【週末シネマ番外編】クリスマスに楽しみたい厳選オススメ映画

『レ・ミゼラブル』
(C) 2012 UNIVERSAL STUDIOS

長く暑い夏が続いたかと思うと、秋を味わう間もなく、いきなり冬が到来した2012年。慌ただしく12月になだれ込み、衆議院総選挙も終わって、気づけば、もうクリスマス。まだまだ忙しい毎日が続くけれど、そんなときは映画で気分転換はいかが? 大切な人と一緒に見たい感動作、恋愛の本音に共感できるラブ・ストーリーやドキュメンタリーなど、さまざまな作品が揃っている。

『レ・ミゼラブル』
1985年の初演以来ロングランを続けるミュージカルの傑作を『英国王のスピーチ』のトム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマンをはじめ、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライドといった人気も実力も超一級のスターの共演で豪華に映画化。演技と歌を別々に収録するのではなく、実際に歌いながら演じる手法がとられていて、俳優の豊かな感情表現によって名曲の数々の臨場感も倍増する。苦境のなかで犯罪に手を染めたながらも改心し、生まれ変わった男、ジャン・バルジャンの半生を、トニー賞主演男優賞に輝くミュージカル俳優でもあるヒューが熱演。減量し、髪も短く切って薄幸の女性になりきったアン・ハサウェイの歌う「夢やぶれて」に心が揺さぶられる。アマンダ・セイフライドの輝く美貌や、サシャ・バロン・コーエンとへレナ・ボナム=カーターの悪役ぶりも見どころだが、ラッセル・クロウやエディ・レッドメインなど、意外な美声と歌唱力を披露しているのが印象的。絶望のなかで希望を求めて生きる人々の力強さが、歌の力と壮大なスケールの映像で迫ってくる。

[動画]アン・ハサウェイの熱唱が胸を打つ!『レ・ミゼラブル』予告編
                          
『恋愛だけじゃダメかしら?』
年齢や環境もさまざまな5組のカップルが直面する“妊娠・出産”=親になることを描くラブコメディ。キャメロン・ディアスやジェニファー・ロペスらが母性と向き合う女性を演じる。女性と男性、それぞれの立場から、子どもを持つことの期待と不安、妊娠期間中や育児の悩みと本音がユーモラスに描かれる。キャメロンが妊娠中も仕事優先のテレビダイエット番組の人気トレーナーを演じ、ジェニファーはフリーの女性フォトグラファー役。仕事をバリバリこなしながら、親の役目も両立させようと奮闘する女性たちを応援したくなる。男性陣に『Glee/グリー』で大ブレイクしたマシュー・モリソン、ブラジル出身のロドリゴ・サントロ、『ゴシップガール』のチェイス・クロフォードなどイケメンキャストが勢揃い。待望の赤ちゃんを授かるカップルもいれば、付き合い始めてすぐの予定外の妊娠に戸惑う2人もいて、伴侶の妊娠を通じて張り合う父と息子まで登場。そして、養子縁組という形で子どもを迎えるカップルも。清々しい気持ちにさせてくれる一作。

『ルビー・スパークス』
華々しいデビューを飾りながら、その後不振続きの小説家の青年が新しく書き始めた小説のヒロインと恋に落ちる。そんな突拍子もないシチュエーションをキュートに、ほんの少しの苦みも加えて描いたラブストーリー。スランプに苦しむ主人公・カルヴィンを『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『LOOPER/ルーパー』のポール・ダノが演じる。彼が描くヒロイン、ルビー・スパークスを演じるのは本作の脚本も手がけたゾーイ・カザン。ハリウッドの名匠エリア・カザンの孫娘だ。ある朝目覚めると、ルビーがそこにいた。自分の書いた通りに振る舞うルビーに夢中になり、彼女を愛するあまり執筆を止めるカルヴィンに対して、2人だけの世界から外へと向かっていく活発なルビー。すれ違い始める関係に危機を感じてカルヴィンは執筆を再開するが……。監督は、ダノが不機嫌なティーンエイジャーを演じて注目を浴びた『リトル・ミス・サンシャイン』(06年)のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリス。ありえない恋愛物語の結末はぜひ劇場で。

