ピエール瀧が気になる映画ファンも必見!電気グルーヴの26年を追った『DENKI GROOVE THE MOVIE?』

『DENKI GROOVE THE MOVIE? −石野卓球とピエール瀧−』
(C)『DENKI GROOVE THE MOVIE? −石野卓球とピエール瀧−』
『DENKI GROOVE THE MOVIE? −石野卓球とピエール瀧−』
(C)『DENKI GROOVE THE MOVIE? −石野卓球とピエール瀧−』

「電気グルーヴとは、果たして何者なのか?」そんなキャッチコピーが踊る『DENKI GROOVE THE MOVIE? −石野卓球とピエール瀧−』が、石野卓球の48回目の誕生日となる12月26日から公開される。90年代からのファンはもちろん、ピエール瀧の役者としての活躍や先日の『SMAP×SMAP』への出演(!)などでグループの存在を知ったという新しいファンにも楽しめる、意外なほどストレートに作られた伝記映画だ。監督は『モテキ』の大根仁。

『アナ雪』で大人気の雪だるま・オラフを演じるピエール瀧って何者?

前身バンド“人生”を解散後の1989年、大阪での初ライヴに始まり、メジャーデビュー、メンバーの加入と脱退、シングル「Shangli-la」での大ブレイクと活動休止、卓球と瀧それぞれのソロ活動期間を経ての復活、そして2014年のフジロック・グリーンステージでのパフォーマンス。それらを時系列で追いながら、間に多くの関係者のコメントが挟み込まれる。登場するのは旧メンバーの砂原良徳とCMJK、彼らの音楽や姿勢に大きな影響を受けたという山口一郎(サカナクション)、同世代としてキャリアを重ねてきた小山田圭吾(コーネリアス)やスチャダラパーの3人、「ロッキング・オン・ジャパン」総編集長の山崎洋一郎など。

これまで常に厳しい批評家として世の中のエスタブリッシュされたモノ&コトに毒を吐きまくってきた彼らだけに、自分たちの伝記映画が作られることにOKを出したこと自体、昔からのファンには意外に思えるかもしれない。しかし本作には2人の撮り下ろしコメントは一切なく、昔からの電気グルーヴのファンであり友人でもあったという大根監督自身の私情もあまり反映されていないように思える。ナレーションは字幕つきの英語で、電気グルーヴという存在を関係者全員が愛を持ちながら相対化しているような印象だ。

と言っても、本作を見て何よりもまず印象に残るのは、石野卓球とピエール瀧の仲のよさだったりする。日本に広くテクノ&クラブ・カルチャーを根づかせたグループとしての実績や、その時々のエピソードなどが分かりやすくまとめられるいっぽう、2人の間にある他人が入り込めないほどの強い結びつきも浮き彫りにされている。本編のラストに瀧の何気ないしぐさひとつで腹を抱えて笑い転げる卓球の姿が映し出されることからも、大根監督がこの映画でどこに軸足を置いたかは明らかだ。

活動再開後の2006年あたりを境に、2人は電気グルーヴとして“自分たちがやりたいこと”よりも“ファンが望むこと”を優先させるようになった観があるが、本作も彼らのそんな思いが作らせた作品と言える。世界的に支持されるDJ/トラックメーカーである石野卓球、『そして父になる』から『アナ雪』まで幅広い作品で役者としての存在感を必要とされるピエール瀧。休止期間を経て、それぞれが電気グルーヴ以外の活動で個人として成功を収めたことが、グループとしての活動を客観的に振り返るゆとりを生んだのだろう。

小沢健二の代表作にまつわるエピソードを関係者が語った『超LIFE』や、ニューロティカのイノウエアツシの生活に密着した『あっちゃん』など、最近、周囲の愛情に支えられたミュージシャンのドキュメンタリー的な映像作品が公開されているが、この映画もまさにそんな作品のひとつ。「電気グルーヴが何者なのか」は、見る人それぞれが決めればいい。(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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