超ド級のスケール! 中国SF「三体」が異例の人気 そのワケは?

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三体
第1作「三体」(左)と、続編「三体Ⅱ:暗黒森林」の上巻(右)

中国の長編SF小説「三体」の続編「三体Ⅱ:暗黒森林」が、上下巻で6月18日に発売された。シリーズの世界累計発行部数が2900万部超を誇り、日本でも日に日に信者が増えている。

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本シリーズは、元エンジニアの中国人SF作家・劉慈欣(りゅう・じきん)が手がけた3部作。2008年に第1作目が中国語で刊行され、2015年、劉は、SFやファンタジー作品に贈られるヒューゴー賞(第73回)をアジア人として初受賞。世界各国で次々と翻訳され、日本でも2019年に発売された。

愛読者として元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏、ゲームクリエイター・小島秀夫氏など各界の著名人が知られ、いずれも「三体」を絶賛している。

小説が売れにくい昨今、日本で13万部以上売り上げる第1作では、ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)が、世界的な科学者たちが自殺する事実の裏にある秘密を探るべく、謎の学術団体へ接触を図る。しかし汪淼は、科学的にありえない怪現象に遭遇する。そして3つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム「三体」を通じて、驚愕の真実を知ることになる。

ここまで聞くと「ちょっと面白そうかも…」と感じるかもしれない。「三体」はたしかに面白い。だが、これから第1作目を読む方に向けて、ネタバレを回避しつつ、事前に覚悟しておいたほうが良いことがを複数紹介する。

まず、「三体」では物理学や天文学など理系の話が、たくさん出てくる。第1作の中盤までは謎が多く、かつ理系の話がところ狭しと出てくるため、理系の話が苦手な人は、読むのが苦しくなるかもしれない(逆に言えば、理系人間には心地よい)。しかしこらえて終盤まで読み進めれば、謎が見事に解き明かされ、壮大すぎる真実に驚きを禁じ得ないはずだ。

加えて、筆者が中国人だけに、文化大革命など中国の歴史・文化にまつわる話も多い。ここもどうかこらえてほしい。日本語版では適宜解説があり、読者の理解をサポートしてくれる。チンプンカンプンな専門用語に出会ったら、無理に全てを理解しようと努力せずに読み飛ばし、とにかく大筋をとらえることに注力してほしい。こらえた分だけ、終盤の喜びも大きいはずだ。

今年6月に発売された「三体Ⅱ:暗黒森林」では、第1作で広げた大風呂敷が、閉じられるどころか何十倍、何百倍ものスケールに拡大する。人気の源泉とも言える、著者の底知れぬイマジネーションに驚嘆するばかりだ。第1作で虜になった読者を裏切らない驚天動地の世界が待っている。

中国SFの最高傑作と呼ばれる「三体」。中国国内では現在、映像化に向けて動き出している模様。期待がかかる。とはいえ「驚く物語を読みたい!」という方は、ぜひ本書にチャレンジを。

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