『マリー・アントワネットに別れを告げて』
フランス革命勃発から3日間のヴェルサイユ宮殿を、1人の少女の視点で描いた異色作。王妃マリー・アントワネットに小説や雑誌などを読んで聞かせる朗読係の少女・シドニーがヒロイン。美しい王妃への憧れを募らせ、恋にも似た感情を抱く少女と、彼女の気持ちを利用するように寵愛するポリニャック夫人の身代わりを言い渡す王妃。極限状態のなかで美しくも残酷な愛の駆け引きが繰り広げられる。フランス映画界の新たなミューズにして、『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『ミッドナイト・イン・パリ』などアメリカ映画でも活躍中のレア・セドゥが複雑に揺れるヒロインを熱演。王妃を演じるダイアン・クルーガー、ポリニャック夫人役のヴィルジニー・ルドワイヤンとの美の競演、実際にヴェルサイユ宮殿で撮影を敢行、普段は公開されない裏側までとらえた映像も見逃せない。

『恋のロンドン狂騒曲』
最近はバルセロナにパリ、とヨーロッパを舞台に撮り続けているウディ・アレンがロンドンを舞台に、いい歳をして新しい恋に浮き足立つ大人たちのから騒ぎを描くラブコメディ。40年連れ添ったおしどり夫婦が、突然破局。老いと死への恐怖から若作りに励む夫は家を出て、娘より若い女性に走る。1人残された妻は怪しげな占い師にすがり、そんな母を心配する娘の結婚生活も危機にあり……。偶然知り合ったやもめ男、勤め先の上司、向かいのアパートの美女。お手軽なところで相手を見つけては青い鳥を追い求めるように妄想をふくらませ、これこそ運命の相手、とのぼせあがる彼らを見ていると、いくつになっても、恋をすると人は我を忘れてしまうもの、と微笑ましくなる。だが、そこはウディ・アレン監督作。ふわふわ甘い夢を見せるだけじゃない、ちょっぴり皮肉を効かせた大団円が待っている。威厳ある名優アンソニー・ホプキンスがケバい金髪娘に振り回される老人を喜々として演じている。ナオミ・ワッツ、アントニオ・バンデラスらをはじめ、キャストの名演が楽しい。

『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』
映画の誕生から100年。映画を記録し上映する媒体がフィルムからデジタルシネマへと変換が進むなか、キアヌ・リーヴスが過渡期にある映画界の現状、そして未来について、多くの映画監督、撮影監督など映画関係者に話を聞いたドキュメンタリー。主演作『47RONIN』のセットに椅子を2つ並べて撮影監督に話を聞き、『マトリックス』のラナ&アンディ・ウォシャウスキー、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーランといった錚々たる監督たちにインタビューしていくキアヌが、同じく映画に携わる者として対話することで映画の未来を考察していく。フィルム派、デジタル派、それぞれの主張を、どちらの意見にも偏らずに提示する手法はまさに“サイド・バイ・サイド(並んで)”というタイトルを体現している。絶対にフィルムで撮りたいというノーラン監督、もうデジタルでしか撮らないと宣言するリンチ監督、さらに技術的な面からフィルム or デジタルそれぞれの功罪を説明していくスタッフたちの証言は興味深く、それを踏まえて彼らの手がけてきた作品を改めて見直してみたくなる。

『妖怪人間ベム』
人間になりたいと願いながら、異形を恐れられるがゆえに人目を忍び、それでも人間を守りながら生きる3人の妖怪人間ベム、ベラ、ベロを通して、人間の本質に迫る深い物語が展開された連続テレビドラマのその後を描く劇場版。流浪の旅を続ける3人がたどり着いた町で大手製薬会社社員の連続殺人事件が発生。ベムたちは現場に残る巨大な爪跡から、犯人の正体と犯行目的に迫っていく。人間になれる可能性が再浮上し、妖怪として人間を守る使命と人間になりたい願望の狭間で苦悩するベム、偶然知り合った少女に淡い恋心を抱くベロ、きつい言葉を吐きながらも彼らに寄り添い続けるベラ。ドラマから続投の亀梨和也、杏、鈴木福の安定した演技が、ファンタジックなストーリーにリアリティを与える。ドラマ版のレギュラーキャストも揃い、ほのぼのとしたユーモアや温かさも盛り込まれる。だが、主軸は犯人がかつて直面し、今なお引きずる悲劇から、幸せのために強いられる犠牲、誰かを愛するということの尊さ。エンターテインメントという大前提を守りつつ、大人にも子どもにも響くように伝えている。

(文:冨永由紀/映画ライター)

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