イタリアの異端児ピエル・パオロ・パゾリーニの生誕100年を記念し『テオレマ 4Kスキャン版』と『王女メディア』の2作品が34日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開される。今回、予告編と場面写真14点が公開された。

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パゾリーニの生誕100年記念 幻の2作品をデジタルリマスター上映

映画監督のみならず、作家、詩人、批評家などさまざまな顔を持ち、1975年に突如この世を去ったイタリアの異才パゾリーニ。フェデリコ・フェリーニ監督『カリビアの夜』(57年)やベルナルド・ベルトルッチ監督のデビュー作『殺し』(62年)など数多くの脚本を手掛け、1961年に『アッカトーネ』で映画監督デビュー。ローマのスラム街から神話世界まで映画作品における作風は多岐にわたり、巨匠から若き才能まで幅広い映画作家たちを魅了し、没後45年以上の時を経た今もなお影響を与え続けている。

本特集では、35日に迎えるパゾリーニの生誕100年を記念し、劇場初公開以来ほとんど上映される機会のなかった2作品をデジタルリマスター素材で上映する。

1本目は、第29回ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した『テオレマ 4Kスキャン版』。ブルジョワ一家の前に現れる謎の青年を名優テレンス・スタンプが演じ、青年に翻弄される一家の娘をアンヌ・ヴィアゼムスキー、母をシルヴァーナ・マンガーノが演じている。ヴェネチア映画祭での上映ボイコット騒動や、猥褻罪による裁判沙汰が話題を呼び大ヒットとなった問題作だ。

(C) 1985 – Mondo TV S.p.A.

2本目は、永遠のディーヴァ、マリア・カラスが主演した『王女メディア』。それまで映画のオファーを一切断り続けていたカラスが出演を承諾した唯一の映画主演作であり、劇中ではその歌を封印し、女優として、報復に燃える神話世界の王女を熱演した貴重な一作だ。アルベルト・モラヴィアの妻であり作家のエルサ・モランテが音楽監修を務め、日本の地唄や筝曲が印象的に使われる点も注目の作品である。

MEDEA (C) 1969 SND (Groupe M6). All Rights Reserved.

・その他の場面写真はコチラ!

町山智浩「パゾリーニの脂が乗りきった傑作二本立て!」

映画評論家の町山智浩より、コメントも到着。次のように紹介文を寄せた。

「謎の美青年が裕福な経営者一家の全員を男女の区別なく魅惑し…『テオレマ』はテレンス・スタンプの魅力が魔術となった奇跡の映画。夫への嫉妬のために夫との間に生まれた我が子を殺す『王女メディア』は能の『道成寺』のような情念が国境や時代を超える。パゾリーニの脂が乗りきった傑作二本立て!」

さらに、2作品を合わせた特別予告編も公開された。

『テオレマ』では、テレンス・スタンプ演じる謎の青年の妖しい魅力に翻弄され、次第に狂っていく家族の様子が巨匠エンニオ・モリコーネの音楽と共に映し出され、『王女メディア』では、トルコ・カッパドキアの岩窟群や、ピエロ・トージによる美しい衣装に身を包むマリア・カラスの姿が映し出されている。美しい風景や衣装の一部を、ぜひ本編を見る前に予告で味わってみよう。

『テオレマ 4Kスキャン版』『王女メディア』は34日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館にて2作同時ロードショー、順次全国にて公開される。

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