『ハローグッバイ』萩原みのりインタビュー

新体操から女優に転身、目力が印象的な注目若手を直撃!

#萩原みのり

思い入れたっぷりでエゴサーチが止まらない!

2017年に入ってから現在まで4本の映画に出演している女優・萩原みのり。公開を迎える映画『ハローグッバイ』では久保田紗友とダブル主演を務め、クラスのイケているグループにいながらも「一人になりたくない」という思いから、周りに自分を合わせてしまう女子高生・はづきを演じている。

メガホンをとった菊地健雄監督とは、過去何回か仕事をしているという萩原は「初めて映画作りの裏側を知った」と積極的に作品作りに参加したという。彼女にとって「とても大きな意味のある作品になった」という本作への思い、そして自身のパーソナルな話を聞いた。

──台本を読んで、はづきという役柄についてどういう印象を持ちましたか?

萩原みのり(左)と久保田紗友(右)

萩原:はづきにも(久保田紗友演じる)葵にも自分が中高生のときに感じたことがある感情がたくさん詰まっているなって感じました。中学生のころは、はづきのように、周りに合わせて自分の意見もあまり言えない子だったんです。そして高校生になると、寂しくないわけじゃないのですが、葵のように1人でいることが苦にならなくなったんです。だからどちらのキャラクターにも共感できました。

──では、はづきという役は、自身の経験に基づいた役作りだったのですか?

萩原:そうですね。今回の撮影は、リハーサル期間に菊地監督と2人で話す時間をたくさんいただいたことによって、自分のなかにあるはづきと似た部分の引き出しを見つけることができました。

萩原みのり

──菊地監督の現場はいかがでしたか?

萩原:監督と女優という関係性は初めてだったのですが、『ルームメイト』や『64 ロクヨン』の現場でもご一緒していました。もともと知っていたので、細かなことでも相談できたし、クランクイン前に不安なことは全部つぶすことができました。感情がちゃんと動いたうえでアクションを起こしているので、作品のなかに嘘がなかったです。

──主演として臨んだ本作ですが、座長という意識はあったのでしょうか?

萩原:はづきと葵のどちらで回すかと考えたとき、葵は孤独を抱えている役柄だったから、はづきがリーダーシップをとらないといけないという思いはありました。普段は人見知りで、現場でも他の方とコミュニケーションをとるのが苦手なのですが、今回は率先して、連絡先を聞いたり、撮影が終わったあと、不安に思っていることなどを聞いたりしました。現場では常にはづきとしていられたような気がします。

──思い入れが強い作品になったようですね。

萩原:映画を作る段階をしっかり見ることができました。脚本にも意見を求めてくださったりしたので、本当に一から映画作りに参加しているような気分でした。その意味でも、すごく愛着が持てる作品になりました。

──もたいまさこさんや渡辺真起子さんとの共演はいかがでしたか?
萩原みのり

萩原:もたいさんはリハーサルのときから、私と紗友ちゃんとの距離を詰めてくださって、気さくに話しかけてくれたんです。渡辺真起子さんとは『64-ロクヨン-』でも共演させていただいていたので、現場で会ったときには「久しぶり」って声を掛けていただき、すんなり入れました。池田良さんも『恋人たち』のファンだったので、本当に素敵な方たちと一緒に現場にいられることが幸せでした。

──そんなすごい俳優さんたちのなかでの主演ですね。

萩原:もうエゴサーチが止まらないです(笑)。自分のエゴサーチも結構するのですが、この映画の評価もすごく気になってしまいます。それだけ思い入れが強い作品なんです。

──昨年の東京国際映画祭にも出品され、レッドカーペットを歩きましたね。

萩原:すごいことだとは思うのですが、当時は実感が沸いていませんでした。自分で目指して入った世界じゃなく、ふと気づいたらこの仕事をしていたという感じなので、赤いカーペットを歩いていることが不思議な感覚でした。でも、上から降りてくる人たちがすごい方たちばかりなので、ジワジワと嬉しくなってきたのを覚えています。

ポジティブに考えると、いろいろなことが開けていく
萩原みのり

──目指していた世界ではないとのことでしたが、デビューのきっかけはなんだったのですか?

萩原:私は小学生のころから新体操をやっていたんです。中学も強豪校に入って、全国大会を目指していました。入学して半年で全国大会にも出場できたのですが、すでにドクターストップがかかるほど身体の調子が悪くて、全国大会出場を区切りに新体操を諦めたんです。なにも目標がなくなってしまったとき、今のマネージャーさんにスカウトされたんです。

──最初は積極的ではなかった?

萩原:愛知県出身なのですが、女優さんの仕事なんて別世界で、東京の人しかなれないと思っていたんです。だから半信半疑というか、ずっと不思議な気持ちでした。でも徐々に作品に出演して、スクリーンに映る自分を見ているうちに、「ずっとスクリーンにいる人でありたい」って思うようになりました。

──そこからは迷いはなかったですか?

萩原:もちろん厳しいこともたくさんあるし、上京したてのころは、愛知に帰りたいと思ったこともありましたが、そういった試練も楽しみに変えられるようになっていたんです。今回悔しかったら、次の現場で素敵な芝居をして見返してやろうとか、嫌なことがあっても、その感情を芝居に活かせるな、とかポジティブに捉えるようになりました。

花束贈られ涙、涙…『ハローグッバイ』撮影中の様子
(C)2016 Sony Music Artists Inc.

──ポジティブな性格は昔からなのですか?

萩原:いえ、昔はネガティブな人間でした。新体操を断念しなくてはならないときも、すべてを新体操にささげてきたので、今までの人生は無駄だったと思ったんです。でもそんなとき、お母さんから「人生に無駄なことはない、全部活かして先に進んでいけばいい」という内容が書かれたポストカードをもらって、それを読んで「ドクターストップがかかったことも意味があるのかな」って思うようになりました。新体操を断念しなくてはならないことは、すごく嫌なことだったのですが、でもそのおかげで名古屋駅を歩いていたらスカウトされて、女優という仕事の選択肢ができた。“おかげなんだ”とポジティブに考えると、いろいろなことが開けていくのかなって思えるようになりました。

──その考えは無敵ですね。

萩原:そうですね(笑)。いろいろな経験を積んでいるので、メンタルは強いと思います。

──本作で得たことは大きいようですね。

萩原:今まではオーディションに受かった、役をいただけた、現場で必死に頑張る……で終わりだったのですが、この作品に携わったことで、映画作りのもっと深いことが知ることができました。また、今まであまり目標の女優さんというのはいなかったのですが、もたいさんのようになりたいって心から思いました。背中を見ているだけで悦子さんになっている。本当にすごいなって。何年かかるか分かりませんが、いつかそういう女優さんになれたらと思っています。

(text:磯部正和/photo:小川拓洋)

萩原みのり
萩原みのり
はぎわら・みのり

1997年3月6日生まれ。愛知県出身。2013年に連続ドラマ「放課後グルーヴ」で女優デビュー後、「表参道高校合唱部!」(15年)、映画『64 -ロクヨン-』(16年)、『何者』(16年)、『ブルーハーツが聴こえる』(17年)、『昼顔』(17年)など話題作に出演。本作封切りの翌週には『心が叫びたがってるんだ。』の公開も控えている。