(前編)『テッド2』は型破りな啓蒙映画!? エロ・テディベアが教えてくれる平等の尊さ

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『テッド2』
(C)Universal Pictures
『テッド2』
(C)Universal Pictures

見かけはモフモフ愛くるしいが、口を開けば毒舌三昧の不良中年なクマのぬいぐるみ・テッドが再びスクリーンに戻ってきた。2012年製作で大ヒットした第1作に続く『テッド2』は、なんとテッドの結婚で幕を開ける。

まず圧巻なのがオープニングだ。テッドとスーパーのバイト同僚のタミ=リンの結婚パーティ・シーンが巨大ウエディング・ケーキのセットへ転換し、約100人のダンサーと一緒にテッドが躍りまくる。古きよきハリウッドのミュージカル映画そのもののシークエンス。30年来ずっと一緒の“兄弟”、テッドとジョンがマリファナでラリってばかりというイメージが吹っ飛びかける……が、夢のよう華麗な場面が終わると、ボストンの日常生活がスタートする。2人は相変わらず、中学生ノリでふざけてばかり。といってもジョンは前作ラストで結ばれた長年の恋人と離婚してシングル生活。そんな親友のを心配しているテッド自身も、挙式から1年で早くも結婚生活の危機に直面している。関係修復に努めたテッドとタミ=リンは、子供を作ろうという結論に達する。そこで問題になるのが、テッドがぬいぐるみであるという事実。人工授精や養子縁組を考え、手続きに向かった夫婦につきつけられたのは、マサチューセッツ州はテッドを人間と認めず、所有物と見なすという現実だった。親になるどころか、結婚さえも無効とされたテッドだが、はっきりとした意志を持つ一人格として、法的権利を求めて裁判を起こす。

ここに至るまで、すでに強烈な下ネタ、小ネタの数々が炸裂してきたのだが、突然まさかの法廷映画という展開には驚いた。これは、テッドの声も担当する監督・脚本のセス・マクファーレンが、前作『荒野はつらいよ〜アリゾナより愛をこめて〜』のリサーチ中に調べた「ドレッド・スコット事件」に着想を得たという。19世紀半ばの南北戦争前夜、黒人奴隷の憲法上の地位を争った訴訟で、アメリカ連邦最高裁は奴隷について、憲法にいう“国民”ではなく“財産”という判決を下した。奴隷として売買された黒人と、愛玩物として買い与えられたテッドの状況を重ねる大胆な発想は、タブーを恐れないマクファーレンの本領発揮といったところだ。(後編へ続く…)(文:冨永由紀/映画ライター)

【週末シネマ】(後編)『テッド2』は型破りな啓蒙映画!? エロ・テディベアが教えてくれる平等の尊さ

『テッド2』は8月28日より公開。

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