「信念を持って生きる人生の教科書」ジョン・カーペンター作品上映会

『ハロウィン』『遊星からの物体X』のジョン・カーペンター監督作品を特集する「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ 2022」が、来年22年1月7日から27日の3週間限定で開催されることがわかった。

・ジェイミー・リー・カーティス、「ショッキングで、怖くて、超バイオレントなトラウマ作品なので覚悟して」

1月7日からの上映スタートに先駆け、今年を締めくくる上映企画も決定!

12月31日ヒューマントラストシネマ渋谷にて、「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ 2022」で上映する『ニューヨーク 1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』4Kレストア版が一挙上映される。1つの劇場で3本一気に見られる貴重なチャンスだ。とくに『ニューヨーク 1997』を40年ぶりにスクリーンで見られる最初の機会になっている。

黒沢清や小島秀夫がオマージュ

ジョン・カーペンターといえば、クエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲス、エドガー・ライトが熱狂的なファンとして知られ、日本でも黒沢清監督のほか、「メタルギア」シリーズのゲームデザイナー・小島秀夫が自身の作品でオマージュを捧げている。 

今回のレトロスペクティブ上映決定に、各界のフリークもコメントを寄せた。

『ジョジョの奇妙な冒険』の漫画家・荒木飛呂彦は今見てもジョン・カーペンター作品は「本当に革進のSF・ホラーエンターテイメント」と評価。その世界観を「ロックだ。登場人物たちも音楽も現在へ受け継がれている世界観も」と語る。

『GANTZ』『いぬやしき』の漫画家・ 奥浩哉は「僕の漫画人生でも特別な影響を与えてくださりました」と崇める。

一方、映画監督の押井守は 「この3本より『要塞警察』が好きなんです」と複雑な心情を吐露。

俳優の柄本佑は「dear ジョン、早く新作撮りなさい!」と訴えつつ、「“録って“たんですね……映画撮らんと何枚アルバム作ってんですか」と突っ込みを入れていた。

漫画家のマキヒロチは、若者に対し「ゼイ・リブを映画館で見て欲しい。そしてこんな時代だから色んなものを疑って自分で考えていこう!」と訴える。

映画監督の三宅唱は、小さい頃父親から「ピンチの時に笑うのがアメリカ映画だ。ピンチの時は笑え」と教わったというエピソードを披露。その後、しんどい時は、あの不敵な笑みと『ニューヨーク 1997』のテーマ曲を思い出すことにしているという。

映画・音楽ジャーナリストの宇野維正は、カーペンターを通過してきた監督とそうじゃない監督は映画に対する覚悟が違うので作品を見れば一目で(一聴で)わかるという。そして、この10年、「通過してきた監督」が確実に増えていると指摘する。

映画文筆家の鷲巣義明は、永遠のヒーローは『ニューヨーク 1997』の主人公・スネークだと語る。

「反体制、反権力に生き、偽善や汚い理不尽さを忌み嫌う彼にとって、隔絶された無法世界は、スネークこそが生き抜くべき世界かもしれない。マッチョなヒーローが力で悪を押し潰していた時代に、 自分の信念をもって生きる彼の虜になった。彼の最大の武器は、この信念にある。途轍もなく遠い存在だが、遥か後ろから彼を追いかけたくなる。スネークは、私にとって人生の教科書なのだ」

同様に、映画評論家の柳下毅一郎も、「あのころ、カート・ラッセルの眼帯が、ワイヤーフレームの 3DCG(風特撮)が、シンセサイザーのテーマ音楽が、首筋に埋めこまれた爆弾が、絶対にスネークにはなれないハリー・ディーン・スタントンが、くわえタバコが、映画タイトルの前につく『John Carpenter’s』の一言が、どれほど胸を騒がせてくれたか、今ではとうてい伝えられない」と作品愛を語る。

マッドマックス・コンベンション主催、マクラウド代表の白石知聖も、初めて劇場で見たカーペンター作品が『ニューヨーク 1997』だったとリアルな記憶と共に振り返る。

「主人公スネークは行きあたりばったりで、ドジで、派手な立ち回りもしませんが、立ち姿、ちょっとした仕草、セリフまわしがとにかく格好良かったのです。N.Y.刑務所の世界観、大半を占めるナイトシーンと音楽が醸し出すムードも抜群で、エンドテーマが耳に残っている中、劇場を出た時のあの多幸感たるや。最終上映だったので、もう夜9時過ぎ。劇場から駅への道のり、人通りの途絶えたアーケード商店街を、スネーク気分になって“心の中で”片足を引きずりながら駅へ向かったのでした。高校 1年でした。久々の劇場体験が叶うなら、再びそれをやっちゃうでしょうね」

カーペンター究極の金字塔3作品を4Kリマスター上映

今回のレトロスペクティヴでは、カーペンター節炸裂の3作品が初の4K レストア版で上映される。

40年ぶりにリバイバル上映『ニューヨーク 1997』(81年)

舞台は、犯罪率400%を越えたニューヨーク。政府はマンハッタン島をアメリカ最大の監獄として囚人たちを閉じ込めていた。元特殊部隊の囚人スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)が体内に埋め込まれた時限爆弾の解除と引き換えに、監獄のギャングたちの人質となった大統領を救出する。眼帯を左目に銃を右手に襲いかかる敵を次々とぶっ倒す。地下プロレスに障害物だらけのカーチェイスと、なんでもありのSFアクションの傑作だ。

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カルト的な人気を誇る SF スリラー『ゼイリブ』(88年)

監督がプロレス好きすぎて、主人公に全米人気プロレスラーのロディ・パイパーを起用。あるサングラスをかけると街はドクロ顔のエイリアンに溢れ、サブリミナル戦略で地球侵略が始まっていることを知る。サングラスのみで見分けられる敵とライフル片手に戦う。

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隠れた名作ホラーと名高い『ザ・フォッグ』 (80年)

ラジオから濃霧注意報が発令、100年前の怨みを晴らすために霧と現れた亡霊が住民を襲うホラー作品。家に侵入する際は律儀にノックをする亡霊、町を救うのは生放送で殺人霧の行方を必死に伝える灯台のラジオDJという設定だ。

(C)1979 STUDIOCANAL

・その他の場面写真はコチラ!

「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ 2022」は、来年22年1月7日から27日の3週間限定でヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺で開催される。

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