「えっ? ここで歌?」の戸惑いがないインド映画新潮流!その洗練に注目/後編

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『フェラーリの運ぶ夢』
『フェラーリの運ぶ夢』

『フェラーリの運ぶ夢』

(…前編より続く)そんな本作の音楽を担当しているのは、インド音楽のヒットメーカーとして知られるプリタム。映画の世界でも、人気女優のアイシュワリヤー・ラーイの出演作である『DHOOM』シリーズをはじめとする膨大な数の作品を手がけており、その引出しの多さには(パクリ疑惑も取り沙汰されているらしいが……)さすがと思わせるものがある。本作の音楽については、先述のようにナチュラルで風通しのいいものでトーンが揃えられており、特にオープニングとエンディングで流れる主題歌「Life Yeh Mausambi Si」は、ランディ・ニューマンやハリー・ニルソンあたりの作風にラテン味を加えたような、心地いいポップ・ソングに仕上がっている。

「えっ? ここで歌?」の違和感がないインド映画新潮流!その洗練に注目/前編

インド映画と言えば90年代の『ムトゥ 踊るマハラジャ』のインパクトがあまりにも強く、いまだにああいうドぎつい色調&ド派手な音楽を連想する人が多いかもしれないが、本作にはインドという国の目覚ましいグローバル化がそのまま表出したようなハイブリッド性を感じないではいられない。それは音楽だけではなく、物語そのものについても同じことが言える。見るたびに違う角度から感情移入できるような、そんな懐の深さを持つ映画になっている。(文:伊藤隆剛/ライター)

『フェラーリの運ぶ夢』は2月21日より公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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