アイヌの人もほとんどが知らない幻の祭祀…可愛がり育てたキタキツネを神の国へ送る「イオマンテ」とは

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「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修の中川裕が全訳・監修したドキュメンタリー『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ』が430日より全国順次公開される。今回、予告編が公開された。

・アイヌ民族の知られざる祭祀を描く『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ』4・30公開

知られざる祭祀の歌、踊り、言葉…その全容が35年ぶりによみがえる

1986年、北海道・屈斜路湖を望む美幌峠で、大正時代から75年ぶりに「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ(キタキツネの霊送り)」が行われた。アイヌの人たちもほとんどが知らない幻の祭祀だ。

狩猟⺠であるアイヌの伝統的な考えでは、動物は自らの肉や毛皮をみやげにして人間の国へやってくる。アイヌは、キタキツネをわが子のように可愛がって育てると、やがてイオマンテを行う。祈りを捧げ、歌や踊りで喜ばせ、みやげを背負わせて神の国へ送るのだ。祭祀を司るのは、明治44生まれの日川善次郎エカシ(当時75歳)。祈りの言葉を間違えれば神の怒りをかう。一言一句に魂をこめる。

映画は、1986年に撮影したものに2Kレストアを行い、歌、踊り、言葉を35年後によみがえらせた。本作品の監督である北村皆雄は「⺠俗の記録は古いほど原型が残っている。時間の奥に眠っていたアイヌの世界観を現在に引き出した」と語る。

人気漫画「ゴールデンカムイ」のアイヌ語監修者である中川裕(千葉大学名誉教授)が、日川エカシ入魂の祈りを全てアイヌ語で書き起こし、現代日本語訳をつけた。音楽はアイヌのユカラ(叙事詩)やウポポ(歌)を取り入れて活動する豊川容子+nin cup(ニンチュプ)。ボーカルの豊川が本作品の語りをつとめた。神の国と人間の国をつなぐような豊川の歌声が、心の隅ずみまで響きわたる。

予告編では、知られざる祭祀の一部を覗き見ることができる。ウポポとリムセ(踊り)で神への祈りを捧げるアイヌの人々。珍しい装飾品や伝統の衣装に身を包んだ人々が歌い踊る様子は真剣そのもので、自然への敬意が込められた祈りであることが映像からも伝わってくる。

貴重な祭祀の全容が収められたドキュメンタリー。アイヌの文化や歴史に興味があるのならぜひ、劇場で体験してみてはいかがだろう。

『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ』は430日より全国順次公開。

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