『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ジョナ・ヒル インタビュー

ディカプリオとヤバすぎる人生を共にする男を大熱演

#ジョナ・ヒル

絶対にこの役は僕が演じなければ、と思った

演じた役柄とのギャップにまず驚かされる。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオが演じた主人公ジョーダン・ベルフォードの右腕として、公私ともに悪行のかぎりを尽くし、はしゃぎ倒すドニー・エイゾフを演じたジョナ・ヒル。

ディカプリオやマーティン・スコセッシ監督とともに、初来日を果たした彼はシャイと言ってもいいくらい、もの静かな青年だ。『40歳の童貞男』(05年)などコメディ映画で活躍した後、『マネーボール』(11年)でブラッド・ピットの助手役を演じ、第84回アカデミー賞助演男優賞候補となり、今回も同賞にノミネートされたばかり。30歳を迎えて、更なる飛躍を目指す彼に話を聞いた。

──『マネーボール』に続いて2度目のアカデミー賞助演男優賞にノミネート、おめでとうございます。

ヒル:ありがとう。信じられない気持ちだよ。本当にすごく光栄なことだ。

──その栄誉にふさわしい体当たりの熱演でしたね。上映時間2時間59分の間、一瞬たりともノーマルな瞬間がない。

ヒル:そうだね。かなり非常識でぶっ飛んだ話だと思うよ。しかも実話だからね。彼らは本当にあんな日々を過ごしていたわけだから。それに、いまも同じような生き方をしてもいる。個人的には残念なことだと思うね。

──あなたが演じたドニー・エイゾフは、実在の人物ではないそうですが、役作りはどのように行いましたか?

ヒル:ドニーは主人公ジョーダン・ベルフォードの周囲にいた何人かの人物をひとつにまとめたキャラクターなんだ。そこから僕はドニーが社会においてどんな人間だったかを考えていった。似たような人物に会ってみるとか、そういうアプローチよりも自分自身で考えたものを表現していった。

──ところで、今回は久々にオーディションというプロセスを経て、役を獲得したそうですね。

ヒル:そうなんだ。オーディションを受けたのは6年ぶりだったよ。自分で望んだんだ。マーティン・スコセッシとただ会って話すだけじゃなく、オーディションで僕を見てほしかった。もし、チャンスを与えられたら、どんなことができるのかを、ちゃんと見てもらいたかったんだ。

左からジョナ・ヒル、レオナルド・ディカプリオ、マーティン・スコセッシ監督

──スコセッシ監督はオーディションであなたを見て圧倒されたという話ですが、決め手は何だったのでしょう?

ヒル:それは……僕にはわからない。監督に聞いてください(笑)。ただ、とにかくミスター・スコセッシは僕がずっと大好きだった監督なんだ。

──初めて見たスコセッシ作品は何ですか?

ヒル:『グッドフェローズ』(90年)。1番好きな作品でもある。

──そういえばドニーという役は『グッドフェローズ』のジョー・ペシをどこか思わせる役回りですね。

ヒル:うれしいな。あれは僕が最高だと思う演技のひとつなんだ。オーディションの話に戻るけど、とにかくスコセッシ監督と一緒に仕事がしたかった。それで『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の脚本を読んで、原作「ウォール街狂乱日記:「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生」も読んだ。すると、ドニーというキャラクターを絶対に僕が演じなければ、という気持ちにもなった。そうした情熱がすべてだね。

スコセッシ監督の現場は“統制のとれた混沌”状態
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

──そしてドニー役に決まり、撮影が始まりました。

ヒル:僕のヒーローが監督する現場にいられる。それだけでもうすごくエキサイティングだった。とてつもなく皆が集中する現場だったから、ものすごく疲れもした。完成した映画の放つエネルギーを見ただろう? もうカオス状態だった。

──撮影中に、ツイッターで「この映画は毎日どんどんクレイジーになって、前日より良くなっていく」とつぶやいていましたね。

ヒル:そうなんだ。毎日毎日、自分たちのやってることが信じられないような気分だった。しかもそれが本当に起こったことなんだからね。

──あなたの撮影初日はどんなシーンだったのですか?

ヒル:実は編集でカットされたんだ。完成作でドニーが初めて登場するシーンがあるよね。それよりも前に登場するシーンがあったんだ。

──気に入っているシーンはありますか?

ヒル:スシのシーンだね。映画の終盤で、ジョーダンとドニーが2人でスシを食べているシーンだ。まだ見ていない人のために詳しくは説明できないけど、口に出して本音を語り合えない状況なんだ。心の中ではいろいろなことが湧き起っているのに、それを出しちゃいけない。そんな中で会話を交わすんだ。

来日記者会見のジョナ・ヒル

──先ほど、一瞬たりとも落ち着いた瞬間がない作品だと感想を述べましたが、このシーンは少し違いますね。

ヒル:実際、シリアスなシーンはたくさんあるよ。描き方はハチャメチャだけど、同時にシリアスなんだ。

──即興が多い現場だったとも聞きました。

ヒル:今話題にしたスシのシーンもそうだよ。本当はレオが『ハマチを食べなよ』というはずが、僕が先に言ったんだ。『マグロもあるよ』とアドリブも入れたりしてね。だから、レオはその後何テイクも、最終的には気持ち悪くなるほど、ハマチを食べる羽目になってしまったんだ(笑)。何て言うのかな、スコセッシ監督は現場で“オーガナイズされた混沌”というものを築くんだ。とても厳格で統制のとれた、集中できる環境を作る。その中で徹底してめちゃくちゃに演じられるようにね。

──最後に、本作のテーマでもあるお金についてどう思うかを聞かせてください。

ヒル:この作品をやった後、いろいろ考えさせられた。あり余る金とバランスをとることについて。何でも過剰になると、悪い方向に進んでしまうんだと思うようになったね。

(text=冨永由紀)

ジョナ・ヒル
ジョナ・ヒル
Jonah Hill

1983年12月20日生まれ、アメリカ、カリフォルニア州出身。脚本家志望からニューヨークのニュースクール大学で演技を学び、友人の父であるダスティン・ホフマンの勧めでオーディションを受け、2004年に『ハッカビーズ』で映画デビュー。『40歳の童貞男』(05年)、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07年)などコメディ映画で活躍。『ヒックとドラゴン』(10年)で声の出演。『マネーボール』(11年)でブラッド・ピット扮する球団GMの若き助手を演じて第84回アカデミー賞助演男優賞候補に。12年にはチャニング・テイタム共演の『21ジャンプストリート』(未/DVD)で原案と製作総指揮も兼任。『ジャンゴ 繋がれざる者』(13年)など話題作へ出演、活躍の場を広げている。

ジョナ・ヒル
ウルフ・オブ・ウォールストリート
2014年1月31日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
[監督]マーティン・スコセッシ
[出演]レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー、マーゴット・ロビー、ジャン・デュジャルダン、ロブ・ライナー
[原題]THE WOLF OF WALL STREET
[DATA]2013年/アメリカ/パラマウント

(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.