ジム・ジャームッシュらに影響を与えた唯一無二の映像作家

7時間18分の伝説的な『サタンタンゴ』(94年)、56歳という若さで映画監督からの引退を表明した最後の作品『ニーチェの馬』(11年)などで、いまなお世界中に熱狂的な支持者を生み出している巨匠タル・ベーラ監督。彼が初期に手がけた日本初公開となる3作品が、4Kデジタル・レストア版で来年22年1月29日より一挙上映される。それに先立ち『タル・ベーラ 伝説前夜』の予告編が公開された。

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公開された予告編では、『サタンタンゴ』以前の足跡をたどる上映3作品が紹介されている。

上映されるのは、脚本にクラスナホルカイ・ラースロー、音楽にヴィーグ・ミハーイが揃い”タル・ベーラ スタイル”が確立された記念碑的作品『ダムネーション/天罰』、ジョン・カサヴェテスやケン・ローチの作品を想起させるドキュメンタリー・スタイルのデビュー作『ファミリー・ネスト』、希少なカラー作品であり監督自ら「本当の人々の姿を撮りたかった」と語る『アウトサイダー』の3作品。

一見異なるようにみえる作品群だが、社会で生きる人々の姿を凝視し、それを映像にとらえる姿勢は、タル・ベーラのフィルモグラフィに一貫する共通項の萌芽を感じとることができる。ジム・ジャームッシュやアピチャッポン・ウィーラセタクンなどの映画作家に影響を与えてきたタル・ベーラ監督が、いかにして唯一無二の映画作家になったのか、ぜひこの機会に劇場で確かめてほしい。

『ダムネーション/天罰』(1988年/121分/モノクロ)

『サタンタンゴ』原作者であり、本作以降すべての作品で共同作業を行う作家クラスナホルカイ・ラースローがはじめて脚本を手がけた。さらに「秋の暦」から音楽を手がけるヴィーグ・ミハーイが本作にも携わり、”タル・ベーラ スタイル”が確立された記念碑的作品。罪に絡めとられていく人々の姿を「映画史上最も素晴らしいモノクロームショット」(Village Voice)で捉えている。

『ファミリー・ネスト』(1977年/105分/モノクロ)

わずか22歳で手がけた鮮烈な監督デビュー作。住宅難のブダペストで夫の両親と同居する若い夫婦の姿を、16ミリカメラを用いてドキュメンタリータッチで撮影した。不法占拠している労働者を追い立てる警察官の暴力を撮影して逮捕されたタル・ベーラ自身の経験を基にしている。ハンガリー批評家賞の新人監督賞、さらにマンハイム国際映画祭でグランプリを獲得した。

『アウトサイダー』(1981年/128分/カラー)

ブダペストの映画芸術アカデミーに在籍中に製作された長編2作目。社会に適合できないミュージシャンの姿を描いた、珍しいカラー作品。タル・ベーラは本作に対し、「当時のハンガリー映画に映っているのは嘘ばかりだった。本当の人々の姿を撮りたかった。これは映画に対するアンチテーゼだ」と語っている。

『ダムネーション/天罰』『ファミリー・ネスト』『アウトサイダー』は、来年22年1月29日より一挙上映。

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