『アナ雪』以降、話題作続きのミュージカル。地味ながらも名曲だらけで心に染みる『ラスト5イヤーズ』(前編)

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『ラスト5イヤーズ』
『ラスト5イヤーズ』

『ラスト5イヤーズ』は、アナ・ケンドリックとジェレミー・ジョーダンの演じるカップルの、出会いと別れを描いたミュージカル映画。“出会いから別れまで”ではなくて“出会いと別れ”と書いたのは、この作品がストレートな時系列で描かれたものではないからだ。

[動画]『ラスト5イヤーズ』予告編

ジェレミー・ジョーダンの演じるジェイミーの目線が出会いから別れまでを素直に追っているのに対し、アナ・ケンドリックの演じるキャシーの目線は別れから出会いまでを逆に辿っていく。物語はそんな2人の目線を交互に入れ替えながら進むのだが、その構造を初見で完璧に把握して見終えることは、正直言って難しい。ラストまで見たら、自然ともう1回見直したくなってしまう。と言うか、見返さないと気になって仕方がなくなる。そんな風に作られた映画だ。

原作は、オフ・ブロードウェイで大ヒットを記録したという同名のミュージカルで、映画はその舞台に最大限のリスペクトを持って映像化されている。作曲家のジェイソン・ロバート・ブラウンによる14の楽曲が物語のほとんどすべてで、素のセリフでやり取りされるシーンはほとんどない。

監督は『P.S.アイラヴユー』(監督)や『恋するリベラーチェ』(脚本)などで知られるリチャード・ラグラヴェネーズ。もともと舞台版のファンだったという監督は、ジェイソン・ロバート・ブラウンの楽曲をしっかり歌えることを大前提としてキャスティングをはじめ、ともに舞台でキャリアを積んできたアナとジェレミーに出会ったのだという。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)

『ラスト5イヤーズ』は4月25日より公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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