いま私たちにはチャップリンが必要だ! 令和最初のチャップリン映画祭開催

令和最初のチャップリン映画祭『フォーエバー・チャップリン 〜チャールズ・チャップリン映画祭〜』より、チャップリン作品に感銘を受け続けてきた豪華著名人たちのコメントを紹介する。

・【今日は何の日】『独裁者』の今に通じるメッセージとは? タイムレスな名作を残したチャップリンの日

チャップリン映画の画像をもっと見る

今回のコメント寄稿者には、『街の灯』(31年)を原作にした歌舞伎作品「蝙蝠の安さん」で主人公を演じた松本幸四郎、『ライムライト』(52年)を舞台化した音楽劇「ライムライト」で初演・再演共に主演を務めた石丸幹二、数多くの名作に出演し、日本映画界を牽引する演技派俳優・松山ケンイチ。

さらに、多くのチャップリン作品で吹き替えを担当するだけでなく、チャップリンの無声映画に声優が生で吹き替えをするイベント・声優口演を15年以上にわたり企画している羽佐間道夫、『独裁者』(40年)で主人公の吹き替えを担当し映画史に刻まれる伝説の演説シーンを熱演した山寺宏一、そして日本チャップリン協会名誉会長も務める黒柳徹子ら豪華6名の各界のプロフェッショナルたちが名を連ねた。

■十代目・松本幸四郎(歌舞伎役者)
チャップリン生誕130年にあたる201年に『街の灯』が歌舞伎化された「蝙蝠の安さん」をチャールズ家、大野裕之様の多大なご協力により国立劇場で上演しました。僕の夢が叶った極上の幸せの時間でした。チャップリンの作品は子供の頃から楽しませていただいていますが、チャップリンの上品な愛嬌と鍛え上げられた肉体表現に笑い、驚き、そして登場人物の繊細な心の機微に感動を受け続けています。人の心を豊かにする娯楽であり芸術であり、人にとって大事な“人らしく生きる人々”が描かれている作品が上映される「チャップリン映画祭」が永遠に続くことを心から願っています。

■石丸幹二(俳優)
チャップリンは、僕の背中を押す。
強者に屈するな、頭をフル回転させて、知恵を絞れ、と。
チャップリンは、僕に優しいまなざしを教える。
弱い人たちの肩を抱き、共に歩むんだ、と。
チャップリンは、僕に音楽の在り方を示す。
これこそ人生と愛を表現する術だ、と。
僕の師匠、チャップリン。

■松山ケンイチ(俳優)
僕がチャップリンの映画を見始めたのは22、3歳の頃だったと思います。初めて観たのは『独裁者』だったと思います。

床屋の音楽に合わせて髭剃りをしている所がお気に入りで、計算し尽くされた演技に感動し、僕もあんな風に作り込んだ演技をしたいと頭をフル回転させながら現場に向かっていました。

『街の灯』『キッド』『黄金狂時代』『殺人狂時代』などを観ていくと、計算され尽くした演技は表面でしかない事に気付きました。その演技の中身の奥底には、人に対する愛と、この世界に対する敬意があるように思えました。計算し尽くした演技を目指していた僕は、チャップリンの表面しか見えていませんでした。出てくる表現の素が、チャップリンという1人の人間の純粋さや優しさなんだと考えるようになり、計算された演技の前に自分自身が社会に何を見て、人とどう過ごすかを大事にするようになりました。

人との出会いは自分の人生を変える程の力を持っていますが、映画も同じように大きな力を持っています。チャップリンの作品は僕にとって人生の教科書です。

■羽佐間道夫(声優口演を続ける代表)
私はチャップリン映画の集大成こそ「ライムライト」だと思っている!
此処では彼の至芸が全て観られる!
貧しさ、成功、恋があって、友との友情が掘り起こされ、ライムライトの中に照らし出され、
そして静かに人生のエンディングが奏でられる。
どうぞ、全てのチャップリン映画の最後に観てください。痺れますよ!!

■山寺宏一(声優)
大傑作と言われる『独裁者』で、初めてサイレントではないチャップリン作品の吹き替えを担当し、更に作品の素晴らしさとチャップリンの演技の凄まじさを痛感しました。
チャップリンにとって本作は初の本格的トーキー作品であり「声によって自分が平方な役者になってしまう」と発言したそうですが、とんでもない! その豊かな表現力、絶妙な台詞回しが圧巻で、持ち前の肉体表現と合わせ天才以外の何者でもないと改めて感じました。
特に名シーンとして有名な最後のスピーチは、役や演技を超え、チャップリン自身が世界に向けた命がけのメッセージですから、こんなに難しいシーンはありません。説得力にも力強さにも圧倒されました。頬をつたい、シャツに染みていく汗がリアル!
この映画が当時大ヒットしたという事は、人々は間違いに気づき、世界は良い方向に進むかと思いきや、80年以上経った今でも悲惨な戦争や侵略が行われています。ゼレンスキー大統領が「新たなチャップリンが必要」と言ったのも頷けます。
今こそ、今だからこそ、人類全てが観るべき感じるべき映画なのではないでしょうか。

■黒柳徹子(女優・ユニセフ親善大使・日本チャップリン協会名誉会長)
私は子どものときから、チャップリンのファンだった。父が買ってくれた小さい映写機に、チャップリンのモダンタイムスみたいな短編集の切れ切れのフィルムをかけて、毎日見ては、笑っていた。チャップリンが亡くなって45周年になるとは思わなかった。
今回、前から見たかった『サーカス』を見ることが出来た。スタントなしの全部、チャップリンがやったという綱渡りなど、特に噂に聞いていた綱渡り中に猿が何匹もチャップリンの顔のあたりにまとわりつくシーンは、笑いながら感動した。まとわりついて、尻尾をチャップリンの口のあたりにつっこむ瞬間を撮るために、完璧主義のチャップリンは、お客さんを入れて、何日間も撮り直したと聞いていたから。靴を履いての綱渡りだけでも大変なのに、それだけじゃ気に入らないチャップリンの魂がみられる。笑いながら、涙がたまる。
チャップリンは、どの映画もおすすめだけど、『サーカス』は、特におすすめします。

『フォーエバー・チャップリン 〜チャールズ・チャップリン映画祭〜』は11月3日より全国順次公開。

INTERVIEW