【映画を聴く】『舞妓はレディ』の勝因は歌姫・上白石萌音!/前編

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『舞妓はレディ』
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『舞妓はレディ』

これぞ周防正行監督の真骨頂!

今日から公開される『舞妓はレディ』は、これぞ周防正行監督の真骨頂! と言ってしまいたくなる“違う世界へ飛び込む系”のエンタメ作品だ。『ファンシイダンス』ではロックバンドのヴォーカリストが僧侶になるため禅寺へ、『シコふんじゃった。』では就職内定済みの能天気な大学生が単位取得のために相撲部へ、『Shall we ダンス?』ではごく普通の中年サラリーマンが家族や会社に内緒で社交ダンスの教室へ……といった具合に、主人公が日常とかけ離れた世界に身を投じるシチュエーションをこれまで何度も描いてきた周防監督。今回は京都の花街を舞台に、「舞妓になりたい」と老舗お茶屋の扉をたたいた少女の成長していく過程を、自身初のミュージカル映画として完成させている。 

ミュージカルなので、当然ながら音楽が重要な役割を担っているわけだが、その意味での本作のキーパーソンは3人。音楽監督の周防義和、劇中歌の作詞と担当したシンガー・ソングライターの種ともこ、そして主演の上白石萌音。この映画のミュージカルとしての完成度は、この3人によるところが少なくない。

監督の従兄弟としても知られる周防義和は、これまで公開された周防作品のほとんどのスコアを手がけている。本作ではそれに加えて劇中で使われる十数曲のミュージカルナンバーすべての作曲/編曲も担当。どの曲も“詞先”で作られており、種ともこと周防監督のやり取りで書き上げられた京都弁の歌詞にそのイントネーションを生かしたメロディを付け、その上でミュージカルらしい華やかなオーケストレーションを施している。特にオープニングとエンディングで使われるメインテーマ「舞妓はレディ」はキャッチーで心躍る名曲。脚本づくりに行き詰まっていた監督がそのデモを聴いて「これでこの映画はイケる!」と確信したというのも頷ける。

周防義和と種ともこのコンビは、周防監督の前作『終の信託』のエンディングテーマ「遠く、そして近く」(種=作詞/歌唱、周防=作曲/編曲)でも聴けるが、そこでのシリアスな曲調と今回のミュージカル曲の間にある隔たりは、そのままこのコンビの懐の深さを表している。ちなみに京都出身で京都弁のネイティブスピーカーである種ともこは、作詞以外にも歌唱指導や京都弁指導という役割でこの映画に関わっているという。…後編へ続く(文:伊藤隆剛/ライター)

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