ハリウッドで存在感を増す中国(1)/マット・デイモンもジェニファー・ローレンスも日本はスルー

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『オデッセイ』PRで訪中するも日本には立ち寄らなかったマット・デイモン
『オデッセイ』PRで訪中するも日本には立ち寄らなかったマット・デイモン

成長の鈍化が取りざたされているとはいえ、その市場規模の大きさで世界中から注目を集め続けている中国。ムビコレでは、「ハリウッドで存在感を増す中国」を2回に分けて解説します。

日本を素通りし、中国を訪問するハリウッドスターが増えている。昨年を見ると、ロバート・ダウニーJr./マーク・ラファロ/ジョシュ・ウェドン監督(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)、マット・デイモン(『オデッセイ』)、(『ハンガーゲーム FINAL:レボリューション』)、ダニエル・クレイグ(『007 スペクター』)が新作をPRするため訪中したが、日本には来なかった。

一方日本と中国の両方を訪問したのがアーノルド・シュワルツェネッガー(『ターミネーター/ジェニシス:新起動』)、トム・クルーズ(『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』)、ヒュー・ジャックマン(『PAN ネバーランド、夢のはじまり』)。

世界の映画マーケットでは中国が2位、日本が3位。ハリウッドのスタジオが中国での宣伝を重視している表れだ。

調査会社レントラック社の推定によると、2015年の世界映画市場は380億ドル。米国が110億ドル、次いで中国が68億ドルで、中国は前年比約50%増だ。中国市場は1ドル113円換算で7684億円、日本市場2171億円の約3.5倍もある。『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』や『ワイルド・スピード SKY MISSION』のように、中国で米国を上回る興収を上げる作品も出ている。

中国市場を意識して、ハリウッドでは中国や香港の俳優を起用する作品が増えている。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』にアンジェラべイビー、『コング:スカル・アイランド(原題)』にジン・ティエンを起用。香港のアクションスター、ドニー・イェンは『スター・ウォーズ』のスピンオフ『ローグ・ワン』と『トリプルX』シリーズの3作目に出演する。『グランド・イリュージョン2』にはジェイ・チョウが出演している。ハリウッドと中国の合作もあり、万里の長城を題材にした『グレート・ウォール』はチャン・イーモウが監督し、マット・デイモンとアンディ・ラウが共演する。

アニメ映画では、ドリームワークス・アニメーションが中国の投資家と4年前に共同設立したオリエンタル・ドリームワークスが初作品となる『カンフー・パンダ3』を2月に中国で公開。興収1億4600万ドルをあげ、中国でアニメ映画として歴代興行収入ナンバーワンヒットを記録している。カンフーとパンダという中国でなじみのある題材だったことに加え、中国の歌手ルハンを宣伝大使に任命し、ジェイ・チョウが主題歌を手がけたこともヒットを後押ししたようだ。ちなみに、中国の興収は米国を上回っている。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

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