【あの人は今】『スタンド・バイ・ミー』の繊細少年がひげ面のオタク中年に変貌!

今やすっかりひげ面の中年男に変貌してしまったウィル・ウィートン(公式サイトより)
今やすっかりひげ面の中年男に変貌してしまったウィル・ウィートン(公式サイトより)

ウィル・ウィートン

1950年代のアメリカの小さな田舎町に暮らす少年4人の冒険を描いた『スタンド・バイ・ミー』。1986年の作品だが、家族の愛や環境に恵まれず寂しさを抱えた多感な少年たちを繊細に描き、世代を超えて愛され続ける傑作だ。今は亡きリヴァー・フェニックスの出世作としても知られる本作で、物語の語り手でもある主人公・ゴーディを演じたのが、ウィル・ウィートンだ。

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ゴーディは原作者であるスティーヴン・キング自身が投影されたキャラクター。運動は苦手で、作文や物語を作るのが得意なやせっぽちの文系少年を演じた当時12歳のウィルもまた、線の細い美少年でまさに適役だった。それがいまや、見る影もないようなひげ面の中年男へと変貌。時の流れは残酷……だが、ゲームやコミックブックへの造詣が深く、とてつもない情報量の公式サイト「WIL WHEATON dot NET」を運営し、テレビを中心に俳優業を続けつつ、人気ブロガーとしてオタク道を極める彼は、とても幸せそうなのだ。

彼の半生をざっと振り返ってみよう。リヴァーと人気を二分した『スタンド・バイ・ミー』公開の翌87年から、ウィルはテレビシリーズ『新スタートレック』にレギュラー出演、活動の拠点をテレビに移した。世界中に幅広い年齢層のファンを持つ人気シリーズには3年間出演したが、彼の演じたキャラクターに対する強烈なアンチの存在に苦しめられもしたという。91年、『トイ・ソルジャー』出演後に彼はロサンゼルスを離れ、カンザス州でソフトウェア開発の仕事に就く。リヴァーがハリウッドで薬物過剰摂取のために23歳で他界したのはその直後(1993年)。『スタンド・バイ・ミー』公開からわずか7年後のことだった。

実は『スタンド・バイ・ミー』撮影中に親友同士になったものの、リヴァーとは次第に疎遠になり、訃報に接しても当時はあまり実感が湧かなかったという。それでもかつての親友の夭逝に思うところがあったのか、彼はロサンゼルスに戻って演劇学校に通いながら俳優業を再開。インディペンデント映画やTVシリーズに出演し、声優としても、日本のアニメ映画『NARUTO−ナルト−』シリーズの英語吹き替え版などで活躍している。

公式サイト上のブログで文才を発揮するウィルは、書き溜めた内容をまとめた著書も数冊発表している。

ブログの2011年3月21日付けの投稿は印象深い。『スタンド・バイ・ミー』のブルーレイ発売記念でロブ・ライナー監督とキャスト3人が久々に一堂に会した日について綴られている。昔の面影は皆無の自分が、逆の意味ですっかり様変わりしたジェリー・オコネル(最年少のぽっちゃり君・ヴァーンがイケメンの売れっ子俳優に)に気づいてもらえなかったエピソードで笑わせるが、25年ぶりの再会の場にリヴァーだけがいないことで、初めてその胸に迫ってきた喪失感や、苦しみ抜いた若き日の記憶の記述は、『スタンド・バイ・ミー』の物語と微妙に重なり、涙なくしては読めない。

英語には「a has-been」という、盛りを過ぎた人を指す意地の悪い表現がある。ウィルも、メガネをかけたテディを演じたコリー・フェルドマンも、確かに輝かしいハリウッドの栄光からは外れたかもしれない。だが、それがどうした?と思う。いかにも人柄の良さそうなウィルの柔和な表情は、あるがままに生きるという幸福を体現している。(文:冨永由紀/映画ライター)

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