全てを委ねて信頼してくれる。『カールじいさん〜』監督が語るヒットの理由

ボブ・ピーターソン(Bob Peterson)……『カールじいさんの空飛ぶ家』共同監督。1961年生まれ。『モンスターズ・インク』ではストーリー・スーパーバイザーを担当。『ファインディング・ニモ』で共同脚本を担当し、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
ボブ・ピーターソン(Bob Peterson)……『カールじいさんの空飛ぶ家』共同監督。1961年生まれ。『モンスターズ・インク』ではストーリー・スーパーバイザーを担当。『ファインディング・ニモ』で共同脚本を担当し、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
ボブ・ピーターソン(Bob Peterson)……『カールじいさんの空飛ぶ家』共同監督。1961年生まれ。『モンスターズ・インク』ではストーリー・スーパーバイザーを担当。『ファインディング・ニモ』で共同脚本を担当し、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
『カールじいさんの空飛ぶ家』 (C) WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS.        
ALL RIGHTS RESERVED.
陽気でほがらかな人柄が印象深い共同監督
製作中の様子。右端がボブ・ピーターソン。その隣はピート・ドクター監督
声優として声を吹き込む共同監督

無声映画のような映像で綴られていく、亡き妻との思い出──幼い頃の出会い、お転婆娘だった彼女と2人で夢見た大冒険、若き日の楽しい結婚生活。そして仲良く歳をとり、いつしか、自分を引っぱり続けてくれた妻が、もはや自力では坂道を上がることすらままならなくなってしまい……。アニメーション映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭で映し出される約10分は、映画史に残る美しい映像詩と言えるだろう。

今夏、全米で大ヒットを記録したこの作品は、『トイ・ストーリー』シリーズや『ファインディング・ニモ』などで知られるピクサーの最新作。主人公は、78歳のカールじいさん。孤独を愛する、独り暮らしの頑固者が、亡き妻との思い出が詰まった家を立ち退かされそうになるところから物語が始まる。そしてカールじいさんは、膨大な数の風船をつけて家を舞い上がらせ、妻と約束しながらも果たせなかった大冒険へと旅立つのだ。

まさに大人のためのアニメーションと言っても過言ではないこの作品を作り上げた、共同監督のボブ・ピーターソンに話を聞いた。

[動画]『カールじいさんの空飛ぶ家』来日記者会見

──この作品は、2009年のカンヌ国際映画祭で、アニメ映画としては初となるオープニング作品に選ばれました。また全米では大ヒットを記録し、各方面で高く評価されているわけですが、その理由は何だと思いますか?
ピーターソン:今はメディアの種類も多く、情報が氾濫していて、生活のペースも非常に早くなっています。そんななかで、みんなが、本当に真実味のある映画、感動できる物語を探していたのだと思います。

──監督のピート・ドクターは、「もし私がフリーランスで、78歳の老人が主人公の映画を作らせてくれとスタジオに売り込んだら、すぐに却下されるだろう」と言っていました。それは、リスクの高い設定だからだと思いますが、なぜピクサーでこの映画を作ることができたのでしょうか?
ピーターソン:ピクサーという会社は、リスクを恐れずにチャレンジしていくことが、会社全体の成長につながると考えています。でも、今回は相当リスキーだったと思います。私たち自身は、素晴らしい物語だと確信していたので、「まぁ、見ていろ!」という風に思ってましたけど(笑)。

──そんな会社で映画作りに携われることについて、どう感じますか?
ピーターソン:本当に幸せだと思います。ピクサーの何が素晴らしいかというと、上層部が監督を信頼し、全てを委ねてくれるんです。自分たちが心から伝えたい物語を、自由に作らせてくれる。
 それから、大きなものから小さなものまで含めて、私たちは様々な失敗をするのですが、その失敗を乗り越えて、さらに良いものにしていくために、周囲が手助けを惜しまない点も、とても素晴らしいと思います。

──スタッフ間の仲が非常に良いと聞きましたが、製作中は激しくやりあうこともあるのでしょうか?
ピーターソン:とても仲が良いのは事実です。でも、良い作品にするためにはケンカもしますよ。仲の良い夫婦みたいに、ケンカもしょっちゅうするけれど、互いを傷つけ合うためではない。あくまでも、良い作品を作りたいという一心からなのです。

──本作では声優として、重要なキャラクターである犬のダグやアルファの声を担当していますね。また、『ファインディング・ニモ』のエイ先生など、過去のピクサー映画でも声優をされていますが、始めたきっかけは?
ピーターソン:小さな頃から兄弟たちと、父親を笑わせるためにキャラクターの声なんかを真似するところから始まったわけですが、実際の声優業はピクサーに入ってからです。
 これまで4、5本の映画で声優を務めてきましたが、自分とは別のキャラクターになって声を録音するという作業は、とても楽しいですね。興味深いのは、今回のダグにしろ他の作品にしろ、映画を見ていると、自分の声だと忘れてしまうこと。うまくできた証拠だと思うのですが……。
 声優業は、これからもぜひ続けていきたいと思っています。

──本作は日本では240スクリーンで3D上映されます(2Dは429スクリーン)。3D映画はアメリカではかなり人気が高まっていて、日本でも公開が相次いでいますが、3D映画の今後をどうとらえているか教えてください。
ピーターソン:個人的には、3D映画はこれからもどんどん増えていって、観客にとっては大きな選択肢のひとつになってくると思います。また、家庭向けの3D対応の機材が増え、家庭でも楽しめるようになっていくと思います。
 とはいえ、物語が良くなければ、3Dだろうが何だろうが意味がありません。ですので、3Dにふさわしい、新しいオリジナル作品を探していくのが、今後の我々の課題だと思います。

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