ラミ・マレック「アカデミー賞受賞と同じぐらい特別な栄誉」

前作『007 スペクター』から実に6年ぶりでダニエル・クレイグ主演としては最後となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が10月1日に公開される。このたび、ボンドを演じるダニエルと、最凶の敵サフィンを演じるラミ・マレックによるロングインタビューが公開された。

「ああ、本当に最後だ。おそらくね。冗談だ。本作で最後だよ」と語るのは、2006年公開の『007/カジノ・ロワイヤル』 から本作品に至る5作でジェームズ・ボンドを演じたダニエルだ。

彼の俳優としてのキャリアに『007』シリーズへの出演はどんな影響を及ぼしたのだろうか?

「話すと長くなる。とてもじゃないが時間が足りないよ。あまりにも大きくて言葉にできない。人生そのものも、キャリアに関する何もかもが一変した作品だ」

最後の敵、そして最凶の悪であるサフィンを演じるラミは、完璧な頭脳と狂気をあわせ持ち、人類の破滅を狙いながら己の正義と信じて疑わない「絶対悪」ともいうべき存在。

ラミはサフィンを「底意地が悪く、悪意に満ちている。自分のしていることを極めてポジティブに捉えている。だからこそ2人は激しく対立するんだと思う」と解説。

そんなサフィンを演じるプレッシャーについて聞かれると「『ボヘミアン・ラプソディ』でのアカデミー賞受賞も尋常じゃなかったが、この役のオファーを受けた時も本当に特別な瞬間だった」と振り返る。そして、「俳優にとって夢でしかないような機会だ。一瞬思ったよ。“まだ若いけど、このあと引退するかも”ってね」と至上の喜びだったことを明かす。

互いの印象について問われると、まずラミが「僕はダニエルを前にしても気後れしないように十分準備したつもりだったけど、初めて現れた時のダニエルの武器の持ち方にやられた。そのパワーたるや、もう……」と、ホンモノのMI6工作員が目の前を歩いているかのようだったと嬉しそうに語る。

そして、「あまりのオーラに最初のセリフが出てこなかった。だって、ビビらない俳優はいない。ボンドを何年も演じたこの人物を前にしたら、俳優でなくても及び腰になるはずだよ」とラミが前のめり気味で話す。

すると、終始照れるように微笑んでいたダニエルが「気づかなかった。すばらしかったよ。(平静を装っていたというラミに)すっかり騙されたよ。ラミは真剣そのもので、プロに徹していた。想像を超えたすばらしさだった。ラミが役になり切っているおかげで、その場にいるだけで自然にリアクションできる」と返すなど、互いを讃える場面も見られた。

特別なトレーニングを積んでこなしてきたアクション

本作でボンドは、陸・海・空で激しいアクションを繰り広げるが、ダニエルは撮影について「歳をとって全てが昔より大変だよ」と笑う。

「私の出演した『007』は、1作目の『カジノロワイヤル』から膨大なアクションが特徴だ。本作品でもそれは同じ。幸運にも最高の人材が集まり、用心を重ねて計画している」

さらに、1年ほどトレーニングを重ねたことを明かすと、横からラミが「この話してもいいのかな?」と割って入った。

「1作目を始めた頃は数ヵ月で済んだそうだ。今はもう少しかかるって」

とラミが撮影中に聞いたネタを披露。

「昔は6ヵ月もあればすごくいい体に仕上がった。歳をとって期間が長くなった。でもそれだけの価値はある」と話すダニエルに、ラミは「全然変わってない」とすかさずフォローを入れていた。

究極は“愛”の物語

前作から続投しているキャストが多くいる中で、本シリーズに初参加を果たしたラミは、悪役を演じる中で、「自分では力不足だと思う時もあった」と明かす。

そんなラミに、ダニエルは「サフィンは撮影しながらみんなで作っていった。ラミは驚くほどオープンで、こちらが打てば打つほど響く。徐々に固めていった感じだ」と助け舟を出す。

するとラミは、「サフィンという役について僕なりに解釈していたけど、毎晩撮影を振り返って、情報を整理し、サフィンの人物像に落とし込んだ。幸いだったのは一人ではなかったことだ。ダニエル、監督のキャリー・ジョージ・フクナガ、製作のバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンほか、大先輩たちがついていた。だから絶対に大丈夫だと思えたし、実際にうまくいった」と、本作品を支える『007』のチームワークに支えられたことへの感謝を述べた。

最後に、観客へのメッセージを求められたダニエルは「究極的には“愛”についての物語だ。本作品は、そういう作品だ」と初めて内容に触れ、言葉少なめに締めくくった(https://youtu.be/NLc6xcKEgZk)。

ダニエル版ボンドの集大成

本作品は、00(ダブルオー)エージェントを退き、ジャマイカで静かに暮らしていたボンドが、CIAの旧友フィリックスの求めに応じて誘拐された科学者を救出する物語。シリーズ21作目『007/カジノ・ロワイヤル』(06年)から最新作に至る5作においてジェームズ・ボンドを演じたダニエルにとって最後の『007』作品となる。

最凶の悪役サフィンを演じるマレックのほか、レア・セドゥ、ラシャーナ・リンチ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、ジェフリー・ライト、レイフ・ファインズらが出演する。

監督は、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(15年)、TVシリーズ『トゥルー・ディテクティブ』のキャリー・ジョージ・フクナガ。

主題歌は、ビリー・アイリッシュ『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、グラミー賞最優秀映像作品楽曲賞を受賞した。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は10月1日に全国公開される。

INTERVIEW