『フォードVSフェラーリ』マット・デイモン×クリスチャン・ベール インタビュー

スター俳優が初共演! 絶対王者に挑んだ男たちを熱演

#クリスチャン・ベイル#マット・デイモン

僕はいつだってチャレンジを感じていたい(ベール)

1966年のル・マン24時間耐久レースで常勝チームのフェラーリに挑んだフォードの男たちの実話を映画化。フェラーリに勝つというフォード・モーター社からの依頼を受けた元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビーは、新しい車の開発と優秀なドライバーの獲得を急務としていた。シェルビーは破天荒なイギリス人レーサーのケン・マイルズをチームに招くが、一部の上層部から反発されるなど、困難が続く。それでも二人は勝利を求めてル・マンに乗り込んでいくのだった。監督は『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』『LOGAN/ローガン』のジェームズ・マンゴールド。シェルビー役にマット・デイモン、マイルズ役にクリスチャン・ベール。本作が初共演となる二人に、共演の感想や撮影について話しを聞いた。

──ハリウッドを代表するお二人の初共演ということで大きな話題になっていますが、共演されてみていかがでしたか?

デイモン:すばらしかったよ。

ベール:最悪だった。

デイモン:どうやら僕らの感想は違うようだな(笑)。

ベール:いや、最高だったよ(笑)。この映画は最初から最後まで最高だった。僕はいつだってチャレンジを感じていたい。「これは簡単だぞ」と思って入っていきたくはない。そうじゃなくて、「自分はこれにどう取り掛かればいいのか?」と思う時に、満足感が生まれるんだ。ジム(監督・製作・脚本のジェームズ・マンゴールド監督)はいつも同じ人たちを雇う。今回の人たちも『3時10分、決断のとき』とほとんど同じメンバーだから、とてもやりやすかったよ。脚本は、本当によく書かれている。ジムはこの話にどう切り込むかちゃんと分かっていた。この話を映画化しようとした人は長年の間にたくさんいたんだけど、お金がかかりすぎるからできなかった。でも、ジムはどうすればいいのかを見つけ出した。彼はシェルビーとマイルズの友情を中心に持ってきたんだ。
 これは本当に最初から最高だったんだ。僕らは同じようなものの考え方をする。我慢強くただ待たなければいけないこともあったけれど、僕は早く現場に行って、必要とされるだけのテイクをやってみせたかった。ジムもそうなんだよ。ジムも文字通り毎日この映画のために仕事をしていた。この映画にかかわった人たちはケン・マイルズみたいで、自分の仕事に心底、情熱をかけているんだ。
 この物語と製作の舞台裏には、ものすごい共通点があった。企業、お金の問題もそうだよ。お金を出してくれる人たちがいて、その人たちが何か言ってきて、でも僕らには僕らのやりたい夢があって。でも彼らなしでそれは達成できないんだよ。だから、そういった障害を、生産性のあるポジティブなこととして使うようにしないといけない。フラストレーションにしてしまってはいけないんだ。

──ベールさんはいつも徹底した役作りをされています。特に今回は『バイス』(主人公の第46代副大統領ディック・チェイニーを演じるために約20?も体重を増やした)の後に撮影されたということで、驚異的な変貌を遂げていますが、今回はどのような方法でケン・マイルズになりきったのですか?

『フォードvsフェラーリ』
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ベール:あのまま(『バイス』の時の体型)だったら太ったケンになっちゃうからね。(減量したのは)必要だからだよ。必要は発明の母。やるしかない。ほかの人が自分にそれをやってもらわないと困ると思っているというのは助けになるね。そのことが自分を引っ張ってくれる。もちろん、大変だよ。いつも、最初が一番きつい。なんでもそうだけど、そのうち慣れてくるんだ。

──デイモンさんも映画によってさまざまなトレーニングを行い、体作りや役作りを行っていると思いますが、今回は生まれて初めてパーマにも挑戦したそうですね。そういったアプローチに踏み切った理由は? また、実在の人物を演じる上で難しい部分はありましたか?

