「いまも冤罪が起こる要素は揃っている」ロマン・ポランスキー監督インタビュー

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『オフィサー・アンド・スパイ』ポランスキー監督インタビュー

歴史的冤罪事件・ドレフュス事件をロマン・ポランスキー監督で映画化した『オフィサー・アンド・スパイ』が公開中だ。このたび、ポランスキー監督のインタビューが公開された。

ポランスキー監督は、ドレフュス事件を映画化したいと思ったきっかけについて、次のように語る。

「大事件を元にした優れた映画は多くありますが、ドレフュス事件は傑出した物語性があると思います。“冤罪をかけられた男”というのは、話として魅力がありますし、反ユダヤの動きが活発化している現代にも通じる問題です。まだ若かった頃、エミール・ゾラの半生を描いたアメリカ映画でドレフュス大尉が失脚するシーンを見て、打ち震えました。その時、いつかこの忌まわしい事件を映画化すると自分に言い聞かせました」

このテーマを映画化するといったときの好意的な反応は忘れられないという。

「しかし実際にどんな事件なのか知っている人は少ないことが分かってきました。実体が知られないままに、みんなが知っていると思ってしまっている歴史上の出来事のひとつです。7年前に企画を話した時、アメリカの支援を受けるには英語での制作が必須と言われました。でも、フランスの軍人たちが揃って英語を話す姿は想像できません。リアルさを再現するためにフランス語でこの映画を作りたかったんです。それから、18年にプロデューサーからフランス語での制作を打診され、ついに撮影をスタートすることができました」

キャスティングについては次のように明かす。

「ジャン・デュジャルダンは対敵情報活動を率いるジョルジュ・ピカール役にぴったりだと思いました。ピカールにそっくりだし、年齢も同じで、素晴らしい俳優です。映画にはスターが必要で、アカデミー俳優のデュジャルダンは適任です。彼を選んだのは当然の流れで、彼は喜んで引き受けてくれました。ピカールは自分の信念に従い、軍の考えに服従するより真実を知ること選びました。ドレフュスがスパイとされたことに疑念を持ち、ピカールは軍の制止を振り切り捜査を続け、真犯人を示す証拠を見つけるのですが、核心に迫るほど、軍の過ちがもたらした問題の渦中に自分がいることをおそれるようになります」

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さらに、このような事件が現代でも起こる可能性についても言及した。

「現代のテクノロジーでは、筆跡鑑定の不備で有罪になるようなケースはありえないでしょう。昔は軍隊が無限の権力を持っていましたが、もはや神聖な存在なんてありえません。今日の私たちは軍隊を含め全てに対して批判することを許されています。しかし、別の事件が起こる可能性は十分あります。冤罪、ひどい裁判、腐敗した裁判官、そして、ソーシャルメディア。事件が起こりうる要素はすでに揃っています」

最後にこの映画の意義について次のように締めくくった。

「私にとってこの映画はスリラーです。ピカールの主観的な視点で語られている。観客は彼と共に捜査を 進めている感覚になります。また、重要な出来事やセリフの多くは、当時の記録から事実を忠実に描いています」

国家を揺るがす隠蔽スキャンダルの真相は?

本作品の舞台は、1894年フランス。ユダヤ系の陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を流したスパイ容疑で終身刑を宣告される。ところが新たに情報局長に任命されたピカール中佐は、ドレフュスの無実を示す衝撃的な証拠を発見。上官に対処を迫るが、国家的なスキャンダルを恐れ、隠蔽をもくろむ上層部に左遷を命じられてしまう。全て失ってもなおドレフュスの再審を願うピカールは、己の信念に従い、作家のゾラらに支援を求める。しかし行く手には腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いが待ち受けていた……。

『オフィサー・アンド・スパイ』は、公開中。