自殺率が異常に高い理由とは? 無差別暴力が広がるなか、教育で何ができるのかを問いかける

#デクラン・マッグラ#ドキュメンタリー#ナーサ・ニ・キアナン#ベルファスト#ぼくたちの哲学教室#映画

『ぼくたちの哲学教室』
(C)Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin dʼoeil films, Zadig Productions,MMXXI
『ぼくたちの哲学教室』
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『ぼくたちの哲学教室』

北アイルランド・ベルファストにあるホーリークロス男子小学校で行われている哲学の授業を2年間にわたり記録したドキュメンタリー映画『Young Plato』が、『ぼくたちの哲学教室』の邦題で5月27日より全国順次公開されることが決定。公開に先駆け、ナーサ・ニ・キアナン&デクラン・マッグラ監督のコメントを紹介する。

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新たな憎しみの連鎖を生み出さないために…ケヴィン校⻑が導き出した答え

ホーリークロス男子小学校では、「哲学」が主要科目になっている。エルヴィス・プレスリーを愛し、威厳と愛嬌を兼ね備えたケヴィン校⻑は言う。「どんな意見にも価値がある」と。彼の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく。

授業に集中できない子や、喧嘩を繰り返す子には、先生たちが常に共感を示し、さりげなく対話を持ちかける。自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが、生徒たちの身を守る何よりの武器となるとケヴィン校⻑は知っている。かつて暴力で問題解決を図かってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、彼が導き出した1つの答えが哲学の授業なのだ。

『ぼくたちの哲学教室』

本作は、アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家の1人であるナーサ・ニ・キアナンと、映画の舞台となったベルファスト出身の映画編集者デクラン・マッグラ2人による共同監督作。ケヴィン校⻑と子どもたちによる微笑ましくも厳粛な対話が、ニコラ・フィリベールの『ぼくの好きな先生』を彷彿とさせ、第18回アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞の最優秀⻑編ドキュメンタリー賞など世界中映画祭で多くの賞を受賞した。

キアナン監督は、「⻄洋社会では、少年たちの無差別暴力が不穏に広がっています。異なる視点への共感を生み出すことで、コミュニティ間の偏りが減り、『他者』対する寛容さが増すかもしれません」とコメント。「今、人類が直面しているすべての課題、もし私たちが生き残る可能性があるならば、ケヴィンのマントラ『シンク、シンク、レスポンド!(考えて、考えて、答える!)』は、私にとってかなり良い最初のレッスンのように思えるのです」と作品の意義を語る。

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『ぼくたちの哲学教室』

また、マッグラ監督は「アードイン、そして北アイルランドでは、自殺率が異常に高い状態が続いていて、心理学者によるとこれはおそらく紛争を経験したことが原因だろう、と言われています」を同国の自殺率に言及。「出来上がった映画が教育の力を示し、そして紛争後の社会が過去の束縛から解放され、若い世代が古人の考えを用いて自分たちの未来を作ることができるという希望と、心温まる高揚感のあるものになればと願っています」と期待を込める。

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ナーサ・ニ・キアナン監督コメント
⻄洋社会では、少年たちの無差別暴力が不穏に広がっています。異なる視点への共感を生み出すことで、コミュニティ間の偏りが減り、「他者」に対する寛容さが増すかもしれません。フェイクニュースの時代には、クリティカルシンキングの重要性が不可欠になっています。私たちは、大勢の人々が自分たちの利益に反する行動を取るように簡単に操られること、間違った人々を権力の座に就かせるように説得されることを、目の当たりにしてきました。もし、幼い頃から哲学や批判的思考を教えることが例外ではなく、普通になれば、次の世代は人生をうまく切り抜け、より良い選択をすることができるようになるかもしれません。今、人類が直面しているすべての課題、もし私たちが生き残る可能性があるならば、ケヴィンのマントラ「シンク、シンク、レスポンド!(考えて、考えて、答える!)」は、私にとってかなり良い最初のレッスンのように思えるのです。

『ぼくたちの哲学教室』

デクラン・マッグラ監督コメント
アードイン、そして北アイルランドでは、自殺率が異常に高い状態が続いていて、心理学者によるとこれはおそらく紛争を経験したことが原因だろう、と言われています。しかし、最も驚くべき事実は、北アイルランド紛争が正式に終結した1998年の停戦宣言以降に生まれた若者の自殺が特に多いということ。科学者たちは、紛争後のトラウマが社会に悪影響を及ぼすだけでなく、そのようなトラウマが世代を超えて受け継がれる可能性があると見ています。生まれる前に両親や祖父母によって行われていた紛争の影響によって、それを直接体験していない子どもたちが、残酷なまでに苦しめられているのです。それは断ち切ることが困難な、ひどく不公平な苦しみの連鎖なのです。

出来上がった映画が教育の力を示し、そして紛争後の社会が過去の束縛から解放され、若い世代が古人の考えを用いて自分たちの未来を作ることができるという希望と、心温まる高揚感のあるものになればと願っています。

『ぼくたちの哲学教室』は5月27日より全国順次公開。

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