デイモン:髪にパーマをかけたのは、僕のアイデアじゃないんだ。僕はシェルビーにまったく似ていない。体型からして全然違う。彼は体が大きくてカーリーヘアなんだ。だから、(似ていないことで)観客の気を散らさないようにするにはどうしたらよいのか、僕らは考えないといけなかった。この映画は本当にストーリーがいいから、邪魔になることはあってはいけないんだよ。そんな中であの人に似ていると思わせるのにはどうすればいいか? それは主に演技を通してやるべきだけれど、髪をストレートのままにしておくのは違うかなと感じたんだよ。

殴り合いのシーンは楽しかったよ、僕らは笑いながらやったよ(デイモン)
『フォードvsフェラーリ』
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
──劇中でお二人が殴り合いのケンカをするシーンがとても無邪気な反面、固い友情が生まれた瞬間のようで印象的でした。あのシーンはどのようにして生まれたのですか?

デイモン:あれはすごく楽しかったよ。(スタントマンではなく)自分たちでやっている。僕らは笑いながらやったよ。あんな喧嘩を実生活でやることはないからね。コレオグラフィー(振り付け)を習うのも楽しかった。何日もかけて準備をしたんだよ。あの喧嘩はとってつけたシーンではなく、あれを通じてキャラクターの関係が深まっているんだ。

──本作ではお二人の共演シーンがたくさんありますが、特にお気に入りのシーンを教えてください。

ベール:やっぱり僕らの殴り合いのシーンが一番楽しかったね。あとは、(二人のシーンではないが)、ピットクルーを見るのも楽しかった。本物のピットクルーというより、俳優たちを見るのがね。彼らはできるだけ早くタイヤを交換しようとしていたけれどできなくて、でも、できているふりをしないといけなかった。自分が何かをできなくてあくせくするのは嫌だけど、他人がそれをやっているのを見るのは楽しいね(笑)。僕が車に飛び乗ろうとしたら、「まだ左側にタイヤがないんですよ!」なんて言われてさ(笑)。

──この作品のオファーを受けた時のお気持ちや見どころをお話ください。

クリスチャン・ベイル(左)とマット・デイモン(右)

ベール:僕は、カーレースのために自分の命を危険に晒そうとする男たちの話というところに魅了されたんだ。それに、大企業にどう対処していくのかというのも面白かったね。人類というのはいつも、不可能と思われることに挑戦してきた。他人が笑うようなことに挑戦してきた人たちがいるんだよ。成功したら天才と褒められるけれども、成功しなかったらバカ扱いされて終わる。その差はものすごく微妙だよね。

デイモン:これは優れたアンダードッグのストーリーだ。それに、希望に満ちた物語で、前向きな気分になれる。友情物語でもあり、夢を追う話でもあり、この作品を勧めたい理由はたくさんあるよ。

クリスチャン・ベイル
クリスチャン・ベイル
Christian Bale

1974年、イギリス・ウェールズ生まれ。13歳で『太陽の帝国』(87年)に主演。『アメリカン・サイコ』(00年)、ブルース・ウェイン/バットマンを演じた『バットマン・ビギンズ』(05年)、『ダークナイト』(08年)、『ダークナイト・ライジング』(12年)の3作、『ターミネーター4』(09年)などがある。実在のボクサーを演じた『ザ・ファイター』(10年)でアカデミー賞助演男優賞を受賞。同作や『マニシスト』(04年)などでは、大幅な減量をして病的なまでに痩せた姿で撮影に挑むなど、徹底した役作りをする俳優として知られている。

マット・デイモン
マット・デイモン
Matt Damon

1970年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン生まれ。『ミスティク・ピザ』(88年)の端役で映画デビューし、親友のベン・アフレックと共に脚本を書いて主演した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97年)でアカデミー賞主演男優賞にノミネート、同賞の脚本賞を受賞。『オーシャンズ』シリーズ(01年、04年、07年)、『ボーン・アイデンティティー』(02年)、『インビクタス/負けざる者たち』(09年)、『インフォーマント!』(09年)、『オデッセイ』(15)などのヒット作に多数出演。