『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャーの側面に迫る『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』5月6日公開

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マイ・ニューヨーク・ダイアリー
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マイ・ニューヨーク・ダイアリー
フィリップ・ファラルドー監督

ハリウッドの新星マーガレット・クアリーと名優シガニー・ウィーバーがタッグを組んだ映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』。ジョアンナ・ラコフの⾃叙伝「サリンジャーと過ごした⽇々」を原作に、名作『ライ麦畑でつかまえて』で知られる孤⾼の天才作家J・D・サリンジャーを⽀えた出版エージェンシーでの知られざる実話を描く。本作を手がけたフィリップ・ファラルドー監督が語った。

・⽂芸版『プラダを着た悪魔』! 孤高の天才作家を支えた出版エージェンシーの知られざる実話

フィリップ・ファラルドー監督「原作を脚色する上で難しいことの1つは、原作の語り口をきちんと理解すること」

物語の舞台は90年代のニューヨーク。スーツケースと身一つでニューヨークにやってきたジョアンナ(マーガレット)は、老舗出版エージェンシーでアシスタントとして働き始めた彼女の⽇課は、サリンジャー宛の⼤量のファンレターに定型⽂を返信することに。しかしジョアンナは彼らの情熱にあふれた手紙に心を打たれ、さらにサリンジャー本人から電話で「作家になりたいなら毎日書くんだ」とアドバイスされて…。ジョアンナは偉⼤な作家の声を借りていくうちに、自分自身を見つめ直していく。

ジョアンナ・ラコフの「サリンジャーと過ごした日々」と出会ったきっかけについてフィリップ・監督は「書店で出会いました。ささいな表現が感動的で面白さにあふれていて、彼女の作家性に惹かれました。自分の人生で何をするのかを決めなくてはならない、しかし、自分にはたくさんの可能性があることにまだ気づいていない。そんな不確かな時期に共感を覚えました。何もかもが魅力にあふれていて、しかし、全てが手の届かないもののように思える、そんな時期です」と述懐した。

映画化にあたって、物語の構成・脚色は難しかったという。「私はラコフの『キャラクターと出会う』という言葉が気に入りました。原作を脚色する上で難しいことの1つは、原作の語り口をきちんと理解すること。文学は、たくさんの要素を含みながらも、気持ちが飛び飛びになることなく、何層ものテーマを重ねることができる。さらにダイレクトに主人公の気持ちとつながることもできます。原作から映画をつくりだすことは、何を抽出するかを選び、複合的なキャラクターを生み、内なる声を具体的な行動へと変えることです。私ははじめ、新たなシーンを加えることを躊躇いました。実体験を描いた作品なので、原作で描かれる感情や考えにもとづくべきだと思っていたから。ラコフは幾度か草稿を読む作業を共にしてくれて、フィクションの部分を気に入り、もっと膨らませるようにと助言をくれました。そこで面白いことが起こり始めました。私が映画のために書いたフィクションが、彼女の小説家としての心持ちに、より近づいていくことになったのです」

フィリップ監督は、サリンジャーのファンが彼らの大切な経験について、小説から引用し表現しているシークエンスを組み入れた意図にも言及。

「サリンジャーの小説の世界観を、無数のファンレターを通して具現化していく。これは、文学を映画へ変換する必要があった理由の1つです。ラコフ自身もそのシーンを膨らませることを勧めてくれました。サリンジャーの作品を読んだファンの経験が物語の核となり、映画を1つにまとめてくれたのです。さらに重要なことは、私自身ファンの経験に共感できたこと。私は感銘を受けた映画監督や脚本家に手紙を書いたことがありますが、彼らは私に返信をくれました。何が書かれていたかということよりも、私との対話のために時間を割いてくれたことに何より感銘を受けました」と語った。

劇中で“アートとビジネス”の側面を描くことに関してフィリップ監督は「原作は『文学とビジネス』『仕事の成功と個人の価値』『新旧の価値観』など多層なテーマにあふれています。その問いは私にとっても非常に近しいものでした。映画制作のあらゆる局面で経験していて、そこにはいつも葛藤が伴いますから。本作は文学の世界を多面的に映し、芸術の創造性とビジネスプロセスは、どちらも必要で補完的なものであると描いています」と話した。

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は5月6日より全国公開。

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