19歳で出産、世界を旅して恋をして才能を開花させたマリメッコのデザイナー、マイヤ・イソラ

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『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』
(C) 2021 Greenlit Productions and New Docs

伝説的デザイナーの足跡をたどる『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』

【週末シネマ】もはや「北欧スタイル」という言葉は、ここ日本ではほぼ「お洒落」と同義のように使われている気がしてならない。そんな中、北欧デザインに興味のない人達の間でもIKEAとマリメッコは抜群の知名度を誇るのではなかろうか。特にマリメッコは、一目で「それ」とわかるインパクトのあるデザインが多くの人に認知されている。中でも、赤いケシの花をモチーフとした「Unikko(ウニッコ)」はブランドの代名詞的存在だ。

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本作は、そのUnikkoをはじめ500以上ものデザインをマリメッコ社に提供した女性デザイナー、マイヤ・イソラのドキュメンタリー映画である。マイヤはヘルシンキ芸術大学在学中にマリメッコ創業者のアルミ・ラティアに認められてデザイナーのキャリアをスタートさせたが、実は彼女、大学進学以前の19歳の時に娘を出産している。本作では、旅をすることで創作へのインスピレーションを得ていたマイヤが旅先から娘や家族に送った手紙や日記をナレーション形式で紹介しながら、そこに娘の証言を交えて彼女の人生を辿っていく。

第三者目線の客観的な主観や解説ではなく本人と身内の言葉のみでマイヤ・イソラを浮き彫りにしていくので、その人物像にはかなりリアリティーがある。そして注目すべきは、アニメーションを駆使して彼女のデザインや絵画を紹介していく色鮮やかな映像の数々。何もない状態からアニメーションで線や色が描き出されて作品が完成する「動」の演出に、思わず魅入ってしまうこと必須である。

 

母であり、恋多き女性であり、真摯な芸術家だったマイヤ・イソラ

マイヤの存在はマリメッコとセットで語られることが多いので「デザイナー」という肩書きにばかり目が行くが、本作を見ると、彼女はデザインと同じかもしくはそれ以上の熱量で絵画制作に取り組んでいたことがわかる。さらに、哲学的ニュアンスを含む心情吐露や旅先での繊細な風景描写といった彼女の言葉に触れると、デザイナーというよりは「芸術家」と呼ぶにふさわしい人物像が浮かび上がってくる。

そして彼女、実に恋多き女性でもあった。作中の「自分語り」では、17歳年上の商業芸術家ゲオルグ・レアンデリン(ヨック)との結婚をはじめとする3度の結婚や離婚の他に、結婚寸前で破局した恋人の存在なども語られる。本作では、デザイナー、芸術家、母親、恋多き女性といった生の人間としてのマイヤ・イソラの生き様と、彼女の作品の素晴らしさの両方に触れることが出来る。監督はレーナ・キルぺライネン。子供の頃彼女の実家のリビングルームにはマイヤ・イソラが手掛けた自然シリーズの「Kataja」のカーテンがかかっており、そのデザインの持つ温かい雰囲気が大好きだったという。(文:羽野ハノン/ライター)

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『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』は、2023年3月3日より全国順次公開。

[訂正のお知らせ]
初掲時に下記の間違いがありましたので訂正いたしました。深くお詫びいたします。
誤)子供の頃彼の実家のリビングルームには
正)子供の頃彼女の実家のリビングルームには

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