“彼女”とその家族の“ゆずれない闘い”を映し出したドキュメンタリー

出生時に割り当てられた性別は“男性”、しかし、女の子として生きたいサシャ。「わたしは女の子」──言葉少なに訴えるサシャの真っ直ぐな瞳と強い意思が、見る者の心を震わせるドキュメンタリー映画『リトル・ガール』が11月19日より、全国で公開される。

この度、主人公・サシャが、これまでの自分と家族を肯定してくれる存在にようやく出会うことで、思わず涙があふれ出すシーンを切り取った本編特別映像が公開された。

サシャは2歳を過ぎた頃から自身の“性別の違和感”を訴えてきたが、社会は彼女を“他の子ども”と同じように扱えずにいた。

やがて7歳になってもありのままに生きることができない、不自由なサシャ。家族はそんな彼女の個性を支え、周囲に受け入れさせるため、学校や周囲へ働きかけるのだが……。

同作はさまざまな社会の壁に阻まれながらも、まだ幼く自分の身を守る術を持たない彼女の幸を守るために奔走する家族とサシャの“ゆずれない闘い”を映し出した心震えるドキュメンタリー。

自身の性別違和をなかなか社会に受け入れてもらえず疲弊しきっていたサシャと家族。しかし、ある小児精神科医と出会い、これまでの全てを打ち明けることで少しずつ進んでいく。

「女性の服を着せたり、女の子と呼んでも問題はない?」母親は不安げに尋ねるが、医者ははっきりと「子どもの望みどおりにして構いません、親なら誰でもそれが正しいと思うでしょう」「あなたから女性の服を着せたわけではない。性別違和が原因です。あなたは間違っていない、あなたは親として正しい選択をしました」と告げる。

これまでの肩の荷が少しだけ降りるかのようにホッとした表情の母親。同時にサシャも、母の手を強く握りしめる。

「ママは正しいってこと?」優しく医者が語りかけると、やがてサシャは目にいっぱいの涙を溜めながら、静かに同意する。

まだ7歳の小さな子どもにも関わらず、周囲のことを気遣いながら生きてきた彼女の優しさと強さが詰まったシーンだ(https://youtu.be/rGsjCeaa6VM)。

一流ドキュメンタリストのリフシッツ監督が描いたトランスジェンダーの真実

監督を務めたのは、これまでも社会の周縁で生きる人々に光をあてた作品を撮り続け、カンヌやベルリンを始め、世界中の映画祭で高く評価されているセバスチャン・リフシッツ。トランスジェンダーのアイデンティーは肉体が成長する思春期に芽生えるのではなく、幼少期で自覚されることについて取材を始めていた過程で、サシャの母親カリーヌに出会い、この作品が生まれた。

同作は、2020年ベルリン国際映画祭で上映後、モントリオール国際ドキュメンタリー映画祭のピープルズ・チョイス賞やシカゴ国際映画祭国際ドキュメンタリーコンペティション部門シルバー・ヒューゴ賞など、世界中で様々な映画賞を受賞、また、コロナウィルス感染の影響により劇場が封鎖されたフランスでは、同年12月にTV局ARTEにて放送され、視聴者数137万5000人、その年のドキュメンタリーとしては最高視聴率(5.7%)を獲得した。

オンラインでも28万回以上の再生数を記録するなど大きな反響を呼び、ドキュメンタリストとして確かな地位を築いたリフシッツ監督の洞察に満ちた繊細なカメラは、家族の喜びの瞬間、直面する多くの課題を捉え、幼少期の“性別の揺らぎ“に対する認知と受容を喚起する貴重なドキュメンタリーとなっている。

『リトル・ガール』は11月19日より、全国で公開される。

INTERVIEW