【今日は何の日】人間の醜悪さVS甘酸っぱい青春、「日記の日」にどちらの映画を見る?

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ジャンヌ・モロー主演『小間使の日記』 DVD

6月12日は日記の日。これは、アンネ・フランクが「アンネの日記」を書き始めた日に由来するそうだ。そんな記念日にちなみ、タイトルや原作に「日記」というキーワードが含まれる映画で、テイストのかけ離れた2作品をご紹介しよう。

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「人間て嫌だよね…」、どんよりしそうな『あるメイドの密かな欲望』

まずご紹介するのは、1900年に刊行されたオクターヴ・ミルボーの小説「小間使の日記」が原作となったフランス・ベルギー合作映画『あるメイドの密かな欲望』。好奇心をくすぐるようなタイトルの邦題は「内容と合っていない」という声もあるようだが、確かにその通り。一言で言ってしまうと、内容が「重い」。かつては一般的なシステムであった「召使制度」を題材にした作品で、雇う側の金持ちの言動を通して、人間の嫌な部分をまざまざと見せつけられる。「たかが使用人」と見下した粗雑な扱い。女性の召使に対する男主人の好色さ。召使としては不愛想で生意気な、けれど若く美しいセレンティーヌの冷めた目を通して、不条理でやるせない召使たちの境遇と人間社会の醜悪さが炙り出される。

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そんな題材にもかかわらず「小間使の日記」は3度も映画化されており、いずれもその味付けは異なる。1946年にアメリカで製作された作品は、どんよりした重苦しさはなくテンポの良い快活なコメディタッチの仕上り。1964年にフランス・イタリア合作&ジャンヌ・モロー主演で製作されたバージョンでは、変態キャラが続々と登場するエグさが目立つ。3回も映画化されるということは、原作に人の心を惹きつける何かが隠されていると思わざるを得ない。

「十代あるある」を想い出してキュンとする『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日』

一方ガラリとテイストが変わり、大人たちがとっくに忘れていたはずの「あの頃の甘酸っぱさ」をたっぷりと味わわせてくれるイギリス映画『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日』をご紹介しよう。言葉選びのセンスも「ゆーうつ」の表記もダサい邦題とは裏腹に、見て絶対に損はないと太鼓判を押せる青春映画だ。

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青春真っただ中の一歩手前、恋に恋する14歳の女子ジョージアが主人公。「親がウザい」「彼氏が欲しい」「キスってどんなだろう?」「もっと鼻が小さかったらいいのに」。10代の頃誰しも体験したであろう他愛もない感情が一気にブワーっと蘇り、大人にとってはまぶしい「キラキラ」がたくさん詰まっている。「好きな男の子のあの一言には一体どんな意味があったんだろう?」と本人しか知り得ない答えを友達とああでもないこうでもないと議論するシーンなどは、その典型だ。心のタイムマシンがこんな所にあったのか! という感じで、鑑賞後は心の中にさわやかな風が吹き抜ける。(T)

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