこれを言いたい、ホン・チャウの才能の深さがなければ、クジラは泳げないということを」と、助演女優賞候補にもなった共演のホン・チャウを称えた。

助演俳優賞は女優賞と男優賞を受賞したのは『エブエブ』のキャスト。男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンの名前を読み上げるプレゼンターのアリアナ・デ・ボースが感極まって涙ぐむほど、誰もが望んだ結果に会場でスタンディング・オベーションが起きた。

少年だったクァンを自作に抜擢して最初に活躍の場を作ったスティーヴン・スピルバーグ監督も優しい笑顔で見守る中、喜びのあまり泣き崩れそうになるのを必死に抑えながら、クァンは自宅でTV中継を見ている84歳になる母に「ママ、オスカーを獲ったよ」と語りかけた。

ベトナムから難民キャンプを経てアメリカにたどり着き、ここまで来た半生を振り返り、「こんなストーリーは映画の中だけとよく言いますが」、「これこそがアメリカン・ドリームです」と語り、『エブエブ』の関係者や子役時代に出演した『グーニーズ』の共演者で現在彼のエージェントを務めるジェフ・コーエン、公私に渡って彼をサポートした最愛の妻エコーに感謝を述べ、夢を信じる大切さを語った。

続いて受賞したジェイミー・リー・カーティスは「私は１人でここに立っているように見えますが、違うんです。私は何百人もの人間なのです。私たちが受賞したのよ」とスピーチ。『エブエブ』の関係者たちに向けて、さらに長年彼女を応援してきたファンたちに対しても「私たち、みんなが、一緒に、オスカーを獲りました」と一言一言を噛み締めるように呼びかけた。さらに「私の母と父も、これまでアカデミー賞に異なる部門でノミネートされました」と亡き両親のジャネット・リー、トニー・カーティスに向かって「今日、私はオスカーを受賞しました」と涙ながらに語った。

ハッピーな空気に包まれた授賞式、レディー・ガガのサプライズ登場も

国際長編映画のほか、『エブエブ』に次ぐ4部門受賞となったのはNetflixの『西部戦線異状なし』。そして主演男優賞とメイクアップ＆ヘアスタイリング賞受賞の『ザ・ホエール』が２冠で続いた。

『西部戦線異状なし』

事前に授賞式でパフォーマンスはしないと発表したレディー・ガガはサプライズ登場し、歌曲賞候補作「Hold My Hand」（『トップガンマーヴェリック』）を歌った。現在映画の撮影中で満足なパフォーマンスが出来ないかもしれないという理由で一度は辞退した彼女は、黒のTシャツにダメージデニムという、まるでリハーサル時のようなシンプルないでたちで熱唱した。

歌曲賞の受賞はインド映画『RRR』の「Naatu Naatu」。インド映画として初受賞となった作曲家のM・M・キーラヴァーニは、聞いて育ったというカーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」のメロディに乗せたスピーチに拍手喝采が起きた。

今年は温かい空気に包まれた授賞式で、短編実写映画賞を受賞した『An Irish Goodbye（原題）』の出演者、ジェームズが誕生日ということをスピーチで監督が明かし、会場全体で「ハッピー・バースデー」を歌って祝う場面も。大きなハプニングもなくスムーズに進み、『エブエブ』の歴史的快挙でハッピーな空気に包まれて幕を下ろした。（文：冨永由紀／映画ライター）

主な受賞結果は以下の通り。

なお、第95回アカデミー賞授賞式＜字幕版＞が3月13日よる10:00よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドで放送、配信される。

作品賞
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

監督賞
ダニエルズ・クワン、ダニエル・シャイナート（『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』）

主演女優賞
ミシェル・ヨー（『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』）

主演男優賞
ブレンダン・フレイザー（『ザ・ホエール』）

助演女優賞
ジェイミー・リー・カーティス（『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』）

助演男優賞
キー・ホイ・クァン（『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』）

国際長編映画賞
『西部戦線異状なし』

脚本賞
ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート（『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』）

脚色賞
サラ・ポーリー（『ウーマン・トーキング私たちの選択』）

撮影賞
ジェームス・フレンド（『西部戦線異状なし